1st Story|VOL.02 過去の傷跡
あるとき、鏡に写った顔を見てドンと重い衝撃を受けた。
食事が喉を通らない生活を続けていたせいでやせ細った頬、スキンケアにまで手を抜いていたからか、頬や口の周りが乾燥してくすんでいる。
瞳には潤いもなく、30代に足を踏み入れる前の女性特有の華やかさが微塵も感じられない。
こんな毎日を送っていたらどんどんダメになる。このまま腐っていくだけ。
ミワは鳥肌が立って身震いした。
自分ひとりを幸せにできなかったら、他人と幸せになることなんてできない。
「まずは自分を磨きなおそう!」
思い立ったら即行動がミワの長所だ。
早速ヘアサロンに行き・・・
髪を整え、その帰りにデパートに寄った。
気づけば、大好きなコスメブランドから新製品も出ている。
そのキャッチコピーも『ふっくらとしたハリ肌。明日に向かって美人になる』という、
今ミワの気分にピッタリだ。そして、スキンケア一式を購入した。
エステのフェイシャルやリンパマッサージにも定期的に通い、ボディメンテナンスをした。
お芝居や映画、美術館にもこまめに足を運んだ。
1年が経ち、ミワは見違えるようにイキイキと輝く女性に変化していた。
このとき、誰かに寄りかかって生きるのではなく、自分で自分を幸せに出来るようになったのだ。
もちろん、魅力を増したミワに誘いの言葉をかける男性も何人かいた。
合コン行けばウケもよく、後日、誰かしらか連絡があった。
ただ、「不信感」という灰色がかったしこりが残っているせいで、男性が信用できなくなっていた。
ひとりだと毎日が楽しい。
寂しいといえば、雨の日に部屋にいるときくらいだ。
でも、また誰かと付き合ったらストレスを抱える日々が来るのではないか。
そんな不安で、ミワは恋愛に目を向ける勇気はなかった。
「あなた、最近楽しそうね。1年前と比べて見違えるようだわ」
夕食を終えてお茶を入れていると、洗い物をしながら母親が言った。
「うん。まあね。やっぱりひとりってラク。私、もう結婚なんてしないかもなぁ…。」
「でもね。」
食器を流す水を止めて、ミワを振り返る。
「ママ、思うんだけど、ミワはひとりでも楽しめるコだけど、ふたりだともっと楽しめるんじゃないの?」
「え~、そうかなぁ。」
その時は軽く流したけれど、部屋でひとりになると、母親の言葉が頭の中で再びよみがえった。
確かに、ひとりで充実した時間を過ごすのは、極上の贅沢だし不満もない。
まるで恋人のように気遣ってくれる友達だってたくさんいる。
男性が秘かに投げかける視線を楽しむのも、悪くない。
ただ、なんとなく空虚感があるのは否めない。
それは、久々にいい映画を観たとか、なんとなく入ったカフェのカプチーノが美味しかったとか、街で人違いをしてしまったこととか、たわいのない日常を伝えられる相手。
傍であたたかく、毎日の生活に溶け込んでしんみりとした幸せを感じあえる人がいたら…。
「やっぱり、私は同じ方向を見て、一緒に歩いていける相手が欲しいんだ。」
ただ、世間が言う適齢期を過ぎたからとか焦りとかではない。
自分をリセットして、初めて心の底から強く思った。
「結婚したい。」と。
~VOL.03 『心の奥にあるもの』に続く~
食事が喉を通らない生活を続けていたせいでやせ細った頬、スキンケアにまで手を抜いていたからか、頬や口の周りが乾燥してくすんでいる。
瞳には潤いもなく、30代に足を踏み入れる前の女性特有の華やかさが微塵も感じられない。
こんな毎日を送っていたらどんどんダメになる。このまま腐っていくだけ。
ミワは鳥肌が立って身震いした。
自分ひとりを幸せにできなかったら、他人と幸せになることなんてできない。
「まずは自分を磨きなおそう!」
思い立ったら即行動がミワの長所だ。
早速ヘアサロンに行き・・・
髪を整え、その帰りにデパートに寄った。
気づけば、大好きなコスメブランドから新製品も出ている。
そのキャッチコピーも『ふっくらとしたハリ肌。明日に向かって美人になる』という、
今ミワの気分にピッタリだ。そして、スキンケア一式を購入した。
エステのフェイシャルやリンパマッサージにも定期的に通い、ボディメンテナンスをした。
お芝居や映画、美術館にもこまめに足を運んだ。
1年が経ち、ミワは見違えるようにイキイキと輝く女性に変化していた。
このとき、誰かに寄りかかって生きるのではなく、自分で自分を幸せに出来るようになったのだ。
もちろん、魅力を増したミワに誘いの言葉をかける男性も何人かいた。
合コン行けばウケもよく、後日、誰かしらか連絡があった。
ただ、「不信感」という灰色がかったしこりが残っているせいで、男性が信用できなくなっていた。
ひとりだと毎日が楽しい。
寂しいといえば、雨の日に部屋にいるときくらいだ。
でも、また誰かと付き合ったらストレスを抱える日々が来るのではないか。
そんな不安で、ミワは恋愛に目を向ける勇気はなかった。
「あなた、最近楽しそうね。1年前と比べて見違えるようだわ」
夕食を終えてお茶を入れていると、洗い物をしながら母親が言った。
「うん。まあね。やっぱりひとりってラク。私、もう結婚なんてしないかもなぁ…。」
「でもね。」
食器を流す水を止めて、ミワを振り返る。
「ママ、思うんだけど、ミワはひとりでも楽しめるコだけど、ふたりだともっと楽しめるんじゃないの?」
「え~、そうかなぁ。」
その時は軽く流したけれど、部屋でひとりになると、母親の言葉が頭の中で再びよみがえった。
確かに、ひとりで充実した時間を過ごすのは、極上の贅沢だし不満もない。
まるで恋人のように気遣ってくれる友達だってたくさんいる。
男性が秘かに投げかける視線を楽しむのも、悪くない。
ただ、なんとなく空虚感があるのは否めない。
それは、久々にいい映画を観たとか、なんとなく入ったカフェのカプチーノが美味しかったとか、街で人違いをしてしまったこととか、たわいのない日常を伝えられる相手。
傍であたたかく、毎日の生活に溶け込んでしんみりとした幸せを感じあえる人がいたら…。
「やっぱり、私は同じ方向を見て、一緒に歩いていける相手が欲しいんだ。」
ただ、世間が言う適齢期を過ぎたからとか焦りとかではない。
自分をリセットして、初めて心の底から強く思った。
「結婚したい。」と。
~VOL.03 『心の奥にあるもの』に続く~