瓦の原料は粘土です。昔の瓦の作り方は、まず土練りから始めます。

地面に掘った穴(槽)に土を入れ足で踏んで練っていきます。窓鍬(まどくわ)と呼ばれる道具を使い、土を切り刻みながらかかとで細かく踏みつけて1日半ぐらいの時間をかけて行います。冬場でも裸足で行われる大変厳しい重労働でした。

つぎに「たたら」と呼ばれる瓦の元となる大きな粘土の塊を作ってこれを針金などを使って瓦の大きさに切っていきます。この作業を荒地(あらじ)づくりと言います。荒地は1週間から10日ほど自然乾燥させ、荒地に指紋がつくかつかないくらいの乾き具合が良いとされ、それを見極める勘がいい職人でした。

乾いた荒地の形を整えて表面を雲母(うんも)で磨き、磨き終わったものを白地(しらじ)と呼びます。白地は1度に500枚ほど露天干しされさらに乾燥させます。

こうして形を整えられた瓦をいよいよ焼いていきます。瓦を焼く事を焼成(しょうせい)といい、790度から900度程度の火力で6~7時間かけて焼いていきます。焼け具合は窯に開けられた火窓(ひまど)から窯の中の色を見て判断しますが、ここにも職人の経験に裏付けられてこそいい瓦として焼きあげることができるのです。

焼成が終わればすぐに窯から瓦を出すのではなく16時間ぐらいかけてゆっくりといぶしていきます。16時間いぶされた窯の中はまだまだ高温で猛烈に熱い窯の中から瓦を取り出すのは大変なので昔は1日で気温が一番低い日の出前にこの作業は行われたそうです。

完成した瓦は水路を使いあちこちに出荷される事が多く、艀(はしけ)と船との間で荷物のあげおろしをする沖中仕(おきなかし)によって背中に荷物をしょって運ぶモツコと呼ばれる道具で運ばれました。機械の無い時代重い瓦は運ぶだけでも一苦労。それだけに瓦葺きの家はある意味裕福さの象徴でもありました。

また瓦を作る職人には、鬼師(おにし)と呼ばれる鬼瓦(おにがわら)や飾り瓦を専門につくる職人がいます。

彼らは鬼瓦の図面を描くところから始まり、ヘラ一本で素晴らしい鬼瓦の数々を仕上げていきます。

鬼師は元禄時代今から300年前にはすでにいたと言われています。

そして木型師と呼ばれる瓦の成形のための木型をつくる職人もいました。巴瓦(ともえかわら)や唐草瓦(からくさかわら)に入れる家紋の彫刻なども担当します。

彼らの仕事は裏方なためご存知の方はほとんどいないのですが、彼らの木型ひとつで瓦の美しいデザインはもちろん、吸水性や排水性などの性能面も彼らの技術しだいとなる重要な技術者だったのです。


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