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もくじ

ライター紹介

安田光江 日本大学芸術学部 映画学科卒業

学生時代からライター修行をはじめ、卒業と同時にフリーに。2005年~07年まで留学した 上海で、中国語と東洋美容、中国茶などを学ぶ。「anan」「マキア」「ar」など、多数の女性誌で美容や心理学、恋愛記事などを執筆。

3rd Story|VOL.12 安らぎの場所【最終回】

“家にいて、言うチャンスなんてあるのかな”


一瞬、不安がよぎったが、それは彼を信じることに決めた。

7階建てのこぢんまりとしたマンションの5階の角部屋に、彼は住んでいた。

今まで2回、家には遊びに行っていたが、近くのスーパーに食材を買いに行き、料理を作って、もちろん何事もなくバイバイしていた。

その部屋は、よく片付けられていて清潔だ。

物も少なく、インテリアは素朴だけれど、くつろげる雰囲気は彼そのものだった。

さっそく手土産で買ってきたマロンケーキを出し、彼が入れたコーヒーで、向かい合わせに座り、たわいもない話をしていた。



その時は、思いのほか、早く来た。


話が途切れた瞬間、お互いに言葉がなく、ただ、ザーザーという雨の音と車のクラクションの響きだけが聞こえてきた。



「結婚してください」



彼は、レミの目を見ながら、そうハッキリと口にした。

真剣だけど穏やかな目でレミを見つめ、恥ずかしがるそぶりもなく、ただ真面目にレミの反応だけを待っていた。

あまりにも突然すぎて、ただ驚いたが、レミも素直に


「はい」


と口に出した。

そのとたん、彼はホッとしたような表情で、笑みを浮かべながら

「ありがとう」
と、ひと言つぶやいた。


「さて、今日は家でゴハンでも作ろうか! 」
「うん! 」

傘を持って、マンションを出て、駐車場に向かって歩こうとすると
「ちょっと待って」

彼がレミを引きとめた。

「今日は歩いて行こう」

いつもは車なのに、よりにもよってなんでだろう?


レミは不思議に思ったが、すぐにその答えはあった。

傘を右手に持ち、左手でレミの手を握ってきたのだ。

ぎゅっと握られたその手は、やっぱり想像どおり、優しい温かさだった。

目に涙が溢れそうになり、そのまま前をみて、レミもぎゅっとその手に力を入れた。


いつも、辛いことがあっても、人に相談するのはニガテだった。

だから、自分だけで考えて、答えがでなくて、ひとりで泣いてばかりいた。

そんな経験の積み重ねが、レミの生きる道しるべとなり、彼にたどりつくことができたのだ。

すべて、ムダな経験ではなく、この幸せを得るための選択だった。
この穏やかで静かな安らぎの場所を得られたことが、またレミの新たな人生の道しるべとなる。




Fin…

3rd Story|VOL.11 St.Valentine's Day

彼とは、家の近くの神社にお参りに行った。


“今年こそ、本当の幸せを手に入れられますように”


手を合わせ、そう心の中でつぶやいた。

彼は何をお願いしているのかはわからないけれど、こうしてふたりで初詣に来られることが、素直に嬉しかった。

お正月が過ぎると、また普段の生活が始まる。




出会ってから、半年が過ぎているけれど、相変わらず何の進展もない。

全くアクションがないことにレミはイラついていた。

これに関しては、ただの誘いとは違うので、彼からアプローチをしてくるべきだ、とレミは思っている。

そんな複雑な心境がメールにもつい現われてしまい、そっけない返事を返してしまう。
このままだと何も状況は変わらない、と考え、カウンセラーの半沢さんに相談することにした。


半沢さんは、いつもの包み込むような笑顔でレミを出迎えてくれた。


「それで、川村さんとはうまくいっているの? 」
さっそく、本題に入る。

「はい。うまくいっていると思います」
「よかったじゃない! でも、レミさんは、彼が何もアクションを起こしてこないことに悩んでる。そうでしょ!? 」



「さすが半沢さん! 何で分かるんですか? 」

「あなたの表情と、彼の性格を知っていれば、長年の経験で分かるわよ。
これは来月のバレンタインが勝負ね。大丈夫。私から川村さんに話しておくから」

「すみません、よろしくおねがいします」


半沢さんと話したことで、心がスッキリした。
こういうカウンセラーとの出会いも、縁あってこそだ。
本当に、ここでよかった、と心からレミは思った。



2月14日、バレンタインデーはお互い仕事で会えなかったのでその週の日曜に会うことになった。

本当に彼はプロポーズをしてくれるのだろうか、
そう考えると不安で仕事が手につかなくなることもあった。


でも、私はどうしても彼と結婚したい。


今はその気持ちが風船のように、日に日に膨らんでいっている。

会う前の日、コスメショップでローズのバスソルトを買った。

何かの雑誌に「ローズには媚薬効果がある」と書いてあったのを思い出したのだ。

入浴剤にしては\3800という値段は高かったが、願掛けとして何かしたかった。

その夜、ローズの優雅な香りに浸りながら、ゆっくりとバスタブで体を温めたおかげで、ぐっすりと眠ることができた。


その日はあいにくの大雨だ。

とっておきのワンピースだったのでパンプスを履くつもりが、やめて長靴にした。

どこか、遊びに行こうと話していたけれど、結局車で家に迎えに来てくれて、彼の家でゆっくりしよう、ということになった。




~VOL.12 『最終回|安らぎの場所』に続く~
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