去る4月10日放映の「NHKテレビ中国語会話」の冒頭、流行語の躺平(横たわり族)が紹介されました。またその番組中で、(chun1)の発音は、unが子音と結合するのでeが省略されています。発音はunでなくuenですと説明がありました。
 さてこれまで三編に亘り、紹介してきた中国流行語もいよいよ最終編です。
躺平 「横たわり族」 2021年
 2021年4月17日にネット上へ、1人の青年から以下の投稿がありました。
躺平才是宇宙间客观的唯一真理,休息,睡觉或是死亡,充满欲望和亢奋的生命体静止和消逝的瞬间或是才是真正正义的体现,我选择躺平,我不再恐惧。「横になるのは宇宙観の客観的な唯一の真理、休み、寝るまたは死亡、欲望と興奮に満ちた生命体を静止したり消えたりする瞬間、あるいは本当の正義の体現です。私は横になることを選びます。もう怖くないです」。
 当局はこの投稿に気付き慌てて削除しましたが、瞬く間に拡散されました。これが躺平族[tan3ping2zu2](横たわり族)という一種の精神的支柱として広まりました。中国は過去にない速さで経済成長し、食べ物に困るような貧困者も少なくなり、国民の生活も向上しました。反面、厳しい受験戦争を通り抜けても就職ができない、限度を超えた長時間労働、高くて買えないレベルに達した住宅、一人っ子政策がもたらした双両親介護など、国が豊かになっても、自分たちが豊かになるとは限らないと、将来に悲観的になっています。躺平を直訳すれば、寝そべるや休むですが、多くの人が意味している躺平は、ガムシャラに働かない、車・住宅を買わない、結婚しないなどです。伝統的な考えに縛られず、自分の精神的な幸福を尊重する生き方を重視しています。
 立身出世や拝金主義、車や家などのモノに無関心になり、心の健康と余裕を取り戻す選択です。
政府は、労働力不足や人口減少に繋がることで経済成長が止まるだけでなく、社会の仕組みや制度の不満に繋がり、政府批判に転じることを懸念しています。
内卷 「内部競争」  2021年
 職場や学校での過度の競争状態を指します。中国の国有企業は、潰れることがないので铁饭碗[tie3fan4wan3]「食いはぐれる心配のない職業」と呼ばれていました。仕事が楽で、頑張って頑張らなくても給料はさほど変わらず、定時一斉退社が当たり前、企業団地内には病院や幼稚園、小学校なども完備し福利厚生面では優れています。ぬるま湯の中で競争意識が抜け、生産性は伸びず軒並み赤字に陥りました。今では国有企業も改善され、残業代が出ないのは当たり前、建屋の照明は夜遅くまで消えることはありません。
 でも年々 職場や学校で限られたパイを取り合う非理性的な競争が激しくなっています。前述の躺平は内卷[nei4juan3]の裏返しの意味も持ちます。
我的眼睛就是尺 「私の目は定規です」 2022年
 2022年2月5日夜、北京冬季五輪中継を解説していた王濛が言った言葉です。男女2000mスケートの混合リレー決勝で、范克新、曲春雨、任志偉、呉大静のチームが、2分37秒35のタイムを達成イタリアチームを圧倒し、中国代表団の最初の金メダルを獲得しました。司会の黄建祥がゲストの王濛にコメントを求めたところ、興奮し立ち上がり机を叩いて「勝ったに違いない!最初の金が生まれた!」「 私の目は定規だ! ビデオを見る必要はありません! 」と言いました。彼女の熱意は会場の聴衆に伝わり、テレビを視聴していた多くの人々をさらに興奮させました。
倒也不必 「そこまでする必要はない」 2023年
 すでに起こっていることが、既に合理的な結果を産み出しており、その事柄について過度に追説明したり誇張したりする必要がない場合に用います。また、ある事柄について過度に心配したり要求したりする必要がないという意味にも使います。
 ・你倒也不必每天工作到很晚。 (毎日遅くまで働く必要はない。)
 ・他们倒也不必担心考试。 (彼らは試験を心配する必要は全くない。)
 ・我们倒也不必现在就决定。 (今決める必要はない)