Walking in the Air -2ページ目

Walking in the Air

ファンタジーPBCサイト「鉱山都市フランネール」の登録PC、ニコルの活動日記です。



PBCをご存知でない方、当PCに興味のない方は閲覧をご遠慮下さい。

豊穣祭だってことで、ハンター仲間の薬屋さんから小さなパンプキンパイのセットが送られてきた。


例によって薬入りだという。これを食べた人間は向こう二週間、猫の耳と尻尾が生えてしまうらしい。


またロクでもない……と半分呆れたけれど、イタズラは好きなので早速獲物を探しに行くことに決めた。


問題は、薬の効果が記載されたカードをあたしが見たのは、あたしがパイを食べた後だったということだ。



猫耳と尻尾の生えてしまったあたしは、人混みを避けて廃屋に行った。

人前にはとても出られないと廃屋に入って安心するも、そこにもやっぱり誰かしらいるもので。

ばったり鉢合わせたあたしの姿を見て、ランプルールはビックリしていた。


彼はいつも通りに礼儀正しくて、あたしのような山育ちの猿みたいな小娘もレディとして扱ってくれる。

あたしの耳と尻尾を見て最初は驚いていたけれど―――

すぐにあたしの心情を察してフォローしてくれたのは、嬉しかった。


彼と異種族間の認識の違い、それを乗り越えて皆が街で暮らすことは可能かと議論する。

共存の道は難しい。彼とあたしの認識はそう一致した。

―――けれど、それは不可能な道なのだろうか?絶対に実現できない、夢の話なのだろうか。


現に彼とあたしは、ちゃんと話をしている。ここに至るまでには苦痛もあったけれど―――

少なくとも今、彼とあたしの間には闘う空気はない。

話し合うことは可能だ。「難しい」と「不可能」は違う。

あたしはそれを信じる。


彼は最後にひとつ、あたしにプレゼントをくれた。

それは信頼という、形はないけれどとても大切なプレゼント。


あたしも家に帰ると、それを彼へと。

いつかこの世の誰もが、自然にこんなことが出来るようになれば―――

それはとても素晴らしいことに違いない。



遭遇者:ランプルール

完全無欠で弱点の存在しない存在というのは、この世には存在しない。


あたしにも勿論嫌いなものがあるし、弱点もある。


御伽噺で語られるドラゴンや魔族、あの強大な吸血鬼たちにさえ弱点は存在する。


当然彼にも。



施療院を退院してガルーダと紅葉を観に行こうと思ったけれど、天気が悪かったので中止になった。

代わりに四阿まで遊歩道を散歩しようということになったのだけれど、それでは今一捻りがない。

そういう訳で、あたしは先日黒髪のおじさんから聞いたイタズラを試してみることにした。


豊穣祭用の小物や玩具を売っている店で買った、小さな緑色の生き物のオモチャ。

それを彼の肩に乗せてみる。

おじさんは、彼にイタズラするならそれを使うのがいいと言っていた。

彼がそれを見てビックリして、あたしが少し怒られて。そんな他愛ない遣り取りを予想していたけど……

―――まさかあんな結果になるとは、カケラほども予想してなかった。


彼はあたしのイタズラを優しく許してくれたけれど、本当に一時はどうなることかと思った。

図らずもお詫びの品になってしまったマフラーをプレゼントする。

喜ぶ彼の顔を見ていると、益々申し訳ない気分になってしまって。

あたしは本当にバカだ。彼が気を許してくれているのに付け込んでイタズラをするなんて。


……ぶっちゃけると、子供みたいに怖がる彼の姿は見ててちょっとカワイかったけど。


とにもかくにも、もう彼の前であれの話はするまい。

あれが彼の視界の端にでも現れようものなら、すぐに排除しないと。

……吸血鬼以前に、あれを地上から殲滅するのがあたしの義務のような気がしてきた……。



遭遇者:ガルーダ

あたしは今まで、ふたつのカテゴリーに何もかも当て嵌めて生きてきた。


「YES」と「NO」。「好き」と「嫌い」。「善」と「悪」。「味方」と「敵」……他にも沢山。


スキなものはスキ。キライなものはキライ。……何もかも、そのどちらかに分類してきた。


―――でも、この世にはそれらのどちらでもないものもある。それをあたしは今頃知った。



退院してリトゥラ湖に散歩に行き、秋の夜風を感じているとぼんやり湖畔に佇むおじさんがいた。

不審だったので声を掛けてみる。


彼は最初はあたしをレディなんて言って慇懃に接してきたけれど、途中でいきなり様子が変わった。

「これからする質問の返答次第では殺す」とまで。

何ごとかと思ったら、ロザリオのことを訊ねられた。あたしがガルーダから借りた、水晶のロザリオ。


よくよく聞いてみると、どうもおじさんがガルーダにロザリオをプレゼントした人らしい。

そりゃそうよね……友達にプレゼントしたはずの物を他人が持ってたら、当然怪しむよね……。

しどろもどろになりながら説明すると、おじさんはすぐに信用してくれた。

説得できなかったら首を刎ねられてたんだろうかと思うと、背筋が寒くなる。


おじさんはロザリオの本当の持ち主である彼のこと、よく知っているらしい。

そして、あたしのことも瞬く間に看破してしまった。


「レディは白か黒かの考え方が目立つ。それ以外の選択肢を持ってみるのもいい」


彼の言葉に、あたしはハッとした。

確かにそうだ。無理矢理にどちらかに当て嵌めてしまうことは出来ても、それは本当の理解じゃない。

白か黒かで割り切れてしまえるほど、この世は単純明快じゃない。

無数にある価値観を理解しつつ、それを整理する技量が必要だと思った。


―――実りの多い夜だったけれど、まあ、難しいことはひとまずさて置いて。

最後に彼に教えてもらったこと、まずはそれを試しに行こう。


……怒られるかな……。



遭遇者:ラーズ

人と出会うことは、別れの始まりだという。


確かにそうだ。永遠に一緒にいるなんてことは考えられない。


事情があって、あるいは死別して、ひとはいつか別れを余儀なくされる。


―――だから。その時が来ても後悔したり取り乱したりしないよう、心を強く持たなくちゃ。



モーティと久しぶりに会う。

彼女は忙しそうだ。なんでも遠くの街に行く機会が増えたとか。

それで、それを踏まえて相談があるという。


彼女とあたしはずっと協力体制を敷いてきた。この街にいる賞金首の情報を交換しようと。

フランネールに来たばかりで、右も左も分からなかったあたしの提案を彼女は快く呑んでくれた。

彼女の存在がどれほどあたしの支えになったか知れない。


すぐに後先考えず突撃してしまうあたしのことを、彼女は何度も窘めてくれた。

ひょっとしたら、彼女と会っていなかったらあたしはとっくに死んでいたかもしれない。

でも、それじゃダメだ。

いつまでも人の援護を、助言を、救いの手を期待してはいけない。


協力することは大事だ。

協調することも、みんなで力を合わせて敵に立ち向かうことも大事だ。

―――でもそれは依存することとは違う。あたしが今までしていたのは、彼女に対する依存だった。


それを改めなくちゃならない。

「仲間と協調しつつ」「独りでも闘わなければならない」

……両方やらなくちゃならないっていうのが、戦士のつらいところね。


体制を解消しても、彼女との絆が切れるわけじゃない。

彼女とは、これからもずっと友達。

そう……考えててもいいんだよ……ね?



遭遇者:モートヘルシュ

退屈な入院生活の中で、お見舞いに誰かが来てくれるというのはとても嬉しい。


外からの活力を貰って、頑張ろうという気持ちになる。


穿たれた傷の治りが早まるようなことはないけれど―――


それでも、仲間や友達との触れ合いは何よりの特効薬だ。



ガルーダがお見舞いに来た。

あたしの好きな花を持ってきてくれる、ということで。

手ぶらで来たって、あたしにとっては凄く嬉しいことだったけれど―――

彼が持って来た色とりどりの薔薇の花束に、あたしはすっかり眼を奪われてしまった。


彼の膝に乗って抱きしめられながら、久しぶりに話をする。

彼は変わらず優しい。

優しい視線、安堵を齎す声。大きな手のひら、暖かな体温。心臓の鼓動、それから唇―――。

その全てが、あたしの心と身体に沁み入ってくる。


以前、彼の優しさは甘い毒だと書いた。

それは、今でも変わらない。

彼に依存してしまったら、あたしは独りで闘えなくなる。彼がいなくなってしまったら、

あたしは何も出来ない人間になってしまう。

それが怖かった。


―――でも。

今はもう、それを怖いとは思わない。

この夜彼に言われたことは、今でもはっきり覚えている。多分一生忘れることはないだろう。

あたしは彼の言葉を信じる。
彼に……そう。彼についていこう。


彼と今後のことについて話した。

一緒に紅葉を観に行こうと。一緒に豊穣祭に行こうと。


彼と歩く未来は、きっと明るい。



遭遇者:ガルーダ