20080911 日経産業新聞
高付加価値の機能をうたう高級白物家電の販売が鈍っている。家電各社は依然として力を入れているが、実際は二〇〇六年後半をピークに白物家電全般で平均実売価格は横ばい傾向にある。家電量販店の担当者とのやりとりからも、景気の停滞感で〇八年四月ごろから消費者の心理に変化が起き始めたと見ている。
高級白物家電には、実売価格が洗濯乾燥機で十五万円以上、容量が四百リットルクラス以上の冷蔵庫で二十万円以上などの「プレミアム」製品が相当するとされる。〇四年以降、家電各社は市場成熟化を打開すべく、これまで考えられなかった価格帯で高付加価値品を投入、チャレンジし始めた。
例えば松下電器産業の「ななめドラム」洗濯乾燥機、シャープのオーブンレンジ「ヘルシオ」や三菱電機のIHジャー炊飯器「本炭釜」などだ。これらが中心となり、白物家電の高級化が進んだ。
今も「消費者が白物家電にも高機能・高付加価値化を求めている」と言われ続けている。実際には高級家電を購入する層が年々増えているのではなく、一定の顧客層が段階的に「買い替えてきた」と見ている。当社の調べでは、十五万円前後のドラム式洗濯乾燥機は、〇四年以降も数量で二割前後、金額では四割と構成比に大幅な変化がある訳ではない。AV機器のように新しい技術が搭載されたらすぐに買い替えるという要素が相対的に少なく、使用年数も長いのが特徴だ。
高級白物家電のキーワードの一つは「省エネルギー性の高さ」だが、ガソリンや食料品の値上がりの影響を受けそうだ。これまで省エネ性の高い製品を「先行投資」として考え購入を検討してきた人たちも、日々の支出をいかに抑えるかなど足元に目が向き始めている。家計の支出がさらに増えればその先行投資を踏みとどまり、販売の足を引っ張る可能性も出てくる。
もちろん付加価値の作り込み、訴求の仕方次第で伸びる余地はある。すでに日立アプライアンスや三菱電機が市場投入した六百リットル以上の大型冷蔵庫は、ガソリン価格の上昇や共働きの増加でまとめ買いをする消費者が増えたことで、出足は好調。またオーブンレンジに対する顧客のニーズは依然高く、十五万円前後の高級機種の販売が堅調だ。
エアコンでは灯油値上がりを受け、量販店などが冬を見越しての提案営業を強化しており暖房能力の高い製品が伸び始めている。各社はいかに消費者に「長期的には大きなメリットがある」という点を理解してもらうかが重要となる。
今後のカギとなりえるのが「準プレミアム」製品のラインアップだ。最上位機種のひとつ手前の価格帯をそう呼んでいるのだが、潜在的な需要は大きい。現状では、洗濯乾燥機でいえば実勢価格が十五万円前後の最上位機種の下の価格帯は七万円の標準機種というケースが多い。
消費者にとって標準から「プレミアム」へのハードルはメーカーが思っている以上に高い。今後はこの辺りの製品群の充実と、価格戦略が重要になってくるといえる。
(聞き手は杉原梓)
みずむら・じゅんいち 94年立教大社卒、アイワ入社、家電量販店向け営業に従事。02年GfKジャパン入社、調査統計サポートなどを担当。03年から国内営業部の流通営業部シニアマネジャー。
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