●夢(闇)の中へ
2013年結成の3人組ロックバンド「Helsinki Lambda Club」(ヘルシンキラムダクラブ)の3rdミニアルバム『Hello, my darkness』をレビューします。
彼らのことを意識しだしたのは、今年にボーカルの橋本薫が"うみのて(笹口騒音)"の「SAYONARA BABY BLUE」をカバーしているのを聴いてから。原曲に忠実な愛あるカバーで、声に切実な主張があり、僕にはとても魅力的に聴こえた。
また、音楽評論家ユーチューバーの"みの"さんがやっているアップルミュージックのラジオ番組「Tokyo High Way Radio」でもヘルシンキが紹介されていた。音楽に厳しい"うみのて"の笹口さんや、確かな審美眼を持った"みの"さんが勧めているバンドなら聴かなくてはという理由でヘルシンキの音楽を聴いてみた。
そうして、過去の彼らの人気曲を聴いたが、軽い噛み応えしか感じずあまりピンとこなかった。しかし、ライブ盤を聴いて印象が一変した。清廉にたゆたうグルーヴにインディー・ミュージックの良心を見た気がした。
例えるならば、シャムキャッツのようなインディー的に引く奥ゆかしさ、曲ごとに多彩な押しのある"うみのて"の音楽的な個性の強さ、その双方を感じる。
夏に聴くと気持ちよさそうな、太くなくひんやりとした歌声も爽快だ。Clap Your Hands Say Yeahからの派生バンドであるUNINHABITABLE MANSIONS (アンインハビタブル・マンションズ)のボーカルと近いものがあるのではないかと感じた。
さて、それでは本作について語ってみよう。
サウンドの質感や広がりが享楽的であり、トロピカルな甘やかさが気持ちの良い、タイトルに"ドーナツ"を含む二曲#1「I’m as real as a donut」や#3「真っ暗なドーナツ」。
性急なポスト・パンク的意匠の#2「Khaosan」や#4「Village Satomi」。タイトなリズムにシビれる。
ヒップホップ的なトラックの#5「Mystery Train(feat.Wez Atlas)」。フィーチャリングのWez Atlasは日本のラッパーらしいが、海外の本場のラッパーのような本物感がある。
ギターとボーカルのリバーブの絶妙なかかり具合が僕らを夢の世界に誘う#6「夢で会えたら」。
『Hello, my darkness』というアルバムタイトルはサイモン&ガーファンクルの曲(「The Sound of Silence」)の歌詞を連想させる。両者ともに夢の中で(夢中で)闇に戯れるような闇への愛着を感じる。
伝えたい世界観に合わせて曲ごとに音楽性を変えてくる手腕が素晴らしい。曲ごとに個性(カラー)があり、全体的にカラフルなミニアルバムになっている。そして、その色彩の豊かさには、光も闇も受け入れる懐の深さがある。
ところで、世の中では、カッコ良い曲があふれている。それは、前述の"みの"さんの番組を聴いていても感じることだ。しかし、カッコ良いだけではなく、そこから飛び越えてリスナーである僕自身の大切な曲になるのかはまだハードルがある。
それは、共振するメッセージがあったり、性癖ならぬ音癖が自分にぴったりだったり、"うた"として完璧に構築されていたりして、なんらかのフックがなければいけないのだ。
正直、ヘルシンキラムダクラブや以前にレビューしたペリカンファンクラブの曲には、そういったフックを感じない。
だが、彼らの作品が音楽的に素晴らしく豊かなことには間違いないだろう。躍進を願っています。
Score 8.1/10.0
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