2nd Story|VOL.09 出会い-5月- | wish横浜 Marriage Story

2nd Story|VOL.09 出会い-5月-

五月の皇居は、風と緑が清々しい。

春の花の香りと夏手前のゆるやかな空気が混じって、
都内とは思えない幻想的な雰囲気を作り出している。

「今日、晴れてよかったですね。」

「ほんとに。」


ふわりとした、穏やかな雰囲気をもっている人だ。

シンプルに整った顔のせいじゃなくて、話し方なのか、落ち着いた声のせいか。

家族のことや、仕事のことを話しながら皇居から日比谷公園のあたりを歩く。
胸が揺さぶられるようなトキメキはないけれど、とにかく心が安らいでいる。

これがフィーリングが合うということなのかもしれない。

日比谷公園の中にある、緑に囲まれたカフェに入る。

こんなに長くいても話が途切れず、初めて会った気がしない。

だからといって、やっぱりドキドキ感はなく不思議な感覚だ。

「食事でも行きますか?」

彼が時計をチラリと見る。

気づけば、夕焼けが木々の隙間から差し込み、
カフェの白い壁をオレンジ色に染めている。

「いいえ、今日は家で用意してもらっているので帰ります。」


ここで退散したほうが、絶対に印象がいいはず。

本当は、もう少し一緒にいてもいいと思うけれど、今日はここでサヨナラをすることにした。




~VOL.10 『サスピション』に続く~