【ビジネス】強い工場 | 本を片手に街に出よう

【ビジネス】強い工場



著者: 後藤 康浩
タイトル: 強い工場―モノづくり日本の「現場力」


 改めて日本の製造業(というか現場力と言うべきか)の強さが実感できる本。
 やれ中国だ、コストダウンだ、という風潮に「何か違うよな…」と食傷気味であったので、読むことによって元気をもらった。
 自分の業界は全く毛色が違うが、ひねり方次第で参考に出来る話もありそうだ。

 しかし凄い人達がいるもんだ。
 圧巻は「技能オリンピック」での「精密機械組み立て」競技にて出題された設計書を日本の技術者が「見ただけで」「立体としてありえない」という設計矛盾を指摘するくだり。
 彼らには見えないものが見えている…ってオイ、鳥肌が立つね。
 ほかにも、1万点以上の部品がある高性能コピー機を一人で組み立ててしまう人なんかもいて、まさに「匠」の世界である。

 しかし、そういった派手な個人技よりもまして、全編通して語られているのは、チームでアイデアを出し合って改善していく現場の姿。
 これは役割分担や権限が明確でシステマチックな欧米企業では出来ない芸当であるとのことだ。やっぱり農耕民族だからね。みんなで協力しないと。

 自動車産業にまつわる話が多いのは現在世界最強であることもあるだろうが、なるほど、と思ったのが、モノ作りのタイプには、部品同士が標準化されレゴブロックのように組み立てればいろいろな製品が作れる「モジュラー型」と、個々の部品ごとの設計を調整して全体として最適な設計をしないと製品にならない「摺り合わせ型」というのがあって、自動車は典型的な「摺り合わせ型」であり、日本に向いている(東京大学 藤本教授)、という話だ。

 総じて実感したのは、日本はモノ作りが支えているのだな~ということ。
 何となく、これからまた「職人の時代」が来るような気がしている。
 これだけモノがあふれると、多少の安さよりもより良い物を、という風潮が広がるのではないかと…

 IT業界にも何だか実体の無い輩がはびこってきているので、原点に戻って「良いソフトウェア」「良いシステム」を作るよう努力せんとイカンな、と再認識した次第であります。