新年の甲信の山旅、二日目は美ヶ原に登ります。
美ヶ原なんて、と思うなかれ。移りゆく気象条件、風景の色、雪の中の石造物群などなど。夏とはまるきり違った世界を見せてくれます。
美ヶ原頂上はここ。王ヶ頭(おうがとう)という不思議な名前。
山本小屋駐車場から8の字を描いて、歩けるコースは全部歩いた。
電子地形図25000(国土地理院)を加工して作成した。(令和元年手続改正により申請適用外)
注:この地形図のスケールは編集されています。距離を参照される場合は元のスケールで確認してください。
【2023年1月7日】
山本小屋駐車場7:20~王ヶ頭山頂8:40-50~王ヶ鼻9:10-35~烏帽子岩10:30~美しの塔11:18-28~鹿伏山12:02~牛伏山12:25-30~駐車場12:45 行動時間5時間25分
美ヶ原はまずアプローチが難関です。長和町役場前で県道に入ってから凍結路を延々と登っていく。スタッドレスなら問題ないとはいえ、慎重になります。
ふる里館前の駐車場にはけっこうな台数が停まっていた。朝の気温は-10℃、風があるからもっと寒く感じる。ハードシェルパンツも履き重ねます。
今日は南岸低気圧の影響で雨か雪とのこと。ここで雨は降らないでしょうけど。でも山上に上がってみればこの空だ。方面によっては風の強そうな雲が息巻いている。
防寒対策に身を固めて、牧場内道路を歩き始めた。ここは王ヶ頭ホテルの雪上車ツアーのコースなんだろうか。立派な道になっていた。
朝の斜光が幻想的な色合いを紡ぎ出す。ピリッと冷たい空気だった。
美ヶ原のランドマーク、美しの塔が見えてきました。
しかしこの道はラッセルはないけれど、キャタピラの溝にもぐって歩きづらい。
恋人たちの聖地も今は雪に閉ざされて、鐘も凍りついていた。
しばらく進むとこの案内板。5年前の夏に、全長約35kmのトレイルを二日間かけて歩いた。冬の分水嶺トレイルはどんなだろうと想像してみた。
美ヶ原牧場は夏の面影もなく、ただ牧柵のみがアートな演出をしていた。
王ヶ頭ホテルや電波塔群が見えるはずなんだけど、風雲に包まれたままだった。このまま山頂まで行けるんだろうか、というありきたりの冬山的不安がよぎった。
この道は歩きづらいし、帰りには通りたくないな。
フードで風を遮りながら、雲の影を撮った。
雪上車を置き去りにしたまま、運転手はどこぞへと歩いていきました。
そして待ちに待った瞬間が。巨大なホテルと白い電波塔群が姿を現してくる。
やっと晴れ渡るのか!
最後の坂を登っていく。こんな日本百名山も珍しいだろう。
南面は意外なほど荒々しい表情だ。
ホテルの裏手へ回り込んでいくと石造物を集めた一画がある。みんな霧氷を浴びて、凍えそうな姿だ。
王ヶ頭山頂!
あまりにも人工物の多すぎる山ですが、わずかに自然と文化が調和しています。
厚肉彫りの不動明王。寒さをはねのける表情だ。
丸窪みに浮き彫りの摩利支天は、イノシシに乗っている。ここにだけは違う空間がある。
霧ヶ峰方面はいまだに雲の中。
御嶽山、乗鞍岳、北アルプス南部など。では王ヶ鼻まで行ってみます。
王ヶ鼻に着きました。夏より歩きやすい道になっていた。ここで大休憩にします。
王ヶ鼻にも石造物群がある。これも摩利支天。
岩の上に神像がたくさん並んでいる。
これが今日見たかった風景の一つだ。
周りが全部踏みしめられているのが惜しい気がする。
王ヶ頭を望む。
帰路は南側斜面の縁につけられた道をたどっていきます。アルプス展望コースともいうらしい。ここもトレースばっちり入ってます。
やっぱり帰りはこの道が大正解だ。
ホテルが大きすぎて、なかなか遠ざからない。
烏帽子岩に寄り道してみましょう。
断崖絶壁を覗き込んでいるところ。
だいぶ気温も上がってきたみたい。朝の気分とは全然違う。
あんなに遠くなった。
そして美しの塔まで戻ってきました。
今日はこの後霧ヶ峰まで移動する予定だったが、時間がかかるしめんどくさい。ここでたっぷり遊んでいくことにしよう。なので鹿伏山と牛伏山を周回することにします。
それはほとんど平たい雪原に見えるのだが、左が鹿伏山で右が牛伏山である。自分の好きな所を踏んで歩いてゆけばよい。まずワカンを装着します。
スノーシューをつけたらスマートなんだろうけど、今日はワカンなのです。あの雲の下まで歩いていきます。
美しの塔も小さくなった。向こうにも雲がふたつみっつ浮かんでいる。
まず鹿伏山に着きました。ここは三角点があるのみ。とにかくだだっ広い。
お次はあの牛伏山へ。この区間もワカンが役に立つ。
ああ右手遠くに、昨日登った蓼科山も見える。
はい、牛伏山に到着です。こちらは夏道もあるようで、すばらしく整備されている。
とりわけこの山名方位盤は、芸術的な仕上がりである。
少し離れた二つのコブ。あれが最高地点なのかな。
その間のコルを通って、駐車場へと下っていくのです。裏側は岩がゴツゴツだった。
駐車場まで下り着いたら、モニュメントがありました。
冬の美ヶ原は他の山の天気が悪いとか、ついでの時に登ればいいと思っていた。でもやっぱりこんな日に登れば、最高のインプレッションを与えてくれる。
七草の日の、山からのすばらしい贈り物でした。
つづく