【独偏ベストテン 41-2】 林哲司の作曲シングル作品 (1~5位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 タイミングの関係で動画のメンテを1回挟む恰好になりましたが、長らくお待たせ致しました~今回も林哲司センセの作曲シングル(A面)を対象とした「独断と偏見によるベストテン」をお送りします。さっそく、第5位から第1位まで一気にご紹介したいと思います。それではどうぞ~

 

 

 


第5位 青い制服 (国実百合) 【オススメ度★★★★】
作詞:麻生麗二、作曲:林哲司、編曲:林哲司
[1988.3.16発売; オリコン最高位19位; 売り上げ枚数2.8万枚]


 ベスト5に一角に食い込んだのは、国実百合の記念すべきデビュー曲「青い制服」でした~ この作品のモチーフは、「部活に汗を流す男のコを、蔭からひそかに応援する少女の片想い」ってことで、’80年代のアイドルポップスには割とよく登場するシチュエーションですよね。そういえば、今回の独偏で第18位にランクインした藤谷美紀「応援してるからね」もまったく同じテーマだったりして(・・・と思ったら、作詞者が麻生麗二(=売野雅勇)で同一人物だったのでした。さもありなん)。

 国実百合は、“おニャン子旋風”がすっかり沈静化した1988年にデビューということで、“遅れてきた清純派アイドル”という表現がピッタリ
だと思います。彼女が売れなかったのは“時代のせい”というのもありますが、「可愛い」以外のチャームポイント(意外性でも可)が打ち出せなかったのも敗因の一つなのでは・・・。デビュー当時から7作連続でシングルA面の作曲を手掛けた林哲司センセによれば、「芸能界に入らない方がいいんじゃないか」と思ってしまうようなピュアなイメージの女の子だったそうなので、4年足らずで芸能界を引退してしまったのは、本人にとって幸せな選択だったかも知れません

 この曲は、ピュアな青春の1ページを切り取った胸がキュンとなる歌詞のイメージを大切にしつつ、林哲司センセが「爽やかさ」と「切なさ」をぐぐっと詰め込んだ秀逸なアイドルポップス
。’80年代に、清純派女性アイドル向けのシングルのオーダーが林センセに殺到したのもなるほど頷ける出来に仕上がっていると思います。私のようなオヤヂは、ラストのフレーズ ♪ なぜ誰かを好きになるの…? という、おそらく“人類にとって永遠のテーマ”をあどけない声でさらっと歌われてしまうと、思わずハッとさせられてしまったりなんかして・・・

        「青い制服」(国実百合)
      「応援してるからね」(藤谷美紀)


第4位 ふたりの夏物語 (杉山清貴&オメガトライブ) 【オススメ度★★★★】
作詞:康珍化、作曲:林哲司、編曲:林哲司
[1985.3.6発売; オリコン最高位5位; 売り上げ枚数36.8万枚]


 杉山清貴&オメガトライブの5作目シングル「ふたりの夏物語」が、第4位に入りました~。デビュー曲「サマー・サスピション」が個人的に思い出深いスルメソングなので、どちらを上にするか最後まで悩みましたが、結局「ふたりの…」を採ることにしました。「サマー…」の方は、そのうちお薦めシングルレビューで取り上げるかも知れません

 この曲は、「爽やかさ」「切なさ」「都会的」の要素が三位一体となって、いかにも林哲司センセらしい作品
ですよね杉山清貴&オメガトライブの夏らしいイメージともばっちりフィットしてますし♪ Only you 君にささやく ふたりの夏物語~ というフレーズが入ることと、JALのキャンペーンソングになることがあらかじめ決まっていたとはいえ、与えられた“お題”に対して満点の答案を書き上げて期待に応える林哲司センセはやっぱりスゴイ なにせ、曲が完成した段階で、VAPレコードの喜多一郎ディレクターは「これは絶対売れる」と確信したそうですから・・・林哲司センセのコンポーザーとしての実力がまざまざと見せつけられる作品だと言えるでしょうね



第3位 パステル・ブルーのためいき (島田奈美) 【オススメ度★★★★】
作詞:松本隆、作曲:林哲司、編曲:船山基紀
[1987.8.12発売; オリコン最高位7位; 売り上げ枚数4.4万枚]


 第3位に入ったのは、1986年にデビューした島田奈美の6作目シングル「パステル・ブルーのためいき」でした~ 林哲司センセは彼女に4曲のシングルA面曲を提供しているのですが、ヘタするとその中で一番地味で知名度の低い作品かも知れません・・・(ちなみに残りの3曲は「負けないで…片想い」、「パウダースノーの妖精」、「Free Balloon」)。

 島田奈美は、色で言うと“純白”の良く似合う清純派アイドル
でした。典型的な“タヌキさんチーム”に属する顔立ちの彼女は、どうしても幼く見られがちだったのですが、時おり見せる大人びた表情が彼女の魅力を倍増させていましたね~。歌手としてはこれといったヒット曲は出ませんでしたが、清純派アイドルをまさに地でいく彼女は、コアなファンをしっかりと獲得していました。そして、この「パステル・ブルーのためいき」は、そんな彼女の持つピュアな魅力を最大限にアピールする”極上のアイドルポップスだと私は確信しているのです。

  ♪ パステル・ブルーの ためいきをあげる
    Sea Wind 瞳とじて 何秒待ったかしら
    あなたはおでこ 弾(はじ)いて
    Sea Wind まだ早いよ そうシャイなポーズ
    松林抜け 海に向かって歩いた
    ポロシャツに焼けた顔 もてすぎるから独り占めしたい

  ♪ パステル・ブルーの 秋のセーターを
    編んだのに 紙袋の中
    パステル・ブルーの ためいきをあげる
    ぶきっちょな 手作りの夢を
    笑われてしまうのがこわい

  ♪ Sea Wind でも意外に ホッと安心した
    真面目な人と 分かって
    Sea Wind 秋の風が もう針のようね
    肩に回した 暖かな手が素敵よ
    友達がからかうの 手編みだなんて 時代錯誤だと

  ♪ パステル・ブルーの 秋のセーターを
    渡したい 渡せない わたし
    パステル・ブルーの ためいきをあげる
    紙袋 のぞき込むあなた
    当ててみて 似合うから きっと


 いやぁ、思わず全部書き下してしまいましたがとにかく歌詞が可愛いのです。自然に場面が浮かんできて、状況がすんなりと理解できるのは、心象風景が上手に歌詞に織り込まれているからでしょうね。さりげなく、「渡し」と「私」が掛詞(かけことば)になっているのもgood この曲のリリース当時、「奈美ちゃんみたいなコから、こんな風にセーター渡されたら最高だよな~」と妄想を膨らませた男のコが、さぞかし沢山いたに違いありませんな~(←と、他人事のように書いてる私も同じ穴のムジナなのでした)。



第2位 悲しみがとまらない (杏里) 【オススメ度★★★★★】
作詞:康珍化、作曲:林哲司、編曲:角松敏生/林哲司
[1983.11.5発売; オリコン最高位4位; 売り上げ枚数42.3万枚]


 第2位にランクインしたのは、杏里の14作目シングル「悲しみがとまらない」でした~ この曲は大ヒットしたので皆さんもご存知ですよねアニメ主題歌「キャッツ・アイ」が、デビュー5年にして念願の大ヒットとなった直後にリリースされるシングルということで、作品選びが非常に難しかったのではないかと思います。何しろあの段階では、「キャッツ・アイ」を買ってくれた人達は単なるアニメファンで、杏里本人のファンではない可能性が高かったワケですから・・・

 当時の常富喜雄ディレクター(あおい輝彦のヒット曲「あなただけを」のコンポーザーとして有名
 ご親切な読者の方から、常富氏の名前表記誤りについてご指摘戴きました。ここに感謝とともに謹んでお詫び・訂正いたしますm(_ _ )m)が、大成功した「キャッツ・アイ」の派手なイメージをいったん捨てて、杏里の本質を抽き出す作品作りをするべく原点に戻ったというのが、まさに“卓見”と言えますし、富常氏がプロデューサーに抜擢した角松敏生センセも、期待に見事に応えてその辣腕ぶりを発揮フツーなら作曲家でもある角松センセが自ら曲を書くところをわざわざ林哲司センセに依頼して、結果的にこんな超名作を生み出してしまうんですからホントに驚きですよね~。果たして、「悲しい色やね」(上田正樹)「悲しみがいっぱい」(林哲司)と並んで康珍化-林哲司コンビによる“悲しみ三部作”として語り継がれる「悲しみがとまらない」が誕生したワケです

 この作品は、女友達に彼氏をとられてしまうプロセスを巧みに綴って多くの聴き手から共感を引き出した康珍化センセの歌詞も見事
なのですが、それ以上に素晴らしいのが林センセの曲ですね。イントロからエンディングまで贅沢なくらいに“サビ”を盛り込んだ切ないメロディが最高なのです。彼女のイメージに合わせてフィリー・ソウル仕立てにしてあるのも、なかなか心憎いワザと言えましょう。後世に伝えたい歌謡曲として、ずっと大切にしていきたいなとしみじみ感じる作品ですね~



第1位 稲妻パラダイス (堀ちえみ) 【オススメ度★★★★★】
作詞:康珍化、作曲:林哲司、編曲:萩田光雄
[1984.4.21発売; オリコン最高位5位; 売り上げ枚数13.7万枚]


 今回、独偏ベストテンの栄えある()第1位に輝いたのは、堀ちえみの10作目シングル「稲妻パラダイス」でした わ~、パチパチパチこの曲で真っ先に思い出すのは、やっぱり何と言っても「ザ・トップテン」での“靴飛ばし事件”でしょうか。あの一件は、もちろん“やらせ”でも何でもなく“アクシデント”だったワケですが、飛ばした靴がADに当たってしまって、「しまった」「でもちょっと可笑しい」という感情が入り交じった彼女の表情がものすごく自然体で、何とも可愛かったんですよね・・・ もしあそこで靴が当たった相手が一般の観客だったら、あんなに複雑な彼女の表情は見られなかったのではないでしょうか

 この作品はビーチボーイズのようなアメリカのオールディーズっぽいものをやりたいという、当時キャニオンのプロデューサーだった渡辺有三氏の意向に沿って作られたものだそうです。でも、林哲司センセご本人もおっしゃっているように、メロディ的には“林哲司・色”が非常に薄いんですよね・・・。むしろ井上大輔センセあたりがいかにも書きそうな感じの作品だったりします

 曲の方は、いまにもスコールを予感させる雷
の効果音で始まるイントロからウキウキ感が満載っ 最初っから最後までキラキラ感満載の極上アイドルポップスに仕上がっていて、楽曲そのものに勢いを感じます堀ちえみの歌唱も安定していて、この曲を歌う彼女はとってもまぶしくて魅力的に見えました私の頭の中にある “アイドルポップスとはかくあるべきもの”という理想像に限りなく近い作品だった、と言っても良いかと思います。花王エッセンシャルシャンプーのCMタイアップもついて、個人的に5作目シングル「さよならの物語」を超えるレベルの“ちえみブレイク”の予感を個人的には感じたのですが、なぜか大ヒットにはならなかったのが意外でしたが・・・(←でも私の予感はこんなのばっかだ)。う~む、とびっきりの名曲だと思うんだけどなぁ(まだ言ってる)。

 動画については、“靴飛ばし事件”の映像がYouTubeに上がっていたので、ぜひどうぞ~
。0:43~1:03あたりの彼女の表情をとくとご覧下さいね




 ・・・以上で独偏ベストテンの発表はおしまいです。皆さんのお気に入り作品は登場したでしょうか・・・
 これは後から気づいたのですが、前回の独偏ベストテン(コンポーザー編;尾崎亜美)でも、杏里堀ちえみが上位にランクインしていたんですね~。とは言っても、私は特に2人の大ファンというワケでもなく、あくまで作品の出来を評価したらこうなったというだけ。この結果は単なる偶然ですので、念のため~。

 今回の独偏では何と言っても、ソロ時代にリリースした全シングルA面(12曲)を林哲司センセに書いてもらった菊池桃子の曲が一つもベストテンに入らなかった
というのが、皆さんにとっては予想外だったかも知れませんね・・・。そうなった理由については、前回記事でペイルさんから戴いたコメントに私が返したレスの中で触れていますので、気になる方はそちらをご覧下さい。毎度のことながら、「独偏ベストテン」はあくまで“私の独断と偏見で評価したらこうなったランキング”という趣旨でやってますので、いろいろと異論はあると思いますがその点どうかご容赦下さいね

 前回の記事に引き続き、ここまで長い記事をお読み下さった皆さん、本当にどうもありがとうございましたm(_ _ )m。次回の記事は 【独偏ベストテン Vol.41-3】 林哲司の作曲シングル作品 (資料&補足編) と題して、基礎データの資料などを紹介しますので、引き続きお付き合い下さいね。最後に、今回の独偏ベストテンの上位10曲を整理してご紹介して締めたいと思います。それでは、またお逢いしましょう~


【wishy-washyの独偏ベストテン 林哲司作曲シングル(A面)】
第1位 稲妻パラダイス (堀ちえみ) 【オススメ度★★★★★】
第2位 悲しみがとまらない (杏里) 【オススメ度★★★★★】
第3位 パステル・ブルーのためいき (島田奈美) 【オススメ度★★★★】
第4位 ふたりの夏物語 (杉山清貴&オメガトライブ) 【オススメ度★★★★】
第5位 青い制服 (国実百合) 【オススメ度★★★★】
第6位 涙のハリウッド (河合奈保子) 【オススメ度★★★★】
第7位 信じかたを教えて (松本伊代) 【オススメ度★★★★】
第8位 セプテンバー物語 (児島未散) 【オススメ度★★★★】
第9位 シルバー・レイン (宮本典子) 【オススメ度★★★★】
第10位 気分を着換えて (中島めぐみ) 【オススメ度★★★★】