どんな街にも、日常のスキマにひっそりと潜んでいるミステリーゾーンと呼ばれる場所があるものです。
先日、ソウルのそんなミステリーゾーンを訪れてきたのでご紹介します。
ソウルは世界の大都市の中でも地下鉄網が大変発達した場所なのですが、
地下深く誰も知らない場所に決して電車が停まることのない
「幽霊駅」が存在するというのです…。
今日は皆さんをその幽霊駅にご案内します…。
やってきたのは地下鉄1号線と2号線の支線が交差する
「新設洞(シンソルドン)駅」
それなりに交通の要所らしいのですが、
決して観光地といったわけでもなく、
ソウルの中でもどちらかというとかなり地味な、
特にこれといった特徴もないごくありふれた下町エリアです。
位置はこちら
しかし、街としての歴史は結構古く、
朝鮮時代の地図にも「新設契」としてその名を確認することができます。
さらに日本統治時代の新設里→新設町を経て
1946年に現在の新設洞という名前になったということです。
ソウル都城の東端である東大門と、郊外の拠点である清涼里を結ぶ線上にあることで、
地下鉄1、2号線のルートにも組み込まれ、いち早く駅が開業しました。
そして将来的には地下鉄5号線の駅も新設洞を通す予定で、
先に5号線の駅を作っておいたものの、色々なオ・ト・ナの事情により
5号線のルートが変更され、かくして使われるはずだった5号線用のホームは
決して乗客を下ろすことのない「幽霊ホーム」となったということです。
普段は一般人は立ち入ることができないのですが、
「新設駅には隠された幽霊ホームがあるらしい」というウワサは
ソウル市民の間で都市伝説的に語り継がれ、最近はSNSなどでも話題になっていました。
そんな流れを受けてソウル市は11月26日までの期間限定で、
週末だけ、それも1日80人に限って一般公開をすることにしたのです。
僕には大田市在住のS氏という鉄ヲタ友人がいるのですが、
今回、彼がソウル市のホームページから応募し(募集開始から瞬殺で埋まるほど人気らしい)、
みごとその権利を獲得し、僕にも一緒に行こうと誘ってくれたというわけです。
というわけで、指定された時間に新設駅の構内に行くと、
係の方が名簿を持って待っているので、チェックインします。
チェックを受ける友人S氏
ソウル市民でも知る人ぞ知るツアーなので、日本人参加者はかなり珍しいらしく
「どうやって来たんですか?」
「え、応募して…」
「応募ってどこから?」
「いや…ソウル市のホームページから」
「なんでソウル市のホームページ見てるんですか??」
などなどの質問攻めにあっていましたが、
日本の鉄ヲタの情報力にさぞ驚いたことでしょう…。
チェックを済ませると
新設洞幽霊駅
市民体験参加者
と書かれた名札(?)を貰い、これが通行証代わりになります。
係の人に誘導されて向かったのは…。
ん?ごく普通の2号線のホーム
とても幽霊ホームがありそうな場所に思えません。
が、
エレベーターの脇の小さな空間に入っていく参加者たち
と、そこには…
隠し階段!!!????
知らなければただの倉庫か何かと思ってしまいそうですが、
ミステリーゾーンへの入口がこんなところに隠れていたとは…。
(ドアを開けて無言で佇む係員さんの黒尽くめスーツ姿がいかにも「地獄への案内人」といった感じでテンションが上がります)
※ちなみにこの写真は同行したエナ氏が撮影したもの。
ではいよいよ…
非日常の世界へ…。(係員さんやはり怖い)
これからの30分間
あなたの眼はあなたの身体を離れ
この不思議な時間の中に入っていくのです…(ナレーション:石坂浩二)
脳内BGM「ウルトラQのテーマ」
深く暗い闇へとつづく階段…。
カツンカツンと響く自分たちの靴音だけが
かろうじて現実とこの場所を繋ぎ止めているようです…。
階段を降りきったところには
決して人を運ぶことのない線路と無人のホーム
そしてあたりを支配する静寂…。
…でもなく、なんだか不思議な音が響いています。
ふと視線を別の方向に転じると、
映像を使った現代アートっぽい演出が…。
かなりオシャレな感じになってしまっていますが、
それでもやはり場所の持つ力とでも言うんでしょうか、
非日常感…ココハドコワタシハダレ感がハンパないです。
残されていた、当時のプレート。
たまらない朽ち果て具合です…。
そして実はこの場所…。
非現実的なムードから、ドラマの撮影や
アイドルのMVの撮影などが行われることも多いスポットなのだそうで…。
例えばこの階段なんかは…
TWICEのCHEER UPで平井さんが歩いていたここ!
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!
他にもEXOとかがミュージックビデオの撮影に利用してるらしいですよ。
さて、こちらが1974年当時のソウル地下鉄建設計画図。
今の路線図と比べてみると色々楽しいです。
それにしても下側の青いライン…一体何がしたいのかという路線…。
アレが実現しなくて本当によかった…。
ここではしばし鉄ヲタS氏の熱のこもった解説に耳を傾け、
特に今の生活に役に立つわけでもないソウル知識を吸収します。
そんなわけで30分程の新設駅幽霊ホームミステリーツアーは終了。
残念ながら今回の一般開放の枠はすでに埋まっていて、
これから見たい!と思っても見られないようなのですが、
好評であれば今後も定期的に応募するかもしれませんので、
気になる方はソウル市の動向を注視してみてください。