20081109 日本経済新聞 朝刊

 歯切れの良さが持ち味である麻生太郎首相の発言がここにきて蛇行気味だ。定額給付金や消費税などの重要政策で基本方針に言及し、政府・与党内から意見が出て軌道修正を迫られるケースが目立つ。早期の衆院解散を視野に見切り発車で発言した要素があるほか、「選挙の先送りで首相や党幹部の緊張感が薄れた」との指摘もある。
 「いろんな意見が出され、結構だと思いますけどね」。首相は七日夜、総額二兆円の定額給付金の配分方法や所得制限の有無などを巡り、閣内からも異論が多い点を記者団に指摘されてやんわり受け流した。首相が表明した「全世帯への給付」はその後、「所得制限付き」へと変更され、現時点でも調整はついていない。
 十月三十日の記者会見で「三年後の引き上げ」を言明した消費税問題は、翌日には「景気が回復して経済のパイが大きくなるという前提がないと増税は難しい」とトーンダウン。意欲的だった集団的自衛権の行使を巡る憲法解釈の見直しも、田母神俊雄前航空幕僚長による懸賞論文問題が浮上すると、持論をあっさり封印した。
 首相は「細かい部分にはこだわらない性格」(側近議員)で、トップは基本方針を示すのが大事と考えているフシがある。首相周辺も「首相が全部決めたら独裁でしょう」と擁護する。
 トップダウン型とされた小泉純一郎元首相は郵政民営化などを巡って大方針をまず掲げ、自民党との対立が抜き差しならなくなると最終局面で裁断を下す展開が多かった。しかし麻生首相は最初に結論に言及してしまうことが多く、結果として調整不足を露呈しがちだ。自民党幹部は「首相の周りにいるスタッフが調整できない」と不満を口にする。
解散延び緩む?
 もちろん責任は首相だけにあるのではない。首相方針に反する発言が閣内などから相次ぐ点について、自民党幹部は「勝手なことを言い過ぎる。解散が延びて気がゆるんでいる」と批判。すぐに選挙戦に突入していれば食い違いが顕在化しなかったとみられるケースもあり、「最初に政策の細部を詰めなかったツケがいま出始めた」との声が漏れる。
 首相は来るべき次期衆院選に向けて、九日に茨城県に入るなど地方遊説を本格化する。首相本来の歯切れの良さが「麻生人気」の底上げにつながるのかどうか――。周囲には脱線気味の発言を心配する空気も漂っている。


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20081108 日本経済新聞 朝刊

 東京海上日動火災保険など大手損保六社の十月の営業成績が七日、まとまった。全体の保険料収入は六社計で前年同月比四・五%減の五千二百四億円だった。今年度から料率が下がった強制加入の自動車損害賠償責任(自賠責)保険料の減少分を除くと、あいおい損害保険とニッセイ同和損害保険が増収となった。
 自賠責の影響を除いた保険料収入は全体で〇・一%減の四千五百八十九億円。実質増収となったあいおい損保とニッセイ同和は火災保険の増収が寄与した。「大口の企業物件の新規契約が好調だった」(あいおい損保)という。火災保険は全体でも一・五%増の八百二十七億円だった。
 主力の自動車保険の保険料収入は一・三%減の二千五百二十六億円。新車販売の低迷を受けて全社が減収となった。今後も景気後退により自動車需要は減退する見通し。


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20081107 日本経済新聞 朝刊

やっぱり手軽にやせたい
 腹回りは気になるけれど、お金や時間をかけずにへこませたい――。メタボリック(内臓脂肪)症候群の改善を促す特定健診・保健指導が始まって半年余り。メタボ対策プログラムをそろえたフィットネスクラブは振るわず、手軽に健康管理ができる体組成計や一部の特定保健用食品(特保)に人気が集まっている。「メタボ商戦」は明暗が分かれた格好だ。
 指導員が食生活改善や運動を指導するプログラムを組んだフィットネスクラブは総崩れだ。「消費低迷で万円単位のフィットネスが割高に映っている」(大手のセントラルスポーツ)ためだ。
 東急スポーツオアシス(東京・世田谷)の「メタボナビ」(七週間で五万二千五百円、十三週間で八万四千円)の利用者は現在、三十人程度と「計画の半数に届かない」。日本体育施設運営(同・千代田)の「スポーツクラブNAS大崎」(同・品川)は医療機関と提携したプログラムを二万千円で提供するが、利用者はまだ五人程度だ。
 期待された企業の健康保険組合などの動きが鈍い。健保が会費を一部負担してメタボ該当者に利用を促すとみられたが「健保財政に余裕がないほか、制度変更も見据えた様子見が多い」(ティップネス)。男性会社員(34)は「腹回りは気になるが、フィットネスは高くて手が出ない」。
 消費者は手軽な対策に向かう。ヨドバシカメラでは体脂肪率や筋肉量が計れる体組成計の販売数量が四―九月に前年同期比約二割増。「一万円以下の商品が売れ筋」。ヨドバシの新宿西口本店を訪れた会社員の石上但志さん(41)は「(メタボ対策に)お金も時間もかけたくない。なるべく歩くようにするくらい」と四千九百八十円の体組成計を買った。
 マツモトキヨシでは四―九月の特保や漢方薬などの売り上げが前年同期比二ケタ増。脂肪燃焼に効果があるとされるロート製薬の漢方薬「防風通聖散錠」(六十三錠、千四百十八円)が人気だ。森永製菓の通販サイトでは二百ミリリットルの紙パック入り茶系飲料「清祥茶房」(二十八パック、五千二百九十二円)の四―九月の売り上げが同三倍に。中性脂肪の吸収を抑えるとされる特保で五十―六十代が支持している。
 健康食宅配のファンデリー(同・北)のサイト「Foodict」は、「STOPメタボ」などの分類やメニューのカロリー量で飲食店を検索できる。東京・築地の和食店「つきぢ はる田」は十月の売り上げが同サイト登録前の九月より二割増。「あらかじめ低カロリーメニューを指定して来る女性客が増えた」
 ▼特定健診・保健指導 糖尿病など生活習慣病を予防し、医療費を抑制することを狙いに始まった。四十―七十四歳が対象。健保運営者はメタボ該当者の組合員の減少率などが低いと、後期高齢者医療制度への負担金が最大一割増額される。


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20081107 日本経済新聞 夕刊

 与謝野馨経済財政担当相は七日の閣議後の記者会見で、総額二兆円の定額給付金の対象者を絞る所得制限について「高額所得者が受け取りを辞退するというのは制度ではなく、あり得ない」と語った。政府・与党が検討している高額所得者に辞退を呼びかける形での所得制限に反対の考えを示したものだ。一方で、他の閣僚からは辞退を促す方式に賛成の意見も出た。
 政府・与党は定額給付金について「バラマキ」の批判を避けるために、支給対象から高額所得者を除く方針だ。同日の会見では甘利明行政改革担当相が「十分に生活余力がある人は辞退してもらうのが一番いい」と述べた。一方で野田聖子消費者行政担当相が「全所帯でよかったんじゃないかと思っている」と述べるなど、政府内でも意見の違いが残っている。
 中川昭一財務・金融担当相は「迅速性が失われないよう作業を進めているようなので、ぜひ期待したい」と述べた。
 支給準備に向けては鳩山邦夫総務相が同日の会見で、総務省に「生活支援定額給付金実施本部」を十一日付で設置すると発表。「(外国人のなかでも)納税している永住者、特別永住者は受け取る権利があるのでは」と述べ、十年前の地域振興券と同じく、一部の外国人は給付金の支給対象になるとの見方を示した。

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20081104 日経産業新聞

 三井不動産販売など不動産流通大手五社が共同でインターネットによる不動産の競売サイトを立ち上げた。物件は首都圏限定で入札参加者もまだ少ないが、将来は五社以外の参加も視野に入れる。不動産オークションで先行したアイディーユー(IDU)が市況の急激な悪化で二〇〇八年八月期に二百六十一億円の連結最終赤字を計上するなど、取り巻く環境は非常に厳しい。日本で不動産のオークション販売は根付くのだろうか。
 三井不動産販売と東急リバブル、東京建物不動産販売、野村不動産アーバンネット、三菱地所リアルエステートサービスの五社は七月、共同で専用サイトを立ち上げ、一回目のオークションを開催した。中古マンションや戸建て住宅など二百九十四件をサイトに出品、入札が十一あり、五件が成約となった。
 十月三十日から十二月一日まで二回目のオークションを開催中で、今回は開催期間を一カ月間と一回目より長くして二十件以上の成約を目指している。
 オークション自体の知名度が低く、大きな成果を上げているとは言い難いのが現状。ただ、五社は「実験的な販売手法の一つ。これで(大きな)収益を上げようとは考えていない」(三井不動産販売の西渕史人リハウス業務部長)などと口をそろえる。五社にとって、オークションは不動産の売り方を変える試みという意味合いが強いためだ。
 幅広く買い手を募り高値で買い取ってもらうオークションは、売れ残った物件の魅力的な処分法ではある。不動産価格の下落が続く現在、売り手側には少しでも高く物件を売れればとの思惑が働く。
 ただ、五社連合もいまだ手探りの状態。オークションではどんな物件に引き合いが強いのか、価格設定のあり方はどうあるべきか――。オークションを重ねることでこうしたノウハウを蓄積。そのうえで、物件の対象地域を首都圏以外に広げたり、参加企業を中小の不動産仲介業者に広げたりすることを検討していく方針だ。
 もっとも、先行したIDUは大苦戦している。オークションへの出品件数や利用者数こそ横ばいだが、六―八月の落札物件の総額は計約十一億円と前年同期より九割以上も減った。「市場から幅広く買い手を募るオークションは本来、取引が成立しにくい不況期こそ利用価値が高まるはずなのだが……」。IDUの天野善彦営業本部長はこぼすが、落札額は二・四半期連続で前年実績を下回っている。
 一つには、昨年来の米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発する世界的な金融危機と景気後退を受け、買い手側の購買力や購買意欲が低下していることがある。
 さらに、オークション自体が不動産取引の不透明なイメージを払拭(ふっしょく)できていない面もある。従来は設備の補修状況などマイナス情報を隠して仲介するような業者が少なくなかったり、価格設定がいいかげんだったりして、買い手側の信頼を十分に得られていなかった。
 このため、大手五社は当面、オークションでは自社物件のみを取り扱うことで、買い手側から信頼を獲得することを第一に心掛けている。不動産価格下落の底が見えない中、オークションを不動産の新たな販売チャネルとして確立できるかどうか。カギは時間をかけて地道に利用者からの信頼を得ることにあるのかもしれない。(兼松雄一郎)


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