ひとには宿命というものがある。
それはとても強く、不可逆で、抗うことが出来ない鎖だ。
宿命はそれを背負う本人がどれほど拒絶しようと、強い吸引力で運命を導く。
あたしは今、それを目の当たりにしている。
ガルーダと一緒に紅に滲む森を歩く。
手を繋いで紅葉や銀杏の綺麗な色を眺めていると、束の間吸血鬼狩りの宿命も何もかも忘れてしまう。
例えほんの僅かな時間でも、こうして平和を噛み締めていられる時間は貴重だと思う。
平和な時間を知ればこそ、辛い闘いにも耐えられるんだ。
先日サビクと闘ったと彼に報告すると、彼の顔色が変わった。
確かに、あの強大な吸血鬼と闘って生きて帰れたのは奇跡に近いと思う。
侮られて、はなからからかわれていただけだからということもあるけど……。
彼は他の誰でもない、サビクの話をすると雰囲気が変わる。
それは、彼があの吸血鬼と深い因縁を持っているからなのだろう。
サビクがあたしを人質にして、ガルーダが激昂した日のことを今でも思い出す。
彼には、あの暴君と決着をつけて欲しいと思う。
彼は、自分のことは気にせずにあたしにもサビクと闘えと言ったけれど。
あの吸血鬼と真に闘うべきなのは、あたしじゃない。
彼もサビクも、あたしがお互いの話題をすると露骨に表情が変わる気がする。
見間違いかもしれないけれど―――それが何よりの証拠だろう。
ふたりの間の深く暗い因縁の河は、どちらかが倒れなければなくなりはしない、きっと。
―――とはいえ―――サビクには彼を倒させる訳にはいかない。
彼と手を繋いで歩くほどそう思う。この温もりは失わせない、絶対。
遭遇者:ガルーダ