20080912 日本経済新聞 地方経済面

 高知大学と医療法人慈恵会中村病院(高知県四万十市)は病院向けに、入院中の高齢患者を対象とする病状回復策の策定や退院の判断を支援するソフトを共同で開発した。「摂食」など二十項目で高齢患者の健康状況を入力すると、退院できる可能性を確率で表示し、どの項目を改善すれば確率が上昇するかも分かる。高知大発のベンチャー企業を通じて全国の病院などに販売を始めた。
 新ソフト「高齢者用退院支援評価・介入プログラムソフト」は国が社会保障費削減のために療養病床の削減を進めているのに対応して開発した。介護保険の対象となる「介護療養病床」は二〇一一年度末の廃止が決まっており、医療保険が適用される「医療療養病床」も大幅に削減される。
 このため病院経営では主に七十歳以上の高齢患者の病状回復による退院促進が課題となっている。こうした病院の取り組みを支援するソフトの商品化は珍しいという。
 導入した病院は、まず医師や看護師、栄養士、薬剤師ら専門家が協議して、患者について医学、精神、社会的な環境などの多角的な面から総合的に評価する。
 「摂食が自立している」「火の始末ができる」「家族に退院への意欲がある」「高次脳機能障害がある」など二十項目について「はい」か「いいえ」の二択で評価すると、退院できる可能性が例えば「五六%」などと表示される。
 中村病院は従来から高齢患者の退院では総合評価を実施しており、ソフトは同病院の実績データに基づいて数値を算出する。病院が改善指導や支援をすべき項目も優先順位をつけて表示する。
 自動算出した数値は、高ければ退院しやすくなるという目安になる。「××%なら退院可能」などといった数値は定めず、患者を退院させるかどうかはあくまで病院が最終判断するよう、導入する病院に説明したうえで販売するという。
 同ソフトで退院を支援する計画も作成でき、病院はこれにより診療報酬を受け取れる。
 ソフトの価格は十万五千円。高知大が昨年設立した医療関連のソフト販売会社、ヘルシースマイル(高知市)が全国で販売し、初年度は千件の納入を目指す。
 ソフト開発を担当した高知大医学部の西永正典准教授は「将来は購入した各病院に最も適した確率算定ができるように機能を向上させたい」と話している。
【図・写真】高齢患者の退院の可能性を確率で算出する(四万十市の中村病院)




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20080911 日経産業新聞

 高付加価値の機能をうたう高級白物家電の販売が鈍っている。家電各社は依然として力を入れているが、実際は二〇〇六年後半をピークに白物家電全般で平均実売価格は横ばい傾向にある。家電量販店の担当者とのやりとりからも、景気の停滞感で〇八年四月ごろから消費者の心理に変化が起き始めたと見ている。
 高級白物家電には、実売価格が洗濯乾燥機で十五万円以上、容量が四百リットルクラス以上の冷蔵庫で二十万円以上などの「プレミアム」製品が相当するとされる。〇四年以降、家電各社は市場成熟化を打開すべく、これまで考えられなかった価格帯で高付加価値品を投入、チャレンジし始めた。
 例えば松下電器産業の「ななめドラム」洗濯乾燥機、シャープのオーブンレンジ「ヘルシオ」や三菱電機のIHジャー炊飯器「本炭釜」などだ。これらが中心となり、白物家電の高級化が進んだ。
 今も「消費者が白物家電にも高機能・高付加価値化を求めている」と言われ続けている。実際には高級家電を購入する層が年々増えているのではなく、一定の顧客層が段階的に「買い替えてきた」と見ている。当社の調べでは、十五万円前後のドラム式洗濯乾燥機は、〇四年以降も数量で二割前後、金額では四割と構成比に大幅な変化がある訳ではない。AV機器のように新しい技術が搭載されたらすぐに買い替えるという要素が相対的に少なく、使用年数も長いのが特徴だ。
 高級白物家電のキーワードの一つは「省エネルギー性の高さ」だが、ガソリンや食料品の値上がりの影響を受けそうだ。これまで省エネ性の高い製品を「先行投資」として考え購入を検討してきた人たちも、日々の支出をいかに抑えるかなど足元に目が向き始めている。家計の支出がさらに増えればその先行投資を踏みとどまり、販売の足を引っ張る可能性も出てくる。
 もちろん付加価値の作り込み、訴求の仕方次第で伸びる余地はある。すでに日立アプライアンスや三菱電機が市場投入した六百リットル以上の大型冷蔵庫は、ガソリン価格の上昇や共働きの増加でまとめ買いをする消費者が増えたことで、出足は好調。またオーブンレンジに対する顧客のニーズは依然高く、十五万円前後の高級機種の販売が堅調だ。
 エアコンでは灯油値上がりを受け、量販店などが冬を見越しての提案営業を強化しており暖房能力の高い製品が伸び始めている。各社はいかに消費者に「長期的には大きなメリットがある」という点を理解してもらうかが重要となる。
 今後のカギとなりえるのが「準プレミアム」製品のラインアップだ。最上位機種のひとつ手前の価格帯をそう呼んでいるのだが、潜在的な需要は大きい。現状では、洗濯乾燥機でいえば実勢価格が十五万円前後の最上位機種の下の価格帯は七万円の標準機種というケースが多い。
 消費者にとって標準から「プレミアム」へのハードルはメーカーが思っている以上に高い。今後はこの辺りの製品群の充実と、価格戦略が重要になってくるといえる。
(聞き手は杉原梓)
 みずむら・じゅんいち 94年立教大社卒、アイワ入社、家電量販店向け営業に従事。02年GfKジャパン入社、調査統計サポートなどを担当。03年から国内営業部の流通営業部シニアマネジャー。



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20080910 日本経済新聞 朝刊

実現は不透明
 自民、公明両党は九日開いた与党のプロジェクトチームで後期高齢者医療制度の追加見直し策を決めた。保険料が年金天引きになったことで世帯主の社会保険料控除の対象から外れてしまう問題を見直し、同控除の合算対象に戻すことで一致。負担軽減措置の延長など、制度導入後に検討課題として残していた項目も決定した。ただ政局混乱の中で、軸足の定まらない制度の行方に不透明感が残る。
 同制度では保険料は原則として年金からの天引き。被保険者が自分で保険料を払うことになるため、世帯主の所得税などでの社会保険料控除額に合算することができない。税負担が増える場合があるため「隠れた増税」との批判も出ていた。
 与党は世帯の社会保険料を合算して保険料控除を受けられるようにする方向で税務当局とも合意。また「後期高齢者」の名称も変更する考え。「後期」を取る方向で議論している。
 与党はこれらをセットで臨時国会に法改正案を提出する考えだ。ただ、自民党総裁選を控えて政治情勢は混沌(こんとん)としている。民主党は後期高齢者医療制度そのものの廃止を唱えており、法改正の見通しには不透明な面が多い。
 一方で与党は六月に見直し策をまとめた際に積み残していた追加策も決めた。制度変更の影響で医療費負担が増えた高齢者の不具合を是正するほか、一部の高齢者の負担軽減措置を延長する。
 制度変更の不具合是正では、七十五歳になる月に限って高額療養費制度に関して負担上限が二倍になる問題を解消。夫婦の一方が同制度の対象となり窓口負担が三割に増えたケースでも、負担を元の一割に戻す。来年一月から実施し、「負担上限二倍」問題については今年四月以降も同様の取り扱いとする方針だ。
 一部の負担軽減措置の延長も正式に決めた。対象は(1)七十―七十四歳の医療費窓口負担の二割への引き上げの凍結措置と(2)会社員の子供などに扶養されている高齢者の保険料軽減措置。いずれも二〇一〇年三月まで、一年間の延長を決めた。
 後期高齢者医療制度は、膨張を続ける医療費の負担を現役世代と高齢者で分担する方法を考えて設計された制度。制度の初期段階で不具合を見直すことは大事だが、医療費を誰が負担するかという当初の問題意識を脇に置いて批判回避を優先している色合いが濃い。
 一連の見直し策が補正予算頼みで負担軽減に傾いている側面も色濃く、政局にらみで目先の対応に追われている。財源を含めた制度の在り方についての議論と説明を改めて求められる。




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20080910 日本経済新聞 朝刊

 介護保険が始まったのは二〇〇〇年。なぜ新しい制度が導入されたのだろうか。
 急速に都市化、核家族化が進んで家族の介護能力が落ちていく一方、寿命の伸びにより介護期間の長期化が進み、介護を必要とする高齢者は急増した。ところが、特別養護老人ホームなどの整備は遅れ、心身の能力が低下した高齢者が病院に入院するといういわゆる「社会的入院」が大きな問題となった。治療より介護中心のサービスを必要とする高齢者の入院は無駄な検査、投薬を引き起こし、医療費膨張の一要因と指摘された。
 また、特別養護老人ホームといった福祉施設と老人病院や老人保健施設といった医療系施設の間で利用方法や負担の仕組みが異なり、不公平感も生まれていた。これに加え、福祉サービスでは措置制度という、利用者が施設を選択するのではなく行政が利用者を施設に割り当てる、独特の制度が採用・運用されており、利用者の多様なニーズが介護サービスに反映されないという問題もあった。
 こうした様々な課題を抱え、高齢者向けの介護サービス量の確保が一九九〇年代の福祉の中心的課題となった。厚生省(当時)は地域別に介護サービスを整備する計画として「ゴールドプラン」「新ゴールドプラン」を推進。それぞれの地域の特性に応じるため、住民に最も近い市町村が中心的な役割を果たせるよう関連の法律を改正し、福祉の分権化を進めた。さらに高齢者向けの医療、保健、福祉制度を総合的に組み直し、安定的な財源を確保するため、新たな保険制度である介護保険の導入を検討するようになった。
 海外の状況をみると、介護を独立した保険の仕組みで行うか(ドイツ)、税財源による福祉の仕組みで行うか(北欧)、あるいは医療保険制度の仕組み内で行うか(米国)は各国で選択が異なった。日本は財政の仕組みについてはドイツの介護保険を参考にし、介護サービスのメニューはデンマークやスウェーデンを参考にしながら現在の制度の基礎を作り上げた。





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20080909 日本経済新聞 朝刊

 厚生労働省は八日、医療費の毎月の自己負担を一定限度に抑える高額療養費制度に関して、七十五歳になり後期高齢者医療制度に加入する月に限って負担上限が二倍になる不都合を解消する方針を決めた。政令改正などで来年一月から改める。七十五歳の誕生日のある月に限り、従来加入していた医療保険と、新たに移る後期高齢者医療での限度額をそれぞれ半分に抑え、合計の負担額が変わらないようにする。
 現状では、七十五歳の誕生日に国民健康保険などから後期高齢者医療制度に移ると、その月は従来加入していた医療保険と新制度とで別々に限度額が適用され、負担上限は倍増する。
 一般的な所得の人の入院時の自己負担上限は月四万四千四百円だが現状では七十五歳の誕生月だけは八万八千八百円になってしまう。それぞれの医療保険での上限額を半分にし、計四万四千四百円で済むように改める。