Walking in the Air

Walking in the Air

ファンタジーPBCサイト「鉱山都市フランネール」の登録PC、ニコルの活動日記です。



PBCをご存知でない方、当PCに興味のない方は閲覧をご遠慮下さい。


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十人十色という言葉がある。


それは10人の人間がいれば、10通りの考え方があるという意味の言葉だ。


人の考え方や意見を言葉で改めさせようとするのは難しい。


百万言より、ひとつの事実。それが何より大切だ。



傷が概ね治ったんで、久しぶりに時計塔までトレーニングに出かけた。

剣呑な魔物が出る心配もなく、危険のない時計塔はあたしにとって格好の鍛錬場だ。

階段を上から下まで2往復もすれば太腿も脹脛もパンパンになって、まともに立っていられなくなる。

足腰を鍛えるのは闘いの準備の第一段階。頑張ろう、と気合を入れて最上階まで駆け上がると―――


先客にビックリしたような顔をされてしまった。


最上階にいたのはレオン。なんでもあたしと同じヴァンパイアハンターだという。

彼の持つ聖句の刻まれた剣が何よりの証拠。

この街で同業の吸血鬼狩人に会うのは、とても嬉しい。


彼は気難しそうな人で、眉間に刻まれた皺がなくなることは殆どなかった。

あたしがドタバタうるさく階段を駆け上がってきて、気分を害したというのもあるんだろうけど……。


彼はまだ、この街では吸血鬼を仕留めてはいないと言っていた。

でも、そろそろ動こうと思っていると。

―――吸血鬼は全て滅ぼすと。一見友好的に振舞っている吸血鬼も、それは上辺だけだと。


あたしは彼に反論できなかった。

勿論言いたいことは沢山あった、けれど―――それを言う権利はあたしにはないと思った。

彼の意見はまさしく、フランネールに来たばかりのあたしと同じ。

彼の姿は、かつての自分を見ているようにあたしの眼には映った。


この街には邪悪な吸血鬼も沢山いるけれど、決してそればかりじゃない。

彼にも、それを分かってほしいと思う。

血と魂を交換するばかりでなく、紅茶やワインを酌み交わせる吸血鬼もいる―――そのことを。



遭遇者:レオン

友達の薬屋さんもそうだけど、難しい学問を修めている人は尊敬に値する。


医学、薬学、魔法学。この世には難しい理屈がいっぱいだ。


でも、それを理解し自らのものにしようと努力する人たちがいる。


未知のものを習得しようと研鑽を怠らない人々。そんな人達を見ていると、あたしも勇気が湧いて来る。



ラグーナ遊歩道を、のんびり散歩。

すっかり寒くなってしまった夜の風は、身を切るほどに冷たいけれど。

傷を治療する為に家に閉じこもっていた身には、それも心地よく新鮮に感じられる。


誰もいない水路沿いを歩いていると、どこからか猫の鳴き声が聞こえた。

辺りを見回してみると、白衣を着た男の人がひとり。

その肩に乗った小さな仔猫は、筆舌に尽くしがたいほどの可愛らしさだった。


お医者様風の姿をしたその人の名前はレン。なんでも魔法医、という職業をしているらしい。

以前知り合いのエルフの女の子にしてもらったような傷を癒す魔法を使うのかな?と思ったけど。

どうもそれよりも、薬を処方する方が得手だという。


伝説では、魔法薬エリクサーという薬はどんな傷や病気でも瞬く間に癒してしまうという。

まぁ所詮伝説だから、あるかどうかすら分からないんだけど。


そうそう、仔猫にも無理を言って触らせてもらった。

名前はチェルシー・アンというらしい。

可愛い鳴き声、くりくりした愛らしい瞳。

あたしも猫を飼いたくなってきたなァ……。


レンはなんだか急がしそうで、早めに帰ってしまったけれど。

今度会ったら、ゆっくりお話ししたいな。



遭遇者:レン

ひとには宿命というものがある。


それはとても強く、不可逆で、抗うことが出来ない鎖だ。


宿命はそれを背負う本人がどれほど拒絶しようと、強い吸引力で運命を導く。


あたしは今、それを目の当たりにしている。



ガルーダと一緒に紅に滲む森を歩く。

手を繋いで紅葉や銀杏の綺麗な色を眺めていると、束の間吸血鬼狩りの宿命も何もかも忘れてしまう。

例えほんの僅かな時間でも、こうして平和を噛み締めていられる時間は貴重だと思う。

平和な時間を知ればこそ、辛い闘いにも耐えられるんだ。


先日サビクと闘ったと彼に報告すると、彼の顔色が変わった。

確かに、あの強大な吸血鬼と闘って生きて帰れたのは奇跡に近いと思う。

侮られて、はなからからかわれていただけだからということもあるけど……。


彼は他の誰でもない、サビクの話をすると雰囲気が変わる。

それは、彼があの吸血鬼と深い因縁を持っているからなのだろう。

サビクがあたしを人質にして、ガルーダが激昂した日のことを今でも思い出す。


彼には、あの暴君と決着をつけて欲しいと思う。

彼は、自分のことは気にせずにあたしにもサビクと闘えと言ったけれど。

あの吸血鬼と真に闘うべきなのは、あたしじゃない。


彼もサビクも、あたしがお互いの話題をすると露骨に表情が変わる気がする。

見間違いかもしれないけれど―――それが何よりの証拠だろう。

ふたりの間の深く暗い因縁の河は、どちらかが倒れなければなくなりはしない、きっと。


―――とはいえ―――サビクには彼を倒させる訳にはいかない。

彼と手を繋いで歩くほどそう思う。この温もりは失わせない、絶対。



遭遇者:ガルーダ

支配者とは、何も広大な領地や何千人もの人間を征服した者に限って使われる言葉じゃない。


己を完全に律し、能力を使いこなし、世に普く影響力を齎す者も支配者と言って差し支えない。


彼はそんな支配者達の中でも、最も力ある者の独りに違いない。


闇の君主、夜の王者。それが彼だと、あたしは思う。



廃屋でサビクと遭った。

傲岸不遜という言葉をそのまま人の姿に変えたなら、きっと彼のようになるに違いない。

この世に恐れるべきものは何もない、とでも言いたげな姿。

それはまさに王者だった。あたしには皇帝を名乗る友人がいるけれど、それとは対照的な王の姿。


彼の自信がどこから来るのか考えてみた。

それは、己の力への絶対の信頼。

人は他人を慈しみ、協調して生きる。それは自分は独りでは弱いということを知った上での行動だ。

けれど、恐らく彼にはそれがない。

自分の力を信じ、それを使いこなす技量を持っているからこそ、他人を信用する必要がない。

他人という不確定な力に頼る必要がない。

己独りで全ての物事を叶えることが出来るという自負があるからこそ、彼はああまで不遜なのだ。


あたしは彼には敵わない。

自分自身の力そのものも、自分を信じるという信念も、何もかも彼に遠く及ばない。

あたしは彼に必死で抗い、全力で闘いを挑んだけれど。

彼にとってあたしの相手など、あくまで遊びの域を出ない程度のことだったのだろう。


その証拠に、彼は終始にやついたままだった。

あたしは彼を本気にさせることさえ出来ない。

彼が笑い以外の表情を浮かべた瞬間があったとするなら―――


それは、あの蒼く大きな翼の話題になった時だけだ。



あたしはまだ、あの強大な吸血鬼に敵と認識されてすらいない。



遭遇者:サビク

年に一度のお祭りが開催されている。


―――といっても、夏にはフィエスタ・グランデがあったけれど……それはそれ、これはこれ。


皆が思い思いの仮装をして街を練り歩く様子は、まるで異世界に潜り込んだかのような錯覚を覚える。


あたしも遅れちゃいられない。楽しもう、今しかないイベントなのだから。



散々迷った末に、あたしは故郷の村でお祭りの時に着る衣装を作ることにした。

エプロンと丈の長いワンピースに、リボンやレース飾りをつけたものだ。

街のオシャレな人達の衣装に比べたら、泥臭いというか……垢抜けないのは否めないけど―――

やっぱりあたしのお祭りの衣装といえばそれしかない。

―――バブーシュカで猫耳を誤魔化せるという利点もあるし。


そんなこんなで衣装をギリギリまで作っていると、ガルーダがいつもの格好で迎えに来た。

自分はもう仮装を楽しむ歳じゃないから、とかなんとか言っていたけれど。

こういうお祭りに年齢制限も何もない。彼を無理矢理部屋に押し込めて着替えをさせた。


果たして出てきたのは、髑髏面の恐ろしげな幽霊船長。

本当に深海から幽霊船を率いて現れた亡霊のようで、あたしは思わず本気で驚いてしまった。

……隠していた猫耳が飛び出てしまうほど。


彼に慰めてもらって、お祭りに参加する為に街へ行く。

生えてしまった猫の耳と尻尾は暫く治らない。恥ずかしかったけれど、彼は隠さなくていいと言う。

彼がそう言うなら、もう隠さないようにしよう。

どんな姿になっても、あたしはあたしだから。―――それを恥じる必要はない。


―――そうだよね?……ね。



遭遇者:ガルーダ