20080909 日本経済新聞 夕刊

 吉野家ホールディングス傘下で持ち帰りすしチェーンを展開する京樽の健康保険組合が、高齢者医療制度への拠出負担増などにより九月一日付で解散したことが九日わかった。社員とその家族ら約三千五百人の加入者は全員、国が運営する政府管掌健康保険(政管健保)に移った。八月の西濃運輸健保組合の解散に続く動きで、健保組合に依存する医療制度の持続性にも影響を与えそうだ。
 京樽によると、四月の高齢者医療制度の導入に伴って、医療費負担が二〇〇七年度の一億二千万円から今年度は二倍強の二億七千万円に急増。保険料率は政管健保と同じ八・二%だったが、新たな負担増を賄うには保険料率を一〇%以上に引き上げる必要性が生じた。このため、健保組合を解散し、保険料率の面でも有利な政管健保に移ることを決めたという。
 政管健保の財源の一部は国庫負担によって支えられているため、今後も健保組合の解散が相次いで政管健保に移行すれば、国民負担の増大につながる恐れもある。
 この問題に関連して、舛添要一厚生労働相は九日の閣議後の記者会見で「それぞれの会社の経営状態だとか、健保組合の状態によりけりだが、後期高齢者医療への支援が重くのしかかっているのは事実」との認識を示した。そのうえで、「四割は現役の負担だから、それが重くのしかかってこういうことになっている。国民の間できっちり議論をする」と語り、現役世代の財源負担について、再検討する必要性に言及した。



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20080908 日本経済新聞 夕刊

 ライフプランを考える時に、欠かせないのが年金の知識です。それぞれの人が受け取る年金は、職業や立場によって異なり、その額にもばらつきがあります。年金シリーズの初回では制度の全体像を紹介します。最近話題の年金問題を考えるためにも、どんな年金があり、自分がどの年金に加入しているかを、よく理解するようにしましょう。
 年金にはいくつか種類がありますが、大別すると、国が運営する公的年金と、私的年金に分かれます。
 日本の公的年金制度は「二十歳以上六十歳未満の日本国内に住む人」全員が加入し(1)基礎的な給付を受ける国民年金(基礎年金)(2)これに上乗せして現役時代の報酬に比例する年金を受け取る厚生年金と共済年金――とからなります。
 一般に国民年金のことを「一階部分」、厚生年金や共済年金などを「二階部分」、さらに厚生年金基金など加入すると公的年金に上乗せして年金を受け取れる私的年金を「三階部分」と呼びます(図参照)。
 公的年金の特徴は「世代間扶養」です。国が働く現役世代から保険料を集め、それをもとに高齢者に年金を給付して生活を支える仕組みです。世代間扶養は、高齢者が老後の長さや物価水準の変動など予測のつかないリスクに備えられるという長所があります。一方で、現代の日本のように高齢化などの人口構造の変化があると、支える世代の負担と高齢者への給付の見直しが必要になります。
 それでは図を参考に、公的年金の仕組みをより詳しく見ましょう。一階部分の国民年金は国民全員が加入する年金です。専業主婦や職業に就いていない人も全員国民年金に加入します。収入がなく保険料の納付が難しい場合、条件が整えば納付の免除や猶予を受ける選択肢もあります。
 これに対し二階部分は全員加入ではなく、勤め先によって加入先が異なります。国民年金の第二号被保険者(加入者)である会社員は厚生年金に、公務員は共済年金に加入することになります。自営業者や学生などの第一号、会社員や公務員の被扶養配偶者などの第三号は厚生年金や共済年金には入れません。ただし第一号被保険者は、国民年金の上乗せとして創設された国民年金基金には、任意で加入できます。
 ファイナンシャルプランナーの後藤秀樹さんは「会社員は国民年金には加入していないと勘違いしやすい」と指摘します。会社員や公務員は、厚生年金や共済年金に加入すると同時に国民年金にも入り、その分の保険料も、天引きなどで納めていることを覚えておきましょう。
 国民年金は原則、二十五年の受給資格期間がないと受け取れませんが、二階部分の厚生年金と共済年金については、国民年金をもらう条件を満たしていれば、加入期間に応じた年金をもらえます。会社員を辞めて自営業者になると厚生年金から国民年金のみの加入に変わりますが、厚生年金に一定期間加入していた記録は残るため、会社員時代に払った保険料がムダになる心配はありません。
 「会社員の妻の年金の仕組みを知らない人が多い」(後藤さん)という指摘もあります。専業主婦である会社員や公務員の妻は、第三号被保険者として国民年金の加入者になります。この場合、会社や役所に勤める夫は給与支給時に保険料が天引きされますが、被扶養配偶者である妻は国民年金の保険料を納付する必要はありません。
 一方、同じ国民年金に加入する自営業者や学生などの第一号被保険者は保険料を納めなければならず、この点が第一号と第三号の異なるポイントです。
 第二号被保険者である夫が自営業者になるとどうでしょう。会社などを辞めた夫はこの時から第一号被保険者に変わり、国民年金のみの加入になります。妻は国民年金の加入者であることに変わりはありませんが、第三号被保険者から第一号被保険者に変わり、以降保険料の納付が必要になることに注意しましょう。
 公的年金には、高齢になってからの生活保障をする老齢基礎年金のほか、ケガや病気による一定以上の障害を抱えた場合の「障害基礎年金」や、保険加入者が亡くなった際に遺族の生活保障を目的とする「遺族基礎年金」もあります。
 万が一の事態に備えたこれらの年金も、保険料未納が続くなど、一定の納付条件を満たしていない場合は年金受給の権利を失うこともあります。特に国民年金のみの加入者は、給与から天引きされる会社員などとは異なり、保険料を自分で納める必要があります。その分未納も起こりやすく、自身でしっかり管理する心がけが大切です。
 これらの保険料納付や年金受給についての内容は次回以降に勉強しましょう。(ライター 福島 由恵)

20080908 日本経済新聞 夕刊

 医師、特に病院勤務医の不足が深刻な問題となり、全国各地で病院の閉鎖や一部診療科の休止が相次いでいる。これに対し政府はやっと重い腰を上げ医師養成人数の増加を打ち出した。これで中長期的には問題解決かというと実はそうではない。財源が定かでないのだ。
 厚生労働省の「安心と希望の医療確保ビジョン具体化に関する検討会」は八月二十七日、医学部の定員増加や、疲弊している産科や救急の医師への手当支給などを柱とする中間報告骨子をまとめた。現在約七千八百人の医学部定員は、将来的に一・五倍に増やすことを目標にするという。
 経済協力開発機構(OECD)の統計(二〇〇四年時点)によると、日本の人口千人当たり医師数は二人。三人以上が珍しくないOECD加盟国の中では少ない部類だ。定員を一・五倍にすることで中長期的にOECD諸国の平均並みを狙う。
 この中間報告に先立ち、政府は六月末にまとめた「経済財政改革の基本方針(骨太の方針二〇〇八)」にも医学部の定員増加を盛り込んでいる。これを受け全国の医科大学は二〇〇九年度に合計で七百人以上の定員増加を文部科学省に申し込んだ。一・五倍増に向け順調な滑り出しのようにも見える。
 ところが同じ二十七日に、国立大学医学部長会議が「医学部定員増に関する問題点について」という要望書をまとめた。「定員を増やして、予算が増えなければ、医学教育の質が低下するだけ」と強調。具体的には、定員増一人当たり一千万円の予算配分、定員増二十人当たり十二人の教員増を訴えている。
 文科省は来年度については定員増に伴う一定の予算増を要求するという。ただ再来年以降も財源の裏付けができたわけでは全くない。一部に「一・五倍も必要なのか」との声も出始めている。
 国内総生産(GDP)に占める医療費の比率も、教育費の比率も日本はOECD諸国の中では低い。経済力からするともっと費用をかけることが可能だともいえる。そうは言っても、天からカネは降ってこない。財源確保の議論を早急に始める必要がある。
 「だれもが安心できる質の高い医療」を求めるのならば、政府の中で予算の使い道を大胆に見直すだけでなく、国民にも相応の負担の覚悟が求められそうだ。
 (編集委員 山口聡)

20080907 日本経済新聞 朝刊

 西濃運輸(岐阜県大垣市)などセイノーホールディングスのグループ会社の従業員が加入する健康保険組合が解散していたことが明らかになった。4月の高齢者医療制度改革に伴う負担増が原因だ。同様の負担に苦しむ組合は多く、組合の数の減少傾向が続く可能性がある。
 健康保険組合連合会(東京・港)によると、健保組合は2008年4月1日時点で1502組合で、00年3月末時点と比べて16%減った。健保組合は加入する組合員(保険料を支払う被保険者とその扶養家族)の医療費以外に、健保を脱退した社員OBや75歳以上の医療保険も一部負担してきた。このため、高齢化の進展で収支が悪化し、解散する組合が相次いでいる。企業の合併に伴い、組合の統合が増えたことも減少の原因になっている。
 一方、組合員数は08年4月1日時点で3050万人と3年連続増。直近の底だった05年3月末から3%増えた。企業はパートやアルバイトのうち常勤雇用に近い人を健保の対象にすることが義務付けられている。「企業は景気の変動に応じて非正規雇用者の数を増減する傾向がある。景気回復でパートなどの雇用が増え、組合員数の増加につながったのではないか」(健康保険組合連合会)
 だが組合員数の増加が今後も続くかどうかは不透明だ。4月の高齢者医療制度改革で、65―74歳の加入比率が高い国民健康保険に健保が納付金を出す仕組みが導入された。東京医科歯科大学の川渕孝一教授は「制度改革で健保の収支悪化が加速しており、今後も解散する組合が相次ぐ可能性がある。景気減速で組合員数は伸び悩む懸念がある」と指摘している。


20080906 日本経済新聞 朝刊

 厚生労働省は七十五歳以上が対象の後期高齢者医療制度で、夫婦の一方が同制度の対象者となることで、今年八月から医療費の窓口負担が一割から三割に増えた一部の高齢者について、元の一割負担に戻す方針を固めた。政令を改正し、来年一月から実施する。対象は全国で一万数千人とみられ、必要な財源は数億円の見通し。
 対象は夫婦のいずれかが七十五歳以上で後期高齢者医療制度に移り、一方が七十四歳以下で国民健康保険など既存制度に残ったケースのうち、夫婦のどちらかが「現役並みの所得」と判定されて三割負担に変更された人。与党からも「世帯全体の所得は変わらないのに、負担が増えるのはおかしい」との批判が出ており、見直すことにした。