20081110 日本経済新聞 夕刊

 家計経済研究所(東京・千代田)が全国の24―34歳の女性を対象に行った「消費生活に関するパネル調査」(2008年10月発表)によると、結婚せずに独身でいる人ほど、20代時点の貯蓄割合が高く、保険などで将来に向けて備えている比率が高いことがわかった。月収に占める貯蓄の割合は、30歳までに結婚した人が22%なのに対し、40歳まで未婚の人は31%。また保険の加入割合は、40歳まで未婚では8割以上に達した。
 同研究所では「計画的な家計行動をとっている女性ほど一人で自立した生活が営めるため、未婚継続につながるか、将来一人で生きていく可能性を考えた女性があらかじめ経済的に備えているという二つの可能性がある」としている。

------------------------------------------------



20081109 日本経済新聞 朝刊

 お産のときの事故で、生まれてきた子供が障害を抱えてしまった。こんな場合に家族や子供を助ける補償制度が二〇〇九年一月から始まる。子供を産むほぼすべての人にかかわる制度となるが、補償対象が限られるなど課題も多い。より多くの人が安心できる制度として充実させていくためにも、その内容を知っておこう。
 神奈川県で暮らす坂口成美ちゃん(11)は生まれる前、母親の胎内で順調に育っていた。しかし予定日を過ぎた後の分娩(ぶんべん)時の事故で、重度の脳性まひになった。自分ではからだを動かすことができず、母親の朋子さんが付きっ切りで介護している。
 食事は鼻から胃に通したチューブで流動食を流し込む。少しずつしか消化できないので、一日六回に分け、合計七―八時間もかかる。たんの吸引や寝返りを打たせることも必要。朋子さんはゆっくり寝ることもままならない。養護学校や病院への送り迎えも一仕事だ。
 経済的負担も重い。車いすの購入など公的補助が出るものもあるが、食事の際に使うチューブなどは全額自己負担。家庭での介護・看護費用に月八万―十万円かかる。朋子さんは「娘が生まれたときに補償制度があれば対象になったはず。今後はこの仕組みで助かる人はいるだろう」と話す。
掛け金は3万円
 来年から始まる制度の正式名称は「産科医療補償制度」(図A参照)。通常の妊娠・出産だったにもかかわらず、生まれた子供が重度の脳性まひになったとき、その子の看護・介護のために一時金として六百万円、分割金として年百二十万円(月十万円)が二十年にわたって支給される。
 未熟児として生まれた場合や、検査でわかる遺伝子異常など先天的な原因によるものは対象外。原則として妊娠三十三週以上で生まれた場合で、重度の障害があることなどが補償の条件となる。ただし妊娠二十八週以上ならば個別審査で該当することもある(表B参照)。
 この制度を運営するのは公的団体である日本医療機能評価機構(東京・千代田)。同機構と損害保険会社六社でつくる保険に、全国のお産を扱う医療機関が加入し、各医療機関が掛け金を払う。それが補償金の財源となる。一出産当たりの掛け金は三万円。多くの医療機関は経営が厳しいため、来年から掛け金の三万円分程度、出産費を値上げする見通しだ(図A)。
 そのままではお産をする人の負担増になってしまうので、政府は健康保険など公的医療保険からお産をした人に支払う出産育児一時金を来年から三万円引き上げ、三十八万円とする。
 お産を扱う医療機関が新制度に加入するかは自由だが、〇八年十一月初めの時点ですでに九五%の医療機関が参加している。お産をする医療機関が制度に加入しているかどうかは、院内に加入証(図C参照)が提示されているかでわかるほか、直接問い合わせてみるのが手っ取り早い。日本医療機能評価機構のホームページでも確認できる。
 制度に参加した医療機関でお産する妊婦さんは、医療機関から渡される「産科医療補償制度登録証」に氏名や住所を記入し、その控えを手元に残す。万が一、子供が脳性まひになったとしても障害状態を見極めるため、原則満一歳以降でないと補償金の申請はできない。登録証は大切に保管しておこう。
原因を分析・公表
 新制度は、これまでなら補償がなかった人も支援できるという点で評価する声が多いが、課題も山積だ。その一つが補償条件。愛育病院(東京・港)新生児科部長の加部一彦医師は「どうして原則妊娠三十三週で区切るのか。わずかな日数の違いで対象外になる場合など不公平感がぬぐえない」という。
 もう一つは、医師と妊産婦・家族側の紛争防止、医療事故の再発防止に役立つかどうかだ。新制度は事故が起こったときに補償金を払うだけでなく、医師らでつくる委員会が情報を集め、原因を分析し、その結果を公表することになっている。
 産婦人科の医師不足は深刻だが、その背景の一つには原因が明確でない出産時の事故について訴訟が起こり、その争いに医師が疲れ果てるという点が指摘されている。妊産婦側も長く争っても勝てるとは限らない。「(新制度で)第三者の専門家が原因を究明してくれるのであれば、妊産婦もある程度納得してくれて、その結果、双方に無益な訴訟も減るのではないか」(日本医師会の木下勝之常任理事)と期待されているのだ。
 冒頭の坂口さんも病院側の説明に納得できず「なにがいけなかったのかを知りたい」と訴訟を起こした。病院側は原因不明として最後まで過失を認めなかったが、陣痛促進剤の過剰投与や不十分な分娩監視があったとする鑑定書が提出された後、和解を申し入れてきた。「自分が悪かったのではなく、病院がすべきことをきちんとしていなかったのだと、前向きな気持ちになれた」ので和解に応じたという。
 新制度によって本当に訴訟が減るかどうかは医師、医療事故被害者の間でも疑問視する向きがある。これとは別に「紛争解決のための努力は常に必要」(北里大学医学部産婦人科の海野信也教授)だ。とはいえ、せっかく始まるだけに、不幸な事故を減らし、医療の質を上げることにつながるか注目される。
 産科医療補償制度は不思議な制度だ。産婦人科医の団体の意見を入れて政府・与党主導でつくったのだが、法律に基づく公的制度ではない。あくまで民間の保険制度という位置づけ。ところが、その財源は結局、公的医療保険制度から出る出産育児一時金。医療機関はこの制度に加入しているかどうか、都道府県に報告する義務もある。
 民間制度とした理由は脳性まひ児を対象に急いでつくりたかったため。法案にすると国会審議などで時間がかかり、特定の人だけを救済する理屈も立ちにくい。産科医療の疲弊の原因としては、医師の側に責任があるのかどうかわかりにくい脳性まひ児の出産について訴訟・紛争が増えていることも挙げられている。
 早く補償制度をつくり、このような訴訟を減らしたいとの狙いがあった。このため、紛争にはなりにくい先天性や未熟児の脳性まひは補償対象から外れた。
 だが原因はどうあれ、脳性まひ児が生まれた場合の家族の負担は重い。どこで線を引くべきかは難しい。脳性まひだけ、産科だけが対象でよいのかという問題もある。
 また、脳性まひ児についての調査データが乏しい中で、掛け金・補償金の水準や、対象となる子供が亡くなっても補償金が二十年間は支給されつづけるという仕組みが妥当かどうかの検証も必要。よりよい制度に向けて見直しは欠かせない。(編集委員 山口聡)


------------------------------------------------



20081109 日本経済新聞 朝刊

 生命保険会社が破綻すると保険金はどうなるのでしょう。また投資信託で運用し成績次第で将来の年金の額が変わる変額年金保険は、投信と保険とどちらの保護の仕組みが使われるのでしょう。教授に聞いてみました。
 教授 二〇〇八年十月の大和生命保険の破綻では、生命保険の販売窓口などに「自分の保険は大丈夫か」という問い合わせが相次ぎました。ただ同社の破綻には過度にリスクが高い資産運用など特殊な要因があります。格付投資情報センター(R&I)チーフアナリストの植村信保さんは「生保が相次いで破綻した〇〇年前後と違い、ほかの生保が直ちに危ないということはない」とみています。
 夫 でももし破綻したら? 前にもサンデーニッケイで解説があったけど、もう一度じっくり聞きたいです。
 教授 生命保険には払ったお金が全額保護される仕組みはありません。生命保険はそもそも、みんなが出し合ったお金を困った人が使う仕組みなので、払ったお金は自分のものではなくなるのです。
 生命保険会社の破綻で守られるのは保険金の支払い原資として保険会社がその人の保険ごとに積み上げていく「責任準備金」の額です。生命保険契約者保護機構が責任準備金の最低九割を補償します。責任準備金はだいたい、その時点で解約したら戻ってくる「解約返戻金」と同じくらいの額で、解約返戻金は保険会社に聞けば教えてくれます。
 妻 じゃ、破綻したらすぐ解約すれば、解約返戻金の最低九割が戻るのね。
 教授 残念ながら破綻後しばらくは解約ができません。再出発のための更生計画が認可されてからも、数年間の解約は解約返戻金が大きく減らされる恐れがあります(図A)。「みんなが解約して契約件数が極端に減ると、保険そのものが安定して継続できないため」(生命保険契約者保護機構)です。
 夫 逆に保険契約を続ければ保険金は満額もらえるの?
 教授 そうは言い切れません。保険会社は大まかに言うと責任準備金を運用で増やして保険金を用立てますが、破綻時の責任準備金が最大一割減るうえ、その後の運用利回りにあたる予定利率も引き下げられる恐れがあるのです。利回りが下がれば、将来受け取る金額も目減りします。
 特に貯蓄性が売りの終身保険や養老保険は利回りの影響が大きく、目減りの恐れも拡大します。一方、基本的に掛け捨てである定期保険は影響が少ないのです。例えば〇〇年の千代田生命の破綻時は、終身保険で保険金がおよそ半分に減りましたが、定期保険は削減されませんでした(三十歳男性、加入後五年で破綻した場合の試算)。
 妻 投信で運用する変額年金保険は? 投信は全額保護されるって先週聞きました。
 教授 変額年金保険も生命保険なので、保護の仕組みは生命保険の扱いになります。つまり責任準備金の一割相当は減る恐れがあります。
 夫 変額年金保険の多くは年金原資などに最低保証が付いているから、最低保証額の九割が補償対象ですよね。
 教授 いいえ。変額年金保険で責任準備金にあたるのは、年金や死亡保険金の原資となる運用残高(B下図の太い線)で、最低保証額ではありません。一般に保険会社が破綻する恐れが大きいのは、株価急落などで市場が混乱するときですから運用残高は最低保証額を下回りそう。そこからさらに一割は目減りする恐れがあるのです。
 夫 でも破綻しない場合は、最低保証が付いていれば株価急落でも安心。
 教授 そうとも限りません。例えば〇八年十月、株価急落でハートフォード生命の変額年金保険が一部、運用停止になりました。「資産残高が契約時の八〇%以下に減ったら運用が終了する」という条件が付いていたためです。
 年金として長い期間をかけて払い戻しを受ける形なら元本を全額戻す決まりですが、一時金で受け取ると二割目減りします。これは特殊な例ですが運用リスクもあります。
 変額年金保険を販売する生保の破綻事例はまだありませんが、投信と同じつもりで買うと、万一の時にがっかりしそうですね。「投資商品である投信と生命保険である変額年金保険の違いを理解して購入してほしい」と、変額年金保険大手は口をそろえます。
 妻 つまり生命保険の年金で老後の生活費を補おうとすると、保険会社と運命をともにすることになるのね。
 教授 それが預金や投信と保険との大きな違いです。保険会社の経営状況をよく見なければなりません。
 夫 僕には無理……。
 教授 確かに難しいですね。植村さんは「個人が使える代表的な指標は格付け会社が経営の健全度を示す格付けとソルベンシー・マージン比率」と指摘します。各社のディスクロージャー資料や会社案内に必ず書いてあります。
 夫 そろばん?
 娘 わざと言ってる?
 教授 ソルベンシー・マージン比率。ざっくり言うと、株価暴落など想定外の事態に備える内部留保などのお金が、発生する可能性のある損失額の何倍あるか、を示す数字です。二〇〇%以上が一応の基準です。
 妻 それを見ればいいの?
 教授 でも大和生命も破綻前の〇八年三月時点は五五五%あり、個別の会社の単年度の数字だけではわかりにくいのです。「大切なのは過去の実績や他社との比較」(植村さん)。例えば大和生命は〇七年三月末(八三六%)に比べ〇八年は大きく下落。この時点で同業他社は軒並み一〇〇〇%超でした(表C)。
 植村さんは「こうした急な変化や、他社より極端に低くないか、などがチェックポイント」と助言します。格付け(AAAが最上級です)もR&Iのサイト(http://www.r-i.co.jp)などで見られるので、同様に他社と比較しましょう。(大賀智子)


------------------------------------------------



20081109 日本経済新聞 朝刊

▽…社会保障の安定財源確保や成長力強化などを目的に消費税、法人税、所得税などの中期的な改革方針を示す。麻生太郎首相の指示で10月末に公表した追加経済対策で年末の取りまとめをうたい、「税制抜本改革を2010年代半ばまでに段階的に実行する」と明記した。
▽…首相は社会保障の安定財源として先に3年後に消費税率を引き上げる方針に言及している。10年代前半の5年程度で中期プログラムを実行したい考えだ。ただ次期衆院選を控え、与党内には消費税増税の方針明示などに反発の声も根強く、年内にどこまで具体像を書き込めるかは不透明だ。


------------------------------------------------




20081109 日本経済新聞 朝刊

 自民党税制調査会の柳沢伯夫小委員長はインタビューで、中期プログラムとは別に、二〇〇九年度の税制改正で検討する項目にも言及した。住宅ローン減税では所得税だけでなく住民税からも税金を差し引ける制度を導入する考えを表明。納めている所得税より多く税金を控除できるため、所得がそれほど多くない人でも過去最大の住宅ローン減税の恩恵を受けやすくなる。(1面参照)
  「住宅ローン減税は、地方税の土俵も借りて政策を遂行することが適切だ」
 国土交通省によると夫婦と子供二人の世帯の場合、年収七百五十万円の人で一年に納める所得税は二十三万円程度。住宅ローンの税額控除の上限が過去最高(例えば期間十年で六百万円)になっても、所得税から控除しきれないケースが出てくる。住民税を含めれば、より多くの税金を差し引くことができ、減税効果が高まる。
 もっとも住民税は市町村の重要な財源。総務省は「減税になれば地方財政が悪化する」と懸念している。柳沢氏は「財源は国が裏打ちするのが大前提だ」とも述べ、住民税が減った分は国が補てんする意向を示した。
  「相続税は基本的に“税収中立”にする」
 相続税について、〇九年度の税制改正では最高税率の引き上げなどの増税措置はとらない考えを明言した。年末の税制論議では、亡くなった人の遺産総額をもとに課税額を決める現行方式から、遺産を受け取った人の受取額をもとに決める方式への変更を検討する見通し。仮に方式が変われば一部に税負担が増減する人も出てくるが、相続税収全体の規模はほぼ変わらない仕組みになりそうだ。
  「自動車重量税の引き下げなどの議論が俎上(そじょう)にのってくるだろう」
 福田康夫前首相がお金の使い道を限定しない“一般財源”にする方針を示した道路特定財源。例えば自動車重量税の場合、自家用車なら〇・五トン当たり年六千三百円がかかっており、与党内から引き下げを求める声が出ている。
 柳沢氏は「一般財源の税として議論し直すプロセスが必要だ」と指摘。自動車重量税など道路財源関連税の税体系や税率の引き下げなども検討課題になるとの考えを表明した。
  「財政収支全体が厳しくなれば、たばこ税の(引き上げ)議論もされると思う」
 紙巻きたばこには現在、一本当たり約八・七円のたばこ関連税がかかる。景気低迷や衆院選をにらんで消費税率の引き上げが当面は難しく、与野党からたばこ税の引き上げを求める声があがっている。柳沢氏は「いま結論を言うのは早い」としながらも、今後の税制論議のテーマの一つになりうるとの見方を示した。

------------------------------------------------