20080919 日本経済新聞 朝刊

歳出抑制など3手法軸に検討
 介護給付が増えているのを受け、六十五歳以上の第一号被保険者の保険料は平均で月額四千円を突破している。しかし、二〇〇四年の年金改革で導入されたマクロ経済スライド(物価上昇率を年金受給額の伸びが上回らないよう調整する機能)が動き始めると、年金額は実質的に毎年〇・九%ずつ下がり、二五年ごろには累計一五%の実質給付引き下げになる。一方で、人手不足から介護労働者の賃金上昇圧力は高まり、歳出拡大の圧力が強まっている。
 こうしたなか、介護保険財政を安定させる方法は三つしかない。一つは歳出抑制だ。具体的には財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が検討している(1)軽度要介護者の自己負担割合を現在の一割から二割に引き上げる(2)掃除や洗濯など家事を援助する「生活援助」を除外する(3)公的介護保険の対象をより重度の人に限る――の三つの案がある。(3)は最も厳しい歳出抑制案で、ドイツを参考に要介護2までの在宅サービスを保険適用から除くというものだ。費用の約三割、国と地方の負担は年間約六千億円抑えられ、保険料も同一人一万五千円下げられる。しかし、ここまで対象を厳しく絞ると保険の理念・目的は当初と大きく変わってしまうだろう。
 二つめは歳入確保の道だ。高齢者と現役の保険料、国庫負担、地方負担に加え、社会保障目的の消費税などで介護保険財政を下支えするという方法だ。ただ、これも年金や医療の財源も不足するなか、介護にどの程度回せるかという問題がある。三つめは厚生労働省が本命と考えている案で、被保険者を年金同様に二十歳まで引き下げ、若い世代にも保険料を分担してもらう案である。サービスの対象もドイツ同様、若者も含めた幅広い世代に広げるため、「介護保険のユニバーサル化」と呼ばれる。この案については次回で詳しく述べることにする。
 いずれにしても給付を下げるか、負担を上げるかの見直しが必要となる。介護保険において負担無しにメリットを享受する、フリーランチは存在しない。


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20080919 日本経済新聞 朝刊

組み入れ100本超す 「貯蓄から投資」に逆風
 米国の金融危機が日本の家計を直撃している。米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻や、米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の公的救済を受けて、世界的に株式相場が低迷。「貯蓄から投資へ」の流れは一時的に停滞しそうだ。株式や投資信託などへの投資だけでなく、住宅ローンなど個人生活の幅広い分野に米金融危機の影響は及ぶ見通し。物価高を受け実質的な所得が圧迫されるなか、家計は一段と厳しさを増すことも予想される。
 経営破綻した米証券大手リーマン・ブラザーズや、米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の関連証券を組み入れた投資信託で、基準価格が下落したり、新規の購入や解約を停止したりする動きが広がっている。
 大和証券投資信託委託は十八日、「ダイワ/ブラックロック 資源エネルギーファンド」の新規購入と解約の申し込み受け付けを当面、停止すると発表した。
 この投信はAIGの関連会社が発行する指数連動債券を約二〇%組み入れている。指数連動債は商品指数などの値動きに償還価格や利率が連動するように設計した債券。発行体(AIG)が財政難や経営不振に陥った場合、決められた条件で償還金や利息を支払えなくなるリスクがある。
 AIGが米政府の管理下に入り信用リスクが変動し、債券価格が提示できなくなった。このためAIGの債券を組み入れた投信も基準価格の算出ができなくなった。
 AIG関連の指数連動債はコモディティ(商品)投信などに多く組み入れている。大手運用会社のうち、野村アセットマネジメント、岡三アセットマネジメントは三本、中央三井アセットマネジメントと住信アセットマネジメントはそれぞれ一本の投信の新規購入と解約の申し込み受け付けを停止。「受け付けを再開する時期は未定」(岡三アセットなど)という。
 AIG関連の指数連動債を組み入れた投信の純資産残高は、五社九本合計で約三百三十億円。解約の停止で投信を保有している投資家は当面、換金ができなくなる。
 一方、リーマンの株式や債券を組み入れた公募投信は、大手運用会社だけで百本を超える。組み入れ比率は一%未満の投信が多い。三井住友アセットマネジメントの「USボンドオープン(為替ノーヘッジ型)」がリーマンの債券を二・七七%保有するなど、組み入れ比率が比較的高いファンドもある。
 債券価格が下落したり、デフォルト(債務不履行)したりすると、基準価格の下落という形で影響が出る。単純に図式化すると、例えばリーマンの債券を二%組み入れている投信の場合、リーマン債がデフォルトすると、一万円の基準価格が九千八百円に下落する要因になる。
 米金融危機が世界に波及し、ロシア株に投資する投信にも影響が出ている。新生インベストメント・マネジメントは十八日、前日に受け付けた「新生・トロイカ ロシアファンド」の新規購入と解約の申し込みを取り消した。ロシアの株式市場が十七日に取引を一時停止したためだ。「市場取引が再開すれば、購入・解約できる」という。

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20080919 日本経済新聞 朝刊

為替 荒れる相場、FX動揺
 米国の金融危機の個人生活への影響は、幅広い分野に及びそうだ。
 【株式市場】株式相場の低迷は個人投資家を直撃。インターネット証券大手の松井証券によると、証券会社からお金を借りて株を買う投資家の含み損が十八日、平均で取得価格の三割近くまで広がった。
 運用開始時に決めた株価水準を下回らない限り、元本が保証されるタイプの「リスク限定型投信」にも影響が出ている。安定志向の個人投資家に人気が高いが、予想外の株安で「想定株価を下回ったファンドがほぼ半年ぶりに発生した」(中央三井アセットマネジメント)という。
 鈴木茂晴・大和証券グループ本社社長は十八日、「暴風雨が続いている。一年くらいは厳しい環境が続くのではないか」と述べた。
 【外国為替証拠金取引(FX)】米金融危機でドルが急落し「差し入れた担保を上回る損失を抱えた投資家がこのところ過去最高に達している」(中堅のFX金融会社)。オーストラリアなど資源国の通貨も下がり、高金利を求めてドルや豪ドルを買っていた個人投資家が打撃を受けている。
 【投資にブレーキ】貯蓄から投資への動きは一時的に停滞しそうだ。日銀によると、七月の定期預金残高は前年同月比六%増の約二百四十六兆円。投資信託への資金流入が細っているのと対照的に、定期預金は六年五カ月ぶりの水準まで積み上がっている。
 金融危機がこうした傾向に拍車をかけ、個人マネーが一層、定期預金などに向かう可能性がある。
 【住宅ローン】縮み志向のマネーは住宅ローン金利を押し下げるかもしれない。安全資産の国債へのシフトが強まれば長期金利は低下する。銀行は一般的に、市場金利の動向に合わせて毎月の住宅ローン金利を変更している。九月の長期金利が低下した場合、月末に各行が発表する住宅ローン金利(十月適用分)も低下する見通しだ。
 【個人消費・景気への影響】個人消費の先行きも懸念される。すでに世界経済の減速から、成長のけん引役だった輸出には陰りが生じている。企業は輸出の減少から生産、設備投資を抑え始めており、日本経済は停滞感が目立つ。
 心理の冷え込みが実体経済を下押しするまでには一定の時間がかかるとはいえ、市場の混乱が長引けば家計を萎縮させ、消費に逆風となる公算が大きい。
【図・写真】大幅に下落した日経平均株価(18日、東京都中央区)


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20080918 日本経済新聞 朝刊

 介護給付費が急増するなか、二〇〇五年に介護保険改革が実施された。加入する被保険者の年齢の見直し、四十歳未満への適用拡大が重要な課題だったが、結論が出ず、社会保障制度全般の一体的見直しのなかでさらに検討するとして、〇九年度まで先送りされた。
 実際に実施されたのは、軽度者向けに介護予防システム(新予防給付)を導入し、軽度の介護度を要支援1・2に分け、介護認定区分を六段階から七段階に細分化することや、小規模多機能型居宅介護など地域密着型サービスを創設すること、ケアプランを作成するケアマネジメントの見直し、地域包括支援センターの整備、施設サービスや通所介護(デイサービス)での居住費・食費(滞在費)の徴収、ケア付き高齢者向け住宅の整備などだった。
 厚生労働省はこの改革で第五期介護保険事業計画(一二―一四年度)で介護給付費を一・九兆円程度抑制でき、六十五歳以上の第一号被保険者の保険料も五千円未満に抑えられるとしている。しかし、給付費を抑えるために保険給付の範囲を狭めたにすぎないなど、数多くの批判が出ている。
 介護保険給付の現状についてみると、〇八年度の予算ベースで七・四兆円、厚労省の介護保険事業状況報告によると、〇七年十一月末時点で第一号被保険者数は二千七百二十二万人。〇〇年に比べて二三%増加している。一方、要介護認定者は〇七年十一月末で四百五十一万人となり、倍以上に急増した。
 一人あたり平均給付費は十四万円。サービス別では在宅が八・九万円、地域密着型(介護予防)十九・五万円、施設二十五・五万円だった。施設の利用者は増えているが、伸びは抑制されている。特別養護老人ホーム整備に対する都道府県交付金が廃止され、自治体が新設を抑えているためだ。その結果待機者は全国で三十八万人(〇六年三月時点)に増加。特養を利用するには重度、家族不在、緊急性といった入所基準が決められ、制限が厳しくなってきている。

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20080918 日本経済新聞 朝刊

売却なら争奪戦も
 米AIGが再建加速へ事業リストラに動き出した場合、アリコジャパンなど日本の保険各社の行方が焦点になる。五〇%以上出資する六社合計の保険料収入は年間約二兆五千億円と、国内保険五位の住友生命保険に迫り、各社の経営も健全だ。売却なら、大手生命保険、損害保険の間で争奪戦になる可能性もある。
 日本で最も存在感があるのは生保事業。なかでもアリコは業界五位。「てごろでがっちり入院保険」など医療保険のテレビコマーシャルが有名で、営業員、代理店、直販と多様な販売網を持つ。AIGエジソン生命とAIGスター生命は日本の金融危機時に破綻した中堅生保を買収したものだ。それぞれ旧東邦生命、旧千代田生命だった。破綻時に不採算の逆ざや契約を切ったため、資産内容は良いとされる。
 損保では、代理店を通さずに自動車保険や医療保険を販売するアメリカンホーム保険と、代理店販売中心のAIU保険が中核。JTBとの合弁で旅行保険を売るジェイアイ傷害火災や、二三%出資する損保七位の富士火災海上保険もある。
 日本事業の保険契約者は生損保合計で一千万人超。従業員数も二万六千人を抱え、外資系金融では最大規模だ。生保三社のコールセンターがある長崎市には二千四百人いる。雇用も大きい。
 生保だけでみると全世界の保険料収入の約二五%を日本が稼ぐなど米AIGにとって日本事業は大きな要だ。米政府が、高く売れるから再建加速へ手放すのか、高収益だからこそ将来を考えて残すのかはまだ不明。「全世界での一括売却の可能性を探り、難しければ国・地域ごとに売却を進めるのではないか」とある生保幹部は予想する。


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