岩井俊二のMOVIEラボ #6「ドラマ編(下)」2/12放送、2/18再放送 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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シリーズ

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シーズン2

1回 2回 3回 4回

 

 

感想
今回紹介の「地獄の黙示録」「ディア・ハンター」「タクシー・ドライバー」は皆観ているが、地獄の黙示録についてはやはり戦闘シーンに心を奪われるところがあって、多少自分の恐ろしさも認識した。
記録と記憶、このせめぎあいという部分は非常に納得出来る。
確かに映画を観ても、2時間まるごと記憶することなんて出来ないのに、何十年も前に1度だけ観た映画やTVのワンシーンをいつまでも覚えているという事が、確かにある。
そういった場合、オリジナルの映像なんて、却って観ない方がよほど本人のためになる(観たとたんに色褪せる)。

岩井自身のドメスティックな映画との関わり、といった側面も見えて、なかなかいいシリーズだった。
庵野の「ムービー・ラボ」も見てみたい。

 

 

内容

ゲスト「転校生」監督:大林宣彦、俳優:常盤貴子

前回は「市民ケーン」に代表される「スライス・オブ・ライフ」を取上げたが、今回は「スライス・オブ・ワールド」。
銃のある世界。ミサイルが飛ぶ世界もある。描くものは山ほどある。

 

岩井の選ぶこの1本「自転車泥棒 1948年」。
第二次大戦後のイタリア、ローマが舞台。自転車を盗まれた男が暮らしに困り、別の人の自転車を盗もうとするが捕まる。その場に居合わせる息子。
特に解決もなく映画は唐突に終わる。そこにリアリティがある。
作るのは人間。映像は記録装置→リアリティ。絵空事がまことに感じられる。時代と、それに翻弄される人を描いている。

 

ハリウッド。第一次大戦時、戦火を逃れヨーロッパから米国に移住して来た人たちが理想を作ったのが始まり。よって戦争抜きには語れない。

 

岩井が選ぶ戦争映画。
米国には戦後がない。必ずどこかと戦争が継続している。つらい、暗い。高校時代、次々に送り込まれた戦争映画。

1963年に始まったベトナム進攻は1975年まで続いた。
①「地獄の黙示録 1979年」
ベトナム戦争を大きなスケールで描いた。ウィラード大尉が、密林に消えたカーツ大佐を探しに行く。
忘れ難い記憶。それもまた映画。体験したものはリアルそのもの。映画界を変えた。

ハリウッドはエンターテイメントだった。それまでの戦争映画。例えば「史上最大の作戦 1962年」に代表されるもの。
コッポラは徹底的にリアルさにこだわった。本人が2000万ドルかけた失敗作だと言う。作者も戦争に巻き込まれた。絵空事を超えてリアルな恐怖を撒き散らした。エレノア・コッポラ(妻)の描いたこの映画のメイキング「ハート・オブ・ダークネス」に詳しい。
抜粋:https://www.youtube.com/watch?v=WtuCpHsZAUU

 

②「ディア・ハンター 1978年」
パーソナルな人間関係の中で戦争を描いた→とてつもない大作。ピッツバーグの様子で1時間以上も使っている。3人の友人が戦地に行く前に鹿狩り。彼らは戦地で捕らえられる。
主題歌が泣かせる。https://www.youtube.com/watch?v=sA_qnNrVelc
ロシアン・ルーレットというものにより、戦争を描いた。

ストーリーの中で疑似体験する。映画は記録装置。記憶は風化しない。フィクションは絵空事だけど、記憶させる事で残るもの。

 

③「タクシー・ドライバー 1976年」
テーマ曲https://www.youtube.com/watch?v=zhL8wHFcuAA

ベトナム帰還兵が起こすトラブル。戦争を描かずにベトナム戦争の闇を描いた。
その他「プラトーン」「フルメタル・ジャケット」「グッドモーニング・アメリカ」「7月4日に生まれて」等名作が多数ある。

 

戦争を描くということ。
戦争映画は、反戦のつもりがあっても戦闘シーンになれば「もっとやれ」という本能に働きかけて好戦映画になってしまう。
カラーフィルムはもともと戦争のために開発された(敵の識別を明確にする目的)。
映画の主人公に肩入れしてしまう(戦意高揚)→恐ろしさを知る。
公平ではない本能を利用して作られているのがエンターテイメント。
その未来は受け手に委ねられている。

 

1分スマホロードショー
①よりそう
海辺で女性が男とスマホで会話をしている。相手は兄?。会話が終わった後、彼女の背後から腕が伸び、振り返る彼女。
この最後は付き合っている彼の事? いえ、兄です。 具体的に兄を見せず、彼女の表情だけで見せる方法もある。

 

②鏡の自分
鏡を見ている自分と、その写っている自分が交互に現れる。最後にポジティブなイメージ。
女の子にとっての鏡は特別なもの。画面に密室感があって良かった。

 

③金と人生
腹を殴られると口からお札が出る様になった男。そのおかげで裕福になって行く。
ルールの仕掛けがあいまい。

 

一般投稿
「朝令暮改」「I Love ともちゃん」「かわいいパンダショー」

 

岩井他ゲストの感想
全6回続けて来たが、映画はとほうもないメディア。
今回は聞いているだけで栄養になる感じがした。
映画を観る切り口を教えてもらえて良かった。
映画の歴史はたかだか110年。
眺め直す事が出来て良かった。