多文体俳句集です。


俳句の「使用文体の拡張」

について実作とともに探っています。


文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句

の各作品をあつめました。


今回は各文体ごとに、秋季の

都市詠、自然詠、人事詠にわけて詠みました


楽しんでご覧いただければ幸いです。


*作品はすべて未発表新作です




『都市と自然』

多文体俳句集


第一部

〜口語体俳句〜


さわぎだす影は街路樹秋あかつき



カフェよ街いつまでとなく黄落期



銀杏散る立てかけられた自転車に



新派はなやか旧派おごそか美術展



橋も日にかがやく都市よあきの雲



こうえんとおおぞらさがす秋蝶と



俳句ポスト街とひとつよ小鳥とぶ



離陸のかげ着陸のかげあきのくれ



まっくらな夜ぞらよ街が天のがわ



路地の灯のひとつうつむき霧の夜



みずからをともす交番あきのあめ



マクドナルドスターバックス鰯雲



テーマパーク城ごとかげよ秋夕焼



パーキングエリア日暮のひつじ雲



月見船みなと出てよりほのあかり



幽玄よ灯ともる都市ときょうの月



テーマ∶都市詠


口語体・現代仮名遣い・現代的切れ字

(基本)




第二部

〜文語体俳句〜


立つあはれ揺るるあはれや鶏頭花



しら露やたてがみの馬うつくしき



すすきはら芒みづからさまよへり



あきのくも船の行き来を流れけり



暮れいそぎ引きいそぎけり秋の波



いまいちど鳶の揚がるや秋のくれ



くもの上やふた夜ほどして望の月



すず虫のこゑのあかるき夜闇かな



落鮎のひととせ綺羅と過ぎにけり



さだめなき風のうねりやこぼれ萩



落ち栗や木の葉はさはぎ雲はゆき



とほのく日とほのく影の帰燕かな



巻くかぜや火と咲きのぼる葛の花



透きて色うしなひにけり照り紅葉



かまきりの羽ばたくかげや日の光



枝晴れてなごりの霧のしづくかな



きつつきや山かげ揺るる湖しづか



そしていま富士もかげなり秋夕焼



テーマ∶自然詠


文語体・歴史的仮名遣い・古典的切れ字

(基本)




第三部

〜会話体俳句〜


秋ふうりん歳月吹かれはじめたか



うそのよう二日つづけてあきの虹



帰りましょう犬二頭いま草のわた



水澄むか堀を見つめるこころまで



托鉢がほーと行きますあかとんぼ



照紅葉いつかいつかと老いてきた



流れ星ひとすじ少しやすみなさい



銀杏散る千々にひらけてきた空が



そらばかり揺れていますね鶏頭花



そうなんだそうなのよ道秋すだれ



暮れません大橋映えていわしぐも



降り抜くか日暮れまぶかに秋の傘



はやる手をころがる籠の林檎だよ



老残にしたしいことよむしのこえ



かんがえてなんになります温め酒



のこるのは月だけですか住処の夜



テーマ∶人事詠


会話体・現代仮名遣い

(基本)



終わり




◇ 前回までの作品集 ◇


『三春』

多文体俳句集




『三夏』

多文体俳句集




『三秋』

多文体俳句集





◯詠んでみた感想


今回は各文体作品ごとに、

都市詠、自然詠、人事詠にわけて詠みました



◇口語体俳句 「都市詠」


現代の「書き言葉表現の俳句」は、叙景句、写実句をはじめ、都市詠も問題なく詠めます。


一方で、現代の「話し言葉表現の俳句」は、叙景句や写実句が詠みづらく、


古典的な「文語体の俳句」は、言葉の古さから現代詠全般に対応しづらいです。



◇文語体俳句 「自然詠」


古典的な「文語体の俳句」は言葉に厳格さや重厚さがあり、自然詠にも奥深さなどが出ます。


一方で、現代の「書き言葉表現の俳句」は、言葉の厳格さや重厚さの面でそれに及ばず、


現代の「話し言葉表現の俳句」は、叙景句や写実句に対応しづらいです。



◇会話体俳句 「人事詠」


現代の「話し言葉表現の俳句」は、直接的、抒情的で、人事詠により向いていそうです。


一方で、現代の「書き言葉表現の俳句」は、直接的で強い抒情性の面でそれに及ばず、


古典的な「文語体の俳句」は、言葉の古さから現代的な会話表現に対応しづらいです。



◇今回のテーマ等


・各文体俳句の特徴・特性・強みを探る

・都市詠、自然詠、人事詠

・俳句、一行詩の両側面を探る

・切れ字、切れ、季語の活用

・格調、機知、余情、間、深みなど




◯作者の個人的な考え、見解


◇その目的


多文体での俳句づくりの目的は、単なるパフォーマンスや他との競争ではなく、


自分自身の俳句やそれぞれの文体表現の可能性をさぐり、深化させていくことだと捉えています


俳句をより学び、より楽しむことを大切にしています




◯多文体俳句の主な目的


1、俳句で使われる文体の整理


各文体と各仮名遣いがごちゃまぜに使用されている俳句の現状について整理を行う提案



2、俳句同士の対立の緩和


伝統的な俳句と現代的な俳句の対立等をその両方に取り組むことで緩和すること



3、各文体の俳句の共存


文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句等を同等の俳句として扱い、取り組んでいくこと



4、各文体の俳句を互いに高めあうこと


各文体の俳句の特徴や強み、技法などを理解し、互いに高めあうこと



5、俳句の歴史と現在、未来をつなぐこと


伝統的な俳句と現代的な俳句に同時に取り組むことで俳句の歴史と現在、未来をつなぐこと


等々



現在の試みとして、


文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句


の3つ方向性を

順次探究しています


◇文語体俳句

「古典語・歴史的仮名遣い・古典的切れ字」を基本にした俳句


◇口語体俳句

「現代語・現代仮名遣い」「現代的切れ字」を基本にした俳句


◇会話体俳句

「現代の話し言葉」やそのフレーズ、会話、対話、独話、セリフ、つぶやき等を活かした句


など、個人的に大まかに分けて取り組んでいます





各文体、仮名遣い、

切れ字について短くまとめます


◯文語体が基本の俳句


◇文語体

古典語法に基づく伝統的で格調高い文体


◇歴史的仮名遣い

古典的な仮名遣いのこと

・言ふ、けふ、ゐた、てふてふなど


◇古典的切れ字18字

や、かな、けり、よ、か、ぞ、に、へ、せ、

ず、れ、け、ぬ、つ、し、じ、らむ、もがな等



◯口語体が基本の俳句


◇口語体

現代語法に基づく日常的で自然な文体


◇現代仮名遣い

現代的な仮名遣いのこと

・言う、きょう、いた、ちょうちょなど


◇現代的切れ字 の候補

よ、か、ぞ、と、に、へ、せ、で、まで、

ず、れ、け、た、が、て、は、な、こそ等



◯会話体が基本の俳句


◇会話体

話し言葉をそのままに再現した文体


◇現代仮名遣い

現代的な仮名遣いのこと

・言う、きょう、いた、ちょうちょなど


◇主な語尾の候補(要検証)

です、ます、でした、〜だ、

だった、〜ません、〜の、〜ね、〜さ等


*仮名遣いについてなど一部例外もあるようです





◯文語・口語の大まかな図


下記は、俳句における

文語・口語の大まかな図です


◇文語俳句ー文語体ー古典語ー古い時代の文体


◇口語俳句ー口語体ー現代語ー書き言葉

                                            ∟ーー話し言葉


◇仮名づかい 歴史的仮名遣い 現代仮名遣い


より詳しく細かいことについては、書籍・ネット等でしらべてみてください





◯使用している切れ字について


下記は

現代的な切れ字の候補についての記事です


「現代切れ字 十八字(候補)」

よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで

ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ


これらは「現代の言葉」で俳句を詠む際に切れ字のような役割を果たす語はないのか


「間」を生み出すために必要な「句を区切るための語」が現代の語にはないのかを探ったものです





◯俳詩の探究(旧一行詩的俳句)


俳詩として、俳句の基本を母体に

より深い「詩性」「思想性」等も探っています







◯俳句の目標


下記について、毎日の投稿などで

月日をかけて探っていければと思っています


「表現の新と万象の真」「驚きと感動の詩」


「一新一真」「都市詠の探求」「一句新世界」 


「ものごとの花」「沈黙の美」「内的宇宙」


「三物一句」「風情の継承」「平明深遠の詩」





◯現在の主な活動内容


現代語・現代仮名遣い・現代的切れ字

を基本にして俳句を詠んでいます


① 現代俳句

俳句の「現代化」「現代文学化」

について実作を通して模索しています



② 多文体俳句

俳句の「使用文体の拡張」

について実作とともに探究しています



③ 俳詩 (旧一行詩的俳句)

俳詩として、俳句の基本を母体に

「詩性」「現代性」なども探っています



④ AI共作俳句

生成AIを「制作助手」とした

俳句集づくりについて探究しています



個人的な

俳句の探究を楽しんでいます





*個人的な考えや見解をまとめた記事です


*解説について至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください


*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります




◇関連記事◇