岩井俊二のMOVIEラボ SEASON2 ④  2/25放送 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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感想
「太陽がいっぱい」は馴染みのある映画だったので、懐かしかった。まあ、あの映画は確かに嘘をウソで固めた「テッパン」ではあった。
今回は必ずしも「嘘」にはこだわらず、映画のいろんな感じ方についての監督目線をいろいろと垣間見ることが出来、一応「MOVIEラボ」っぽく締めくくった

ナ、という印象。
ジュニアではどうかな?と思っていたが、けっこう適切な合いの手入れてたし。やっぱ頭イイわ。

 

内容

第4回目 テーマ「嘘をつく」

司会 千原ジュニア、アシスタント:飯豊まりえ(17歳 高校生)
講師:岩井俊二 ゲスト:是枝裕和(監督)、長澤まさみ(俳優)

 

導入部は「スティング」

ポール・ニューマンの、文字通り「ポーカーフェイス」

大きなテーマ(ジュニア)
ウソにもいろいろある、面白い(岩井)
観客にどこまで開示するかが重要(是枝)
お芝居自体が嘘ですよね(長澤)

 

題材「太陽がいっぱい」
フィリップを殺したトムがマルジュ宛ての手紙をタイプで打っている時に、共通の友達であるフレディが来てしまう。トムが身に付けているものがみなフィリップのものである事に不快感を持つフレディ。マルジュへの手紙も代筆しているのかと嫌味を言う。
帰りがけにメイドがトムの事をフィリップのファーストネームで呼ぶのを聞き、事態が判って詰問しに戻るが、そこでトムは鈍器でフレディを撲殺してしまう。

嘘をつくためにがんばる演出。共通の友人を殺してしまう(岩井)
嘘を重ねて行くところが(長澤)
死体を片付けるところもしつこく描写されている(是枝)
リアリズムがすごい。勉強になる。お手本(岩井)

 

岩井の新作「リップヴァンウィンクルの花嫁」
結婚式を直前にして新郎新婦控室に居る当人二人。彼女はSNSで好き勝手な事を書いていたが、彼がそれを見つけてしまう。「とんでもない女が居るなー、キミじゃないよね?」との問いに「違うわ」とひきつる彼女。

この二人もネットで知り合ったという設定。次から次へと嘘がバレる。あの場所でこの話、というこだわり(ここでやらなくても・・)(岩井)
黒木華さん、顔の上と下で別の表情が出来ますね(是枝)
彼についている嘘と自分についている嘘(長澤)
嘘は憎めない。やっているうちに面白くなっていく。嘘が入ると緊張感が増す(岩井)

 

是枝の「歩いても、歩いても」
事故で子供を助けたために命を落とした男性。その残された家族の元に、毎年訪れる助けられた少年。もう10年経つ。あたりさわりのない会話。元少年が辞する時に「また来年も必ず来て下さいね」と念押しする母親。そして学生が帰った後「また太ったわね」と言う母親。

居なくなった後でいやらしさが出る(是枝)
太り具合がバツグンですね(ジュニア)。だらしなさが出てる(岩井)
ぎりぎりホンネを語る、怖いシーン。
「10年やそこらで忘れてもらっては困る。あの子にも年に一度ぐらい辛い思いをさせてもバチは当たらない」
ホンネ隠して会話が進む。本心はどこにあるのか。寒気を感じる(岩井)
編み物のシーンは監督のアイデアですか?(ジュニア)先のセリフでずっと編み物。
あれは樹木希林さんが自分でやりたいと提案したもの(是枝)
服の襟にも自分で作ったレース編みを付けた(衣装合わせの時に持って来た)。全体を計算して提案出来る、すごい(是枝)

 

1分スマホ映画
①「東京」奥山大史
たべもの屋で息子と母親の会話。ズケズケ話す母に閉口する息子。息子に、田舎に戻って欲しくて祖母のボケをオーバーに話す。
会話がうまい。

 

②「妖精」田村将章
ドアを開けると裸の男。あわててドアを閉めると、そこへ男が来て「妖精が来なかったか」。知らないと言ってやり過ごし、再びドアを開けると男は顔を包帯でぐ

るぐる巻き、手を縛られている。そこへさっきの男が駆けつけて来て、札を押し付け裸の男を連れ去って行った。
こういうバカげたの好き。いかに意表をつくか、妖精のギャップが面白い(岩井)

タイトルとのギャップ。欲を言うと、2度目に開けた時、座り方変えるとか、タバコ吸って和んでるとか(是枝)
こういう一発勝負ではタイトルも重要ですね。

タイトルはどうしてます?(ジュニア)
難しい。例えば「織田信長」とつけても、本能寺で死んで、秀吉が打ち取って、また次の大名が出て来たら、その題ではおかしくなる。悩むところ(岩井)

「歩いても 歩いても」の時は歌の歌詞(いしだあゆみの「ブルーライト横浜」)。母親が好きだった曲。一回だけその歌を出す。そこに向かって書いて行くというやり方(是枝)
そういうやり方は珍しいのでは?(ジュニア)
初めてやった。「そして父になる」の時は、映画観せてから関係者に公募し、20ぐらいの中から選んだ(プロデューサーの提案)(是枝)
名前付けるの難しい。子供に付ける名前と同じ(岩井)

 

③「[拡散希望]ストーカー殺人事件の証拠映像(ヤバめ)」岩井侑葵
暴力を受けている男が、逃げながらその状況を説明している。暗転の後どこかに閉じ込められている雰囲気。最後明るくなって「何やってんの、アンタ」
要は動画マニアの自作自演モノ。母親役は実の母親。映画好きですぐ乗って来た。声が大きくて編集に苦労した。

フェイクドキュメンタリー。写っているものの真実性。その仕切りは低くなっている。危険は危険(岩井)
ドキュメンタリーは真実でなくてはならない。映画はその逆。
スタートはドキュメンタリーだった。ドキュメンタリーは、カメラがそこにある、を前提にしており、映画はそこにカメラがないものとして編集されている(是枝)

 

④「祖母はやさしい嘘をつく」栗原麻純
祖母との電話。電車の中で見るLINEには祖母が脳こうそくで倒れた事が書いてある。タクシーでの父親との会話。
おばあちゃんがどういう嘘をついていたかが判らない(岩井)
作者談:これは全て実話。LINEでおばあちゃんが脳こうそくになった事を聞き、その後電話で話したら「ゼンゼン大丈夫」と話した。だが父親の話ではゼンゼン大丈夫じゃない。父も本当の父親。
実体験として強いものがあるが、嘘に絡めるのであれば、アナタ自身の嘘を加えると切なさが広がった(岩井)
ドキュメンタリーでもどこかに嘘がある(長澤)
実体験を盛り込むのは否定しないが、自分の感覚がそのまま伝わる事自体、あまりないこと(是枝)
おばあちゃんの事をそのまま作品にしてしまうのが作家の「業」かも知れない(岩井)
人は嘘をつく生き物。潤滑油にも犯罪にもつながる。重要なカギ(岩井)
ホントの事を言わないのが人間関係。嘘がシーンを先に転がす(是枝)
台本読めば嘘の内容が判るけど、演ずる時点では知らないものとして演じなくてはいけない(長澤)

 

是枝の「誰もしらない」
母親役のYOUに、結末は教えずにやらせた。母親が帰って来ない事を後で知って驚いた。帰らないことを知らずに演技(監督が嘘ついてる)。
どうごまかすか。嘘の上塗り(岩井)

 

まとめ

嘘というと悪い印象があるが、そういう事じゃない(長澤)

(映画は)全部嘘だけど、小さな嘘はついちゃダメ。矛盾しているけど面白い仕事。「妖精」は良かった(是枝)

深く考えさせられた。深いところまで同一体という考え方。嘘を考える事自体が映画を考えることになる。若い人たちの映像を観て、楽しい時間だった。是非新しい作品を作って欲しい(岩井)