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Walking in the Air

ファンタジーPBCサイト「鉱山都市フランネール」の登録PC、ニコルの活動日記です。



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悔しい。


悔しい。


悔しい。


―――悔しい。



噂のサビクに会った。

ガルーダが宿敵と位置付ける吸血鬼。


今思い出しても寒気がする。彼の皮肉げな笑み、嘲笑。

あの時裏路地で視界に入った彼がサビクだと分かっていたら、最初から接触しなかったのに―――……

……いや。分かっていても、きっとあたしは接触しただろう。

あのガルーダが特別視する、サビク・アル・ディーバ。それがどんな人物なのか見てみたいと思ったろう。

あたしはとんでもないバカだ。


ガルーダが助けに来てくれた時の、サビクの狂った笑い声が耳から離れない。

初めて見る、ガルーダのあんな真剣な顔も網膜に焼き付いて消えない。


サビクとガルーダとの間には、あたしが考えるより遥かに深い因縁があるんだろうと思う。

二人の間に割り込む権利も力も、あたしにはあるはずがない。

それなら……せめて、二人の邪魔にならないようにするのがあたしに出来る唯一のことだ。

―――そう思っていたのに。

結果は最悪だった。あたしには二人の邪魔にならないという、最低限のことさえ出来なかった。

サビクに人質にされて、ガルーダを躊躇させて。

これじゃあまるで、あたしはまるっきりのお荷物だ。

厳しい訓練を積んできたつもりだったのに。ハンターとしての覚悟をつけたつもりだったのに。

あたしがしたのは、みっともなく泣き喚いて醜態を晒し、身を竦ませていたことくらいだ。


悔しい。

あたしはただ、護られるだけの人間にはなりたくない。

強くなりたい。


―――どんなことをしてでも。



遭遇者:サビク/ガルーダ

あたしには、常々考えていることがある。


どうして魔物は人間を嫌うんだろう。見下し、嘲弄し、虫のように扱うんだろう。


仲良くなる方法はないのだろうか?和解せずとも、闘わずに住み分ける方法はないのだろうか。


―――そんな方法誰も思いつかないからこそ、闘いはなくならないという事も分かっているけれど。



やっと身体が全快したので、墓地に技の練習に行った。

結果はまずまず。自然とおなかを庇う癖が付いてしまってたけれど、それもおいおい克服しよう。

練習で汗かいて、お風呂に入って寝よう―――そんなことを考えてたら。

不意に聞こえた拍手に邪魔された。


現れたのはリンヴィー。

小馬鹿にしたような笑いがひどく癇に障る男。

彼の言葉の端々にある、どこか見下したような言い回しにあたしの機嫌は一気に悪くなった。

どうも彼は人間ではなくて、それどころか人間に対して悪い感情を抱いている人物らしい。


彼は友人なんてないと言った。作る気もないと。

それは、あたしの信念とまったく相反する思想だ。友達は多い方がいい。みんなで一緒にいるのは楽しい。

小さな幸せは友達といればどんどん大きな幸せになり、大きな不幸はみんなで分け合えば小さくなる。

「楽しいことは独り占めするものだ」と彼は言う。

―――そんなのは間違ってる。


彼とあたしの道徳観念というか、認識というものにはどうやら酷く深い溝があるらしい。

必死に説明していると、彼はあたしに友達になってくれるか、と言ってきた。

あたしに断る理由はない。例え魔族でも、なんであっても……差し伸べられた手を払いのけたくはない。

……人を嘲らない、傷つけない、裏切らない。その約束を彼が守ってくれるのなら。


彼にはもっと人を好きになってもらう必要がある。彼のことを理解できるよう、あたしも頑張ろう。


……今の彼の性格は、ゴキブリとタコの次にキライだけどね。



遭遇者:リンヴィー

あたしは未熟だ。


駆け出しの下っ端もいいところだ。ハンターギルドでも、きっと実力は下から数えた方が早い。


けれど。こんなあたしでも一人前になれるだろうか?一族の名に相応しい戦士になれるだろうか。


代々の一族のハンターたちは、不安じゃなかったんだろうか。



かねてからの約束通り、セリが生徒のフェイシアを紹介してくれると言うので金色亭へ赴く。

どうやらあたしが一番乗りだったみたいで、いつもの通りにぼーっと待つことに。

暫くぼんやりしていると、不意に声を掛けられた。

綺麗な金色の髪。気の強そうな瞳。

彼女がフェイシア。軽く挨拶をして、あたしたちはすぐに打ち解けた。


少し遅れてセリも合流し、乾杯してから食事を始めた。

フェイシアの話を聞いてると、彼女は本当にセリを尊敬してるんだなという事がひしひし伝わってくる。

甲冑に身を固め、馬に跨って戦場を駆けるセリの姿なんかを想像すると、それも当然と思った。

けれどその分、騎士になるには生半可な努力では足りないということも分かった。

セリは相当なスパルタらしい。レポート提出なんかもあったりして……多分あたしなら逃げ出しちゃうね。


フェイシアはセリのような騎士になるのが夢らしい。

セリは付き合いのまだ浅いあたしが見てもとても確りしてて、誇り高い人だから憧れるのも尤もだ。

フェイシアはきっと、立派な騎士になれるだろう。

―――でも、あたしは?あたしは立派なヴァンパイアハンターになれるのだろうか。

この街に来て、無様な負けばかり体験している。


彼女とこんな話をした。

いつかお互いが立派に、一人前になれた時。一緒に世直しの旅が出来たらいいねって。

それがもし叶うとしたら、どんなに素晴らしいか分からない。

努力もしていないのに、立派になれるか不安だなんて言っても仕方ないよね。

よし、頑張ろう。いつか誇れる自分になるために。


セリとフェイシア、それからあたしの三人分の秋冬ものの服をとある人に選んでもらおうという話もした。

白羽の矢が立った彼には可哀相だけれど、引き受けてもらえるかな?



遭遇者:セリカ/フェイシア

ハンターを始めてから、普段の生活というのがとても幸せだというのに気が付いた。


武器を振るったり、憎悪を抱いて敵を傷つけたりすることのない生活。


なんでもない穏やかな生活というのは、なんて幸福なんだろう。


あたしもいつか、そんな生活が送れるようになるんだろうか?それとも闘いの中で死ぬんだろうか。



ガルーダのおうちに、料理を作りに行った。

彼はいつも金色亭で食事を済ませているらしい。確かに金色亭のごはんはおいしいけれど、

いつもそれだと栄養が偏るから……ちょっと心配になる。


彼の部屋は彼らしい、すっきりと落ち着いた様子だった。

早速台所を借りて、料理に取り掛かる。

かまどに火を入れてくれる彼の手付きはすごく手馴れていて、野営とかにも慣れてる感じだった。


作ったのはクリームシチュー。それからサラダにパン。

パンはよく作るから、ちょっぴり自信があった。

いつかあたしがハンターを引退したら、パンやケーキを作るお店を出せたらと思って。

まだ駆け出しのくせに、もう引退のことなんて気が早いけれど。

そもそも五体満足で引退できるかどうかなんて、誰にもわからないのだけれど。

―――それでも。夢を持つのは悪いことじゃないと思う。


彼はすごく喜んで、あたしの料理を食べてくれた。

正直彼の口に合うか自信がなかったけれど、気に入ってくれて本当に嬉しい。


いつか、焼きたてのパンが沢山入った籠を抱えて、楽しく穏やかに生活ができる―――

その日が来るのを夢見て、闘おう。



遭遇者:ガルーダ

今まで何度も論じてきたこと。


人間と魔物の違い。


魔物は群れることを好まない。いつも独り。独りでいる事に存在意義を見出しているように。


けれど、人間は違う。人間は協調し、協力することを知っている。―――手を繋ぐことを知っている。



傷が癒えたので、久しぶりにハンターギルドに行ってみる。

入院している間に何か動きがあったかもしれない。情報収集はまめにしないと。

そう思いながら受付に行くと、セリが掲示板の手配書をじっと見ているのが眼に入った。


驚かせてやろうとイタズラ心が湧いてきて、彼女を驚かせてみた。

まさかあんな大事になるとは思ってなかったけれど……。

セリはやっぱりおっかない。


必死で謝って仲直りしてから、広場のベンチでちょっと話した。

なんでも自警団とギルドで互助しようってことで、協力者を募っているらしい。

多くの魔物と比べて力の劣る人間は、協力して強大な敵と対峙するしかない。

勿論、否定の余地はない。あたしは手放しで賛同した。


フランネールが素敵な街だからこそ、甘い蜜を吸おうと犯罪者や悪者がやってくる。

それはどうしようもないこと、必然だ。

でも、だからって見過ごすわけには行かない。一掃してやる、必ず。


近く、また会う約束をしてその日は別れた。

無茶するなって言われたけれど―――


頭より身体が先に動くタチだから、こればっかりはどうしようもない。



遭遇者:セリカ