仁王SS いつもの自己満足 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

幸せのおすそわけ



今日はツイとらん。

俺のツキはどこにいってしもたんじゃ?



昨日雪と授業をサボってイチャコラしていたことが真田にバレた。

どうぜ幸村のヤツがチクッたに違いない。


朝練が始まるや否や、真田の説教が始まり、

俺は朝日の差すコートの中で、延々と正座をさせられた。


いつもならうまくかわせとったのに・・・・

今日に限って赤也も遅刻せんかったし、真田の目を逸らせんかった。


不機嫌な俺に、雪は「まぁ自業自得やからしゃーないやろ」なんて言って慰めてもくれんし、

持ってきたはずの財布がのうて、丸井に金を借りる羽目になるわ、

なぜか授業でやたらと指名されて寝るに寝れんかったし、

憂さ晴らしにどこか行かんか?と誘ってみても、誰も乗ってはこんかった。


なんなんじゃ?

俺がなにをしたって言うんじゃ!?


苛々としながら家までの道を一人とぼとぼと歩いとると、ポケットの中で携帯が震えた。

赤也からの侘びメールや、丸井からの金の催促メールじゃったら明日絶対シバいてやると思ったが、意外にもメールの相手は雪から。




「今どこおんの?用事ないなら家けぇへん?」




相変わらず絵文字も何もない質素なメール。

まぁ俺も人の事は言えんがな。


それにしても、平日の放課後に雪から家への誘いがあるなんて珍しい。

何かあったんかと心配になったが、それならメールやのうて電話をかけてくるはずやと思い直し、

とりあえず行ってみるかと、方向転換し雪の家へと向かった。




「お帰り。」

「おう。どないしたんじゃ?」




私服に着替えた雪に招き入れられ、部屋へ入ると、「ちょっとまっとって。」と、いきなり部屋を出て行ってしもた。

呼び出しておきながら待ってろとはどういうことじゃ?


そのうち戻ってくるやじゃろうと、バッグを床に置きベッドへ身を投げ出し横になる。

ふわりと雪の香りが漂ってきて、少しだけ心が安らいだ気がした。


目を閉じる間もなくすぐに雪の階段を駆け上る足音が聞こえ、寝転んでいた身体を起こす。

扉を開けて顔を覗かせた雪は、妙に笑顔で俺の方へと近づいてきた。




「今日さ、あんた『ツイてないツイてない』って言うとったやろ?」

「ツイとらんかったからのう。」




俺がそう言うと、雪は手に持っていた小さ目の箱を俺の方へと差し出した。

それは雪がたまに食っとる、チョココーティングされた一口大のアイスの箱。


箱をじっと見る俺に、雪は箱の蓋を開けて中身を見せた。




「食いさしのアイスがどうしたんじゃ?」

「ほら、これハート型やろ?」




6つ入っとるはずの箱の中には、1つだけアイスが残されていた。

そしてそのアイスは、雪の言う通りハート型をしている。


それがどうしたと言わんばかりの俺に、雪は笑顔でそのアイスをピックで指し、俺の口元に運んできた。




「これな、普通はこのパッケージどおりの形やねん。ハート型は・・・・まぁ当たりくじみたいなもんやな。」

「当たりくじのう・・・・」

「幸せを呼ぶって言われてんねんで?だからツイてない雅治君に、雪さんが幸せをおすそ分けしてあげようと思ってな。」




つまりは、滅多に出ない当たりくじのハート型アイスが入っとった。

それを今日ツイてないと愚痴る俺に食わせてやろうと・・・・?


幸せのお裾分けのう・・・・・。


子供っぽい理屈じゃが、アイスが大好物で人に分けるなんて滅多にせん雪が、俺の為にアイスをとっとってくれたという事に嬉しさが込み上げてくる。

それに俺が「ツイてない」とヘコんどった事を気に留めていてくれた事も。


クツクツと笑えば、「なにがおかしいねん」と拗ねたように口を尖らせる。

その仕草も可愛くて、雪の頭をそっと撫でた。



「ククッ。確かに幸せを呼んでくれたみたいじゃ。」

「まだ食べてへんやん。」

「ならせっかくじゃし、いただくとするかのう・・・・・」




ぱくりとアイスに食いつけば、甘さと冷たさと・・・・・幸せが口の中に広がる。

普段なら甘ったるく感じたであろうその甘さが、今はもう少し味わっていたい。




「どう?少しは幸せになった?」

「少しはのう。じゃが、これじゃ足りん。」

「欲張りー!!」

「もっと幸せになるには、雪も幸せにならんとな。」

「え・・・・?」




雪をベッドへと引き寄せ、組み敷くように馬乗りになる。

そのまま顔を近づけ唇を合わせた。


軽く口を開かせ舌を絡み合わせれば、甘いチョコに雪の味が混じる。




「これで雪にも幸せがくるじゃろ?」

「もう・・・そんなことしたら幸せも半分になんで?」

「なら・・・減った分は雪が俺を幸せにして。」

「私のもう半分は雅治が補ってな。」

「言われんでも・・・・・・」




お互い微笑みあいながら、再び顔を寄せ合う。

深くなる口付けに、頭の中から今日あった嫌な出来事がスーッと消えていく。

そして雪への愛と、幸せな気持ちだけが溢れていた―――――


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PIN○(伏字になってない)食ってて思いついただけです。


最近ハート型は見なくなったけど、もうないのかな?

星はよく見かけますけどね。

星型は『願いのピノ』らしいですよ。