wish横浜 Marriage Story -4ページ目

2nd Story|VOL.17 ワタシとアナタが歩み出す日【最終回】

「それじゃ、さようなら。」


そう一言、いうのが精一杯で彼の顔を見つめた。


(笑わなくちゃ。)


そして、力を振り絞って笑顔をつくる。



車を出ようとしたその時、彼が腕をつかんだ。


「ちょっとまって。」


その瞬間、彼の腕の中に抱き寄せられる。


「待たせて・・・ごめん。」


「結婚しよう。」



一瞬、何を言ったのか分からなくて聞き返す。



「・・え?」


「結婚しよう。」


その言葉を確認した途端、涙があふれて止まらなくなった。

そして、肩におでこをつけたまま


「はい。」

と、返事をした。



それから一ヶ月がたった。


結婚を決めたことで、彼の心に大胆さが生まれたのか、ほぼ毎日連絡を取り、二日に一回は会うようになった。


それなのに、まだ肝心の指輪をもらってない!


この人、ホントにドンくさい。
イライラして、それも結局私から切り出した。


女からは絶対に言わないと決めていたのに。


「私、婚約指輪が欲しいんだけど・・・。」


切り出すのもひと苦労だ。


「あ、そっか! それは買うから大丈夫。」
(何が大丈夫よ! もう、ホントにおバカさんで、あきれる。)


これからも、ずっとこんなことが続くのだろう。


でも、私はそんな彼に振り回されて、そしてヤキモキしながら幸せを感じ続けるのだろう、と確信をしている。




Fin…

2nd Story|VOL.16 涙にぬれた想い

さっそく、次の日の夜、カフェで待ち合わせをする。

「どうしたの? こんな時間に。めずらしいね。」



久々に会った彼は、私にとってはやっぱりまぶしく輝いている。


「今日は、話し合いたいことがあって来たの。」

彼が姿勢を正す。

そういう真面目なところが、やっぱり好きなのだ。


だからこそ、思っている正直な気持ちを言おう。


「この前、お互い知らないと結婚できないと言ったじゃない?それでね、
 あれからよく考えてみたの。知ると言っても、他人だから全部は知りきれないし、
 条件をクリアできなくたって、一緒にいたいと思って一緒にいて、
 それで徐々にクリアしていけばいいんじゃないの?」


彼はだまって聞いていた。


私は絶対に泣かないと決めていたのに、最後は涙声になる。


そのまま彼はうなずくだけで、何も言わなかった。


そして、出たセリフはこうだ。



「・・・もう、遅いから帰ろう。送って行くよ。」



私は落胆した。


ここまで頑張ったんだから、もう思い残すことはない。



車でいつもの家の近くまで送ってもらう。その間、ふたりとも何も話さなかった。




~VOL.17 『最終回|ワタシとアナタが歩み出す日』に続く~

2nd Story|VOL.15 恋のアドバイス

その日からは、メールが来ても形式どおりの返事しかできなかった。

もう、別れてほかの人を探した方がいいんじゃないか。

もっと、愛してくれる人を探すべきなんじゃないか・・・。

しかし、何度も別れを考えたけれど、やっぱりメールを待ってしまう自分がいる。


久々にウィッシュの本社に向かうことにした。
この際、カウンセラーに相談するのが早いと思ったからだ。


前回の出来事をそのまま半沢さんに話した。

「私じゃダメなのかもしれません・・・。」

「きっと慣れてないから仕方がないのよ。
女の子をこんなに悩ませるなんて、ホント罪な男ね。

でも、のぞみさん。
こうなったら、もう一度思っていることをぶつけてみたほうがいいんじゃないの?」

「うっとうしいと思われないでしょうか。」

「その時はその時よ。」

結婚相談所は、成婚させて実績を出すのが本来の目的だ。

それなのに、ここは打算なく、本気で私たちのことを思ってアドバイスをしてくれている。
カウンセラーの励ましに、思わず涙ぐんでしまった。




~VOL.16 『涙にぬれた想い』に続く~

2nd Story|VOL.14 Mind Distance

もう、この時点で私の彼への気持ちは抑えきれないくらい沸き立っていた。


この人と結婚したい。早く一緒になりたい。


それなのに、肝心のプロポーズをなかなかしてこない。


これまで私が積極的に進めてきたけれど、さすがにプロポーズは彼からしてほしい。

ウィッシュからも
「そろそろプロポーズがあってもいい時期よね。」
と言われている。


本来だったら交際期間3ヶ月でだいたい成婚するらしい。

それなのに、私たちはお付き合いという形をとってから5ヶ月は経っている。


(彼は私のことを、本当は好きじゃないのかも。
 他に気になる人がいるのかも知れない・・・。)


せっかく二人の関係が安定してきたのに、そんな悪い妄想ばかりが頭をぐるぐるとまわり続ける。



・・・私の性格上、やっぱり待っているのはムリだ。


その日のデートは、横浜をドライブした。

手をつないで歩き、いつもどおり楽しい一日を過ごす。

帰りの車でキスをしたあと、私からはぜったいに言うまいと決めていた言葉が、勝手に溢れてきた。


「私たちって相談所で出会ってうまくいったら、結婚する関係よね?」


「・・僕たちは普通の恋人じゃないから、相手のことをよく知らないと結婚なんてできないよ。」

彼は、ぶっきらぼうに言い放った。


その瞬間、頭の中が真っ白になって何も考えられなくなり、
すぅっとカラダの中に冷たい風が通りすぎるのを感じた。
(じゃあ、私たちは何のために付き合ってるの?)



「・・わかった・・・。」

出た言葉はそれだけだ。

車のドアを開けようとすると、彼は焦って言った。


「でも、キミのことは真剣に考えているから。」


そのまま、何も言わずに車から出る。家に帰るまで、涙が止まらなかった。




~VOL.15 『恋のアドバイス』に続く~

2nd Story|VOL.13 おやすみのキス

そして、あの思い切ったメールがよかったのか、

二日に一回はメールをくれるようになった。


そして、静岡や茨城など三週続けてデートにも成功した。

でも、まだ距離が縮まらない気がする。


よく考えたら、お互い敬語を使っているのだ。


「もう、敬語使うのやめませんか?」

まずは、話し方から変えなくては距離が近づかない。

「そうですね。」
「ほら、また敬語!」

「そうだね。あぁ…、なんか慣れないな。」


こういうところが、つい可愛いと思ってしまうのだ。

彼は、母性本能をくすぐるタイプなのかもしれない。

そんなやりとりが続くうちに、やっと気を使わずに話せるようになってきた。

私は、本当に彼のことを考えると胸がいっぱいになり、
朝から晩までずっとあの人が頭の片隅に風船のようにふわふわ浮いているのだ。


そして、彼のメールで一喜一憂をして、そんな憂鬱と甘い痛みに陶酔した。

彼に触れたい…。

そう。まだ、手さえもつないでいないのだ。

中学生のような奥手さにイラつきながらも、そういう人だからこそ結婚向きだという確信がもてた。


なんと、今日のデートはラッキーなことに雨が降っている。

わざと折りたたみの傘にした。

もちろん、ちゃっかりとバッグの中にしのびこませてある。

レストランで食事をしたあと、計画通り、彼がさした傘の中に入ってそのまま腕を組む。


さりげなく横目で顔を見上げると、動揺しているのが明らかに分かる。
そんな表情さえ、愛おしくてたまらない。

この人は私から積極的に行動しないと始まらない。

そう確信してからは、思いのほか展開が早かった。


次の目標であるキスも、私からだ。


車で送ってもらうときを見計らう。
まるで、私が男みたいだ。

「ねぇ、お願いがあるの。」

「何?」


「・・・おやすみのキスして。」


彼が一瞬、驚いてうろたえる。



・・・そして、肩を抱いて軽く唇を寄せてきた。




~VOL.14 『Mind Distance』に続く~