中国で一般に食べられているものの、日本であまり馴染みのない食材がたくさんあります。タウナギとザリガニはその一つです。両者とも現代の中国において重要な食材になっています。タウナギは中国語で鳝鱼(shan4yu2)と書きます。タウナギはウナギよりひと回り小さく、色が茶色でウツボのように見える不気味な魚ですが、市場やスーパーで普通に生きたまま販売しています。夜行性で池や小川に住み小魚や昆虫を餌にしています。
タウナギは見た目がウナギやアナゴにも似ています。タウナギを捕って背割りでさばき、タレを付けてかば焼きにしても、味がウナギと全然違って違和感を覚えます。最近、ウナギの値段が非常に高いですが、残念ながらタウナギは代用品には成りえません。身が固く脂身が少なく蛇の肉に近い食感です。魚や肉の柔らかい食感の食材が多い中で、弾力性に富んだタウナギの食感は珍しい部類です。
中国ではタウナギを炒め物や煮物、から揚げにして食べており、宴会でもよく出されるポピュラー料理です。中国料理の味付けは濃厚で、タウナギ独自の泥臭さは気になりません。でも淡泊な日本料理には適さず普及しなかったのでしょう。中国では古くから漢方薬として、滋養強壮効果が高い食材として養殖され一般に広く食べられています。ウナギよりタウナギの方がむしろ扱いやすく、蒸す・煮る・揚げる・炒めるなど色んな料理に使えるので重宝します。
中国のタウナギ料理の火爆鳝鱼(huo3bao4shan4yu2)を紹介しましょう。タウナギの内臓を取り出し、骨抜きして5㎝ぐらいにぶつ切り、菜種油を高温に熱した鍋に入れて炒めます。一旦別の皿へ取り出し、鍋に残った油へニンニク、唐辛子、胡椒、生姜、山椒を入れて良く炒めます。途中で豆瓣酱(dou4ban3jiang4)を加え更に炒めます。最後に、取り出しておいた鳝鱼を戻し、珠江酱油(中国の醤油)で味を整えます。
タウナギの分類は魚種ですが、エラがないので水の中で呼吸できません。水面上に顔を出して息継ぎします。生息域は諏訪湖や奈良県などを中心にかなり広い範囲に広がっており、食料として100年ほど前に外国から持ち込まれたものです。タウナギは水田に穴を開け、一晩で水田を干してしまうため、農家にとっては脅威の外来種です。幸いにさほど被害が出ていませんが、温暖化の影響で、冬眠しないタウナギが出現すれば、更に繁殖するかも知れませんので農家は気が抜けません。沖縄に生息するタウナギは日本の固有種で、絶滅危惧種に指定されています。
東京でタウナギを味わえるレストランが数軒あるようです。関西では残念ながら、お目に掛かれません。中国へ渡航された際には、ぜひタウナギ料理をご賞味ください。貴重な体験になります。