沈没国家・日本を生きる「超重要なヒント」はここにあった…人類学誕生から100年、世界を変えた「4人の天才たち」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

 

沈没国家・日本を生きる「超重要なヒント」はここにあった…人類学誕生から100年、世界を変えた「4人の天才たち」

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現代ビジネス

 

---------- 「人類学」という言葉を聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろう。聞いたことはあるけれど何をやっているのかわからない、という人も多いのではないだろうか。『はじめての人類学』では、この学問が生まれて100年の歴史を一掴みにできる「人類学のツボ」を紹介している。 ※本記事は奥野克巳『はじめての人類学』から抜粋・編集したものです。 ---------- 【画像】「クソどうでもいい仕事」はこうして生まれた

「人類学前夜」の物語

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 この記事では、『はじめての人類学』の構成を記しておきましょう。まず、1章は本書を読み進めていくための、いわば土台づくりです。この章ではまず、本書における「人類学」の定義づけをします。人類学という学問分野は、イギリス、フランス、アメリカなどの国によって用いられる名前が異なります。それが読者の混乱を招く原因になるので、最初に本書における言葉の使い分けをはっきりとさせておきます。  そのうえで人類学が本格的に盛んになる20世紀前半までの「人類学前夜」にどのような学説があったのか、この学問がどのような変遷を辿ってきたのかを整理しておきましょう。  15世紀の大航海時代に西洋人は海の向こうに住む「他者」たちと出合いました。人類学が誕生するきっかけは、その時代まで遡ることができます。それ以降、18世紀の啓蒙主義時代を経て、19世紀になると、人類学は「人間の進化」という見方を頼りにして発展を遂げます。しかし、現地に行かず、蓄積された資料だけで異国の人々を理解した気になっている「安楽椅子学者」たちに対して、若い世代の研究者たちは次第に不満を募らせます。自分たちが実際に現地に行き、この目でそこに生きる人たちの姿を見てやる。人類学は、そんな若者の問題意識と熱意によって大きな発展を遂げます。

 

 

  その旗手となったのが、2章の主人公であるマリノフスキです。彼は調査地のど真ん中に飛び込んで現地の人々と暮らし、彼らの価値観や生活の成り立ち全体を理解しようとしました。マリノフスキは、まさに「生の全体」を明らかにした最初の人類学者だったのです。

 

  そして3章では、そんなマリノフスキからの流れを受け登場したフランスの人類学者レヴィ=ストロースを取り上げます。彼は20世紀の思想界に多大な影響を及ぼした「構造主義」を打ち立てた学者としても有名です。

 

レヴィ=ストロースは、人が生きていくうえで欠かせない儀礼や制度、習慣の中に潜む無意識の構造を探り出し、

人間とは何かを描き出しました。

彼の人類学的研究は「生の構造」を解き明かしたのです。

 

 

「文化相対主義」の源流

 4章では、新大陸、つまりアメリカの人類学者ボアズが登場します。

彼は人類学にとって重要な概念である「文化相対主義」の源流となった学者です。それぞれの地域、国で培われた文化には優劣などない。自分たち以外の文化も、自分たちと同等の価値があると認めるべきだ。今では当たり前のように思えるこの文化相対主義ですが、実はアメリカの人類学者たちが世界大戦という状況下で生み出した、当時としてはまったく新しい概念だったのです。そして、めいめいの文化に生きる人々はそれぞれの歴史の中で生きていくための方法を見つけ出してきた、といいます。本書ではこうしたアメリカの人類学が重視した考え方を「生のあり方」として捉えます。

 

 

  5章では、現代の人類学をテーマに据えます。この章の主人公は、現役の人類学者として後進の人類学者だけでなく、アートや建築などの領域に影響を及ぼしているインゴルドです。

彼はそれまでの学者とはまったく違うアプローチで人類学を推し進めました。インゴルドは、この世界を人とモノが絶えず絡まり合い、変化しながらつくられていくプロセスだとみなしました。

彼の新たな人類学は、「生の流転」と名付けることができるでしょう。

 

 

  これら4人が辿り着いた「生」に関わる諸概念こそが、人類学がその歴史の中で見つけ出した生きるためのヒントなのです。

 

そしてこの4人の思索を辿りながら、同時に「参与観察」や「民族誌」、「インセスト・タブー」、「贈与論」、「構造主義」、「ブリコラージュ」、「野生の思考」、「文化相対主義」など、人類学における重要ワードも押さえていきましょう。

 

  そして終章では、これまでの議論を振り返りながら、これからの人類学がどこへ向かおうとしているのか、私たちは人類学という学問をどのようにして携えて生きていくべきなのかを問います。

 

  本書を読み終わる頃には、これまで曖昧なイメージしか持てなかった人類学を、より生き生きとした、手触りのあるものとして感じることができるでしょう。人類学は遠く離れた人々を対象とする学問であるだけでなく、私たち自身の「生」を含め、「生きている」と向き合うための学問でもあるのです。 さらに連載記事〈日本中の職場に溢れる「クソどうでもいい仕事」はこうして生まれた…人類学者だけが知っている「経済の本質」〉では、人類学の「ここだけ押さえておけばいい」という超重要ポイントを紹介しています。

奥野克巳

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