本を片手に街に出よう -48ページ目

【小説】ガニメデの優しい巨人

著者: ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
タイトル: ガニメデの優しい巨人

 

 衝撃デビュー作「星を継ぐもの」の続編。

 前作で謎のままだったガニメデの難破宇宙船から存在が判明した、知的宇宙人ガニメアンとの偶然の遭遇が描かれる。

 これまた前作同様、ハント教授とダンチェッカー教授の知的会話&演説は健在。

 

 前半は何と言ってもガニメアンとの遭遇(SF史上最も友好的な宇宙人との遭遇、だそうです)にまつわるほのぼのエピソードが随所に。特に言語を学ぶシーンなんか、微笑ましい限りである。

 しかしSFとは言え、かなり強引な展開ではある。何たって2500万年越しの遭遇ですから。

 

 そして、ついにガニメアン地球訪問&滞在が実現。欲望や闘争に満ちた地球人と地球の情景に驚くガニメアン。彼らにはそもそも「闘争」という概念はなく、あるのはあくなき知識の探究心だけだ。それが恒星間飛行や重力制御をほしいままにする彼らの驚異的な科学技術力を実現したのだ。

 

 ガニメアンはなぜ「優しい」のか?それは物語中にて明らかになる。なるほど…そうきたか。

 

 そして物語終盤、前作から引っ張ってきた謎、ガニメアンとルナリアンの関係が明らかに。今回は前作の様々な学問に加え、遺伝子工学エッセンスを加算。

 またしてもダンチェッカー教授の演説が冴え渡る。

 

 地球人が謎解きできるのだから、当然ガニメアン達にも謎解きはできている。ルナリアン、ひいては地球人の起源に関わってしまった業を知り、地球人へのこれ以上の干渉を避けるため、いつ終わるとも知れないリスクを負いながらも、恒星へと旅立っていくガニメアン…

 地球人を遥かに凌ぐものすごい知的生命体な割には、ちょっと浪花節だぞ。ガニメアン。

 

 そして最後はしっかり次作への伏線が。

 

【漫画】BANANA FISH



著者: 吉田 秋生
タイトル: Banana fish (1)

 吉田秋生の傑作長編。
 この人を知ったのはカリフォルニア物語をふとしたことで読んで。当時まだ10代前半だったので、結構衝撃を受けた記憶がある。
 ジャンルで言えば少女漫画であっても、この人の作風は少女的メルヘンからは程遠い独特のドキュメンタリー的クールさがある。
 本作も、いきなりベトナムで銃乱射、NYダウンタウンでのストリートギャング。少女達もビックリ仰天だったろうな…

 主人公のアッシュはありえねーくらいの出来すぎキャラだが、周囲をとりまくキャラ達はほんと、あー確かにこんな奴ハリウッド映画に出てくるよね…という味のある人達。

 BANANA FISHとそれをとりまく謎が明らかになる中盤から終盤に行くにつれて、謎解き、国家的陰謀の側面から、マフィアや傭兵、元KGBまでが入り乱れてのアクション色が強くなっていくが、同時に際立っていくのがアッシュと日本人青年エイジの友情というか、殆ど純愛に近い描写。この辺がやっぱり少女漫画なんだろうな。少年モノはフツー強さ比べ、ドラゴンボール状態になっていくもんね。

 もともと二人の住む世界は全く違う。全てに決着がついて、彼らにも別れの時がやってくる。
 普段はマシーンのように冷静・冷徹で一分の隙もないアッシュが、最後のエイジからの手紙で動揺し唯一隙を見せたその時!うーん…切なくも感慨深いラストシーンである。


BGM->Heart"Brigade"1990

高田馬場

西武新宿線の実質的な終点、高田馬場を歩く。

JRと西武新宿線が隣接するホームからは、「すずや」という、滝の流れる看板の一風変わったビルが見える。

マイナーな出口である戸山口から出て、すぐ上にむき出しの線路のある連絡通路を歩く。何となくノスタルジックな雰囲気。


高田馬場のシンボルとしては、駅前待ち合せスポットでもあるBIG BOXや、アトムの壁画などが有名である。


高田馬場は鉄腕アトムが生まれた街としての設定があるらしく、JRの発車ベルもアトムのテーマである。街をあげてアトムを盛り上げているみたいだ。先ほどの連絡通路といい、何となく昭和の香りが漂っているのはアトムの印象も影響しているかも知れない。


さて、もう一つの高田馬場の顔として、ここは書評blogらしく、日本点字図書館を紹介。

点字図書館としては日本最大級で、全国の視覚障害者やその関係者から「にってん(日点)」の愛称で親しまれている、中央図書館的な存在らしい。

コンクリート打ちっぱなしの壁に、鎖がずらーり垂れ下がっているのが特徴。
#なんのための鎖か?については諸説あるらしい。単なるデザインであるとか、鎖の音で目の不自由な人がわかるように!といった説まで

昭和15年創立。単なる点字本の図書館ではなく、チャリティ映画会、コンサートや朗読会、朗読テープ起しと貸し出し、点字指導や、更には支援活動ボランティアの育成や盲人の生活グッズ開発販売、生活相談までやっている。まさに盲人のためのオアシスである。
#高田馬場は街をあげて盲人にやさしい街作りをしているようだ。主要な歩道や路地にも点字ブロックが敷かれ、信号の押しボタンや場所を知らせる音などがいたるところで対応されている

すばらしい。運営していくにはすごい手間がかかるだろうに…
微力ながら、募金というカタチで協力させて頂きます。

その福祉の精神に敬意を表し、ブログタイトルを点字にしてみた。
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サボテン経過報告 ~22日目~

どうやら「まる」と「なが」の両方出てきました。
先に出てきた蟹バサミみたいのが「まる」で、ひょろ長いのが「なが」だと思われ。

サボテンながら、春の訪れを感じます。

お花見の季節ですね~

【ビジネス】強い工場



著者: 後藤 康浩
タイトル: 強い工場―モノづくり日本の「現場力」


 改めて日本の製造業(というか現場力と言うべきか)の強さが実感できる本。
 やれ中国だ、コストダウンだ、という風潮に「何か違うよな…」と食傷気味であったので、読むことによって元気をもらった。
 自分の業界は全く毛色が違うが、ひねり方次第で参考に出来る話もありそうだ。

 しかし凄い人達がいるもんだ。
 圧巻は「技能オリンピック」での「精密機械組み立て」競技にて出題された設計書を日本の技術者が「見ただけで」「立体としてありえない」という設計矛盾を指摘するくだり。
 彼らには見えないものが見えている…ってオイ、鳥肌が立つね。
 ほかにも、1万点以上の部品がある高性能コピー機を一人で組み立ててしまう人なんかもいて、まさに「匠」の世界である。

 しかし、そういった派手な個人技よりもまして、全編通して語られているのは、チームでアイデアを出し合って改善していく現場の姿。
 これは役割分担や権限が明確でシステマチックな欧米企業では出来ない芸当であるとのことだ。やっぱり農耕民族だからね。みんなで協力しないと。

 自動車産業にまつわる話が多いのは現在世界最強であることもあるだろうが、なるほど、と思ったのが、モノ作りのタイプには、部品同士が標準化されレゴブロックのように組み立てればいろいろな製品が作れる「モジュラー型」と、個々の部品ごとの設計を調整して全体として最適な設計をしないと製品にならない「摺り合わせ型」というのがあって、自動車は典型的な「摺り合わせ型」であり、日本に向いている(東京大学 藤本教授)、という話だ。

 総じて実感したのは、日本はモノ作りが支えているのだな~ということ。
 何となく、これからまた「職人の時代」が来るような気がしている。
 これだけモノがあふれると、多少の安さよりもより良い物を、という風潮が広がるのではないかと…

 IT業界にも何だか実体の無い輩がはびこってきているので、原点に戻って「良いソフトウェア」「良いシステム」を作るよう努力せんとイカンな、と再認識した次第であります。