対論「炎上」日本のメカニズム-著:藤井聡・佐藤健志レビュー【再掲】 | 反新自由主義・反グローバリズム コテヤン基地

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いつも通り目次を見てみよう

  1. 現代の「炎上」の基本メカニズム 藤井聡
  2. ジャン・アヌイの作劇に見る炎上の魅惑と詐術 佐藤健志
  3. 炎上における「隠蔽」の構造 藤井聡
  4. 炎上にひそむ「知性のめまい」をさぐる 佐藤健志
  5. 炎上のメカニズムへの挑戦 藤井聡
  6. 仮相と炎上の戦後史 佐藤健志
  7. 対談 炎上はコントロールできるのか 藤井聡×佐藤健志

 目次からも分かる通り、このご本は「炎上」をテーマにしておりまして、帯には『ネット空間だけじゃない!小泉純一郎劇場も、橋下徹劇場も、小池百合子劇場も「劇場」と名が付くものは全部社会の「炎上」現象だ!』となっております。字の色は似せました(笑)

炎上という現象(藤井聡編)

 今回は藤井聡氏に焦点を当てて見ていきましょう。2人同時にレビューするのは無理というものです(笑)

 第1章、藤井聡氏の分析から引用しましょう。

 つまり、炎上現象において人々が抱く怒りや憎悪、不安などの情念は、オリジナルの「写真」などによってだけ惹起されるものでなく、「炎上という現象そのもの」によって惹起されているのである。

 炎上とは、集団心理的に惹起される「社会心理現象」なのである。

 ちょっと省きまくりですので前述から補足しますと、炎上とはなにもネガティブなものだけではなく、例えば震災への募金などのポジティブな炎上もありうる、とされております。

 そしてその上で「ネガティブなもののほうが分かりやすい」ので、例えばピザ屋でピザを顔に貼り付けた写真をアップした炎上例をとって解説されております。

 また後述されておられるのですが、炎上とは「科学現象の炎上」とかなり似通っているとも指摘されておられます。

 

 そして以下も大変重要な指摘なので引用しておきます。

その情念複合体の根幹にあるのは、「根無し草たちであるがゆえの存在論的不安を、一瞬でも忘れた気になってみたい」という絶望的な気分に裏打ちされた、不健全かつ危険な意識だったわけだ。

 簡単に言いますと、グローバリズムやら新自由主義によって文化、伝統などが破壊され、また豊かな生活も破壊されると、人間はどんどん原子論的個人に陥っていきます。つまり自身のアイディンティティを保てない。

 従って炎上という「娯楽」でその不安をかき消したいが、実は炎上ではその不安は解消は不可能。従って炎上はますます、これからの日本社会において広がっていくだろう、という話になっていくと思われます。なんてこったい!

炎上における「隠蔽」の構造

 ここで大変重要な指摘がされております。色々と解説があるのですが、一言でまとめますと「認知不協和に炎上は陥り、ストーリー(物語)に合わない事実は無視され、隠蔽される」というものです。

 

 ここについては経路依存性の問題も論じておかねばならないでしょう。経路=物語と考えると、かなり分かりやすいんじゃないでしょうか?

 1990年代以降、日本では「改革して日本は世界で戦うのだ」物語が支持されました。グローバルスタンダードやグローバリズムというやつです。安倍政権もこの物語の登場人物の1人にしか過ぎません。

 

 ところがこの物語はどうも先行きがかなり怪しい。いや、実際には国民の所得をへらし、GDPを停滞させ、中国との国力は開く一方。軍事費においても3倍の差をつけられております。

 しかしこの物語の中に浸った人たちは、容易にこれらの「事実」を認められない。なぜなら物語そのものが破綻するからです。

 むしろ主流派経済学者やメディア、有識者、政治家、国民に至るまで「どんどん頑なになっている」と観察されます。これが自己強化メカニズムというわけです。

 

 とするならば、1990年代以降に始まった「改革物語」は一種の炎上であったと解釈可能です。官僚、公務員、土建業、農協、郵政などの「敵」を設定して次々と叩いて快感をえる情念複合体、そしてそれらが「どのように機能して、そのように大切か?」は無視される認知不協和と隠蔽のメカニズム。

 

 しかしここで、藤井聡氏の分析によると以下のような現象も起こるのだそうです。

 だから「小池豊洲劇場」にしても、「都=悪玉」という「物語」を維持するために、次々と新しい「対応」を繰り出すことはできるが、その「対応」が手詰まりになってくる、つまり「容易に」正義らしきものを叫ぶことがむずかしくなってくると、なんの反省もなくあっさり見捨て去られる。

 我々はここに一種の希望を見ることも可能です。つまりは安倍政権「劇場」も改革「劇場」も「”なんの反省もなく”あっさりと見捨て去られる」のが、最終的な帰結であろうと思われるからです。

 しかし1つ注意せねばならないのは、「反省もなく」という部分。つまりは「同じようなことが形を変えて繰り返される」という可能性も非常に高いわけで、少しでも「建設的で実相に近い炎上現象」「マシな物語」を論理的に構築しておく必要があるだろうと思います。

 

 そしてこの次の章で藤井聡氏が述べておられるように、客観的事実を突きつけるというのも、ネガティブな炎上を延々と広げない強力な手段の1つであると思われます。

 要するに物語が形成され、経路依存性を発揮して瓦解に向かうまでのサイクル、これを客観的事実を突きつけることで「速くする」のが可能だと分析しておられます。

 

 つまり、炎上自体は抑えられない自然現象である、しかしネガティブと思われるものについては客観的事実を多くの人に説明する機会があれば、炎上の隠蔽サイクルを加速させて認知不協和が大きくなり、そして大衆はあきて炎上が鎮火する、というわけです。

 

 この指摘で重要なのは「多くの人に説明する機会があるかないか?」であり、例えば私やみぬさ氏、進撃の庶民がブログランキングを上げて、より多くの読者を獲得したいという目標は「非常に正しい目標であった」といえます。

読み終えた後に

 今回は藤井聡氏の章だけを抜き出してレビューしましたが、佐藤健志氏の章も無茶苦茶面白いです。「アヌイ論」「知性のめまい」など佐藤健志氏の独特の言葉遣いと、平易でわかりやすい分析、整理がなされております。

 

 しかも(!!)このご本は藤井聡氏、佐藤健志氏というトップクラスの知性が絡み合い、さながら知性のジェットコースターといったところでしょうか。私などは歴史が好きなので6章の「仮相と炎上の戦後史 佐藤健志」がかなり新鮮でした。

 

 そしてこのご本の目的ですが、おそらく「炎上」というメカニズムを分析し、客観視することで「炎上そのもの」へのカウンターとなっている、というような解釈も可能です。

P.S 炎上に頼る人々

 安倍政権なども国会で総理が「日教組!日教組!」と野次を飛ばしたりと、炎上の基本的性格があるように思えますが、藤井内閣官房参与に配慮して安倍政権は出てきません(笑)致し方なし、でしょう。

 

 私の知る範囲の界隈でも炎上、主にネガティブな方に頼る人々がくすぶっています。例えばネトウヨなんかは、炎上の達人といえるでしょうし、またアンチ・三橋氏を掲げる人々もおそらく同様でしょう。

 それぞれ「中韓という反日勢力に立ち向かう俺達」「三橋という自民党工作員に立ち向かう俺達」というストーリーなのですね。

 

 あまり上記のストーリーは程度が良いとはいえないわけです。例えばネトウヨですと「反日メディア」「マスゴミ」というフィクションを設定しないと、自身の論理が崩壊してしまいますし、また後者であれば「三橋・進撃の庶民は工作員」などのフィクションを必要とするのです。

 なぜ必要か?本書を読み解いて理解したように「認知不協和であきる」ことを恐れているわけでしょう。有り体に言えば「あきた瞬間に存在論的不安に直面する」「アイディンティティを保てなくなる」わけです。

 

 しかも度し難いことに、上記の2つの主張はほとんどアカデミックな分析や論理を必要としていない(※1)、従って自身はなんの勉強もすることなく酔いしれられるのです。怠け者の炎上と言えましょう(笑)

 豊洲の炎上ですらベンゼンやら建築物のお勉強が多少は必要なのに、です。大阪都構想では賛成派も多大な勉強を必要としておりました。反対派も多大な勉強が必要でした(汗)

※1 ネトウヨは「愛国心」「反日メディア」とだけいっておけば、すべての事実は隠蔽できるわけですし、アンチ・三橋は「どこどこでこう発言した」というまさに「メディア的切り取り」で本旨を捻じ曲げることが可能なわけです。

 こーいうのは勉強とはいわずに「アラ探し」といいます(笑)

 

 炎上は自然現象ですので抑えることは不可能です。抑えるとしたら「社会全体が余裕がある状態」にするのがベストでしょう。

 では炎上という「ストーリー」を現時点で抑えることが不可能だとしたら、どう活用するか?は置いておいても、その発生の根底に「常識」「良識」「知識」の3つのものが必要であろうと思います。

 例えば加計学園にしても「不道徳である可能性が非常に高い」として、都議選では安倍自民を都民が見放したわけです。これは最終的な帰結がどうなるか?は置いておいても、良い炎上であったと私は判断したいなと思います。

 

 ぜひとも「財政出動炎上、反グローバリズム炎上」という「ポジティブな炎上」を日本においても、起こしたいものです。

 

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本日の男の料理 しいたけ肉詰め

 本日はしいたけの肉詰め。しいたけってなんであんなに旨味が濃いんでしょう。植物性の旨味と動物性の旨味の結合は、美味しい料理の1つの結論ですよっと。

材料

  • しいたけ
  • 合挽きミンチ
  • パン粉
  • 生姜
  • 醤油
  • 日本酒
  • 胡椒
  • 片栗粉(小麦粉でもOK)

調理手順

  1. 合いびき肉、卵、パン粉、しょうが汁、醤油、日本酒、塩、胡椒を混ぜてハンバーグっぽい肉だねを作ります。
  2. しいたけは石突を全面カット。中に片栗粉をまぶしてから肉だねを詰めていきます。
  3. フライパンでお肉の面から焼いていきましょう。中火で4分程度、焼き色がついたらひっくり返して蓋をして弱火で蒸し焼き。

 長ネギ、ミョウガ、大葉などを添えると色合いもよろしいかと思います。混ぜるときに手が冷たいので、ミンチは常温に戻しておくのがおすすめです(笑)

 

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