マイクル・コナリーによるハリー・ボッシュ・シリーズ最新刊『汚名(2017)講談社文庫』原題 Two Kinds of Truth はちょうど上巻を読み終えたところ。これは、すでにAmazon Primeで配信済みのドラマ『BOCSH』シーズン5の原作ですね。もっともドラマは10話完結の長尺もので話は盛ってありますが。
冒頭、過去事件で服役中の死刑囚に再審事案が持ちあがり、ハリーの誤認逮捕による冤罪疑惑が疑われる。ハリーは異母弟の〝リンカーン弁護士〟ことミッキー・ハラーの手を借り対処する一方で、薬局が襲われ薬剤師親子殺害事件の背景に違法薬物疑惑がらみの組織の存在が浮上すると、潜入捜査を決断する。
シリーズ第20作。最新刊と書いたが、ちょっと調べたところ、先月第21作となる『素晴らしき世界』が発刊されていた。本作『汚名』は翻訳よりも、ドラマのネット配信が早かったようで、すでに視聴済。原作の方が筋立てがスッキリしていて読みやすい。定年退職したボッシュは予備警察官として
サンフェルデナンド市警刑事に採用となり、ドラマの設定とは違う。いつものように、あちこちから火の手があがるといった必死の状況から、なんとかなわぬけ奇術のように脱出する。ただ、長いシリーズものにありがちな予定調和的安定感が漂っていて(良くも悪くも)あまりハラハラしないで読み続けることができる。
上巻最後(p297)の方に、ハリーをエドワード・ホッパーの有名な作品「ナイト・ホークス(夜更かしする人々)」とダブらせるところがある。これは、このシリーズ第1作『ナイト・ホークス(1992)』の解題でもあるのだが、実は数日前に知人からホッパーの画集を見せてもらったばかりで、奇遇というか。