R.D.ウィングフィールドの〈フロスト気質〉 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 英デイトン警察のジャック・フロスト警部

 

大型古書店のTVCM「正月4日まで全品2割引」の誘惑に負けてしまいのこのこ出かけて100円本を5冊買ってしまった。432円。うれしかったのは(価格もだけれど)R.D.ウィングフィールドのユーモアミステリ〈フロスト警部シリーズ第4作「フロスト気質」〉が手に入ったことで、これ以上ないお正月読本でありましょう。

 

R.D.ウィングフィールド:フロスト気質(1995)創元推理文庫

 

フロスト警部はコロンボ警部と亀有署の両さんを足して割ったような人物で、シリアスにして厳粛であらねばならない事態に陥るほどに、下世話で多くは下ネタジョークが口をついてでてしまう。当然上司には、機会があれば左遷せんと眈々と狙われている。ワーカホリックでヘビースモーカー、明るい? セクハラを数えたらキリがない。さて…

 

ハロウィンで行方不明になった少年の捜索中に、別の少年の全裸死体が発見され、併せて幼児の柔肌を傷つける変質事件が続発する。また母子心中と思われた事件に疑問符がつきだしたと思ったら、札付きのならず者が遺体で発見される。もともと少ない警察署員は払底、経費節減を迫る天敵マレット警察署長の狭間で寝る時間もない。

 

原題「HARD FROST」が「フロスト気質」と邦題された理由は、下巻406ページであきらかになる。なるほど。芹澤恵による神翻訳でたのしい一冊にしあがっている。ウィングフィールドの作品は長すぎるとの理由で出版をこばまれたそうだが、本作第4作ではついに上下巻900ページに及ぶ。長々しい長篇が大好きなあなたにお勧めする。