20080910 日本経済新聞 朝刊

実現は不透明
 自民、公明両党は九日開いた与党のプロジェクトチームで後期高齢者医療制度の追加見直し策を決めた。保険料が年金天引きになったことで世帯主の社会保険料控除の対象から外れてしまう問題を見直し、同控除の合算対象に戻すことで一致。負担軽減措置の延長など、制度導入後に検討課題として残していた項目も決定した。ただ政局混乱の中で、軸足の定まらない制度の行方に不透明感が残る。
 同制度では保険料は原則として年金からの天引き。被保険者が自分で保険料を払うことになるため、世帯主の所得税などでの社会保険料控除額に合算することができない。税負担が増える場合があるため「隠れた増税」との批判も出ていた。
 与党は世帯の社会保険料を合算して保険料控除を受けられるようにする方向で税務当局とも合意。また「後期高齢者」の名称も変更する考え。「後期」を取る方向で議論している。
 与党はこれらをセットで臨時国会に法改正案を提出する考えだ。ただ、自民党総裁選を控えて政治情勢は混沌(こんとん)としている。民主党は後期高齢者医療制度そのものの廃止を唱えており、法改正の見通しには不透明な面が多い。
 一方で与党は六月に見直し策をまとめた際に積み残していた追加策も決めた。制度変更の影響で医療費負担が増えた高齢者の不具合を是正するほか、一部の高齢者の負担軽減措置を延長する。
 制度変更の不具合是正では、七十五歳になる月に限って高額療養費制度に関して負担上限が二倍になる問題を解消。夫婦の一方が同制度の対象となり窓口負担が三割に増えたケースでも、負担を元の一割に戻す。来年一月から実施し、「負担上限二倍」問題については今年四月以降も同様の取り扱いとする方針だ。
 一部の負担軽減措置の延長も正式に決めた。対象は(1)七十―七十四歳の医療費窓口負担の二割への引き上げの凍結措置と(2)会社員の子供などに扶養されている高齢者の保険料軽減措置。いずれも二〇一〇年三月まで、一年間の延長を決めた。
 後期高齢者医療制度は、膨張を続ける医療費の負担を現役世代と高齢者で分担する方法を考えて設計された制度。制度の初期段階で不具合を見直すことは大事だが、医療費を誰が負担するかという当初の問題意識を脇に置いて批判回避を優先している色合いが濃い。
 一連の見直し策が補正予算頼みで負担軽減に傾いている側面も色濃く、政局にらみで目先の対応に追われている。財源を含めた制度の在り方についての議論と説明を改めて求められる。




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