20081104 日経産業新聞

 三井不動産販売など不動産流通大手五社が共同でインターネットによる不動産の競売サイトを立ち上げた。物件は首都圏限定で入札参加者もまだ少ないが、将来は五社以外の参加も視野に入れる。不動産オークションで先行したアイディーユー(IDU)が市況の急激な悪化で二〇〇八年八月期に二百六十一億円の連結最終赤字を計上するなど、取り巻く環境は非常に厳しい。日本で不動産のオークション販売は根付くのだろうか。
 三井不動産販売と東急リバブル、東京建物不動産販売、野村不動産アーバンネット、三菱地所リアルエステートサービスの五社は七月、共同で専用サイトを立ち上げ、一回目のオークションを開催した。中古マンションや戸建て住宅など二百九十四件をサイトに出品、入札が十一あり、五件が成約となった。
 十月三十日から十二月一日まで二回目のオークションを開催中で、今回は開催期間を一カ月間と一回目より長くして二十件以上の成約を目指している。
 オークション自体の知名度が低く、大きな成果を上げているとは言い難いのが現状。ただ、五社は「実験的な販売手法の一つ。これで(大きな)収益を上げようとは考えていない」(三井不動産販売の西渕史人リハウス業務部長)などと口をそろえる。五社にとって、オークションは不動産の売り方を変える試みという意味合いが強いためだ。
 幅広く買い手を募り高値で買い取ってもらうオークションは、売れ残った物件の魅力的な処分法ではある。不動産価格の下落が続く現在、売り手側には少しでも高く物件を売れればとの思惑が働く。
 ただ、五社連合もいまだ手探りの状態。オークションではどんな物件に引き合いが強いのか、価格設定のあり方はどうあるべきか――。オークションを重ねることでこうしたノウハウを蓄積。そのうえで、物件の対象地域を首都圏以外に広げたり、参加企業を中小の不動産仲介業者に広げたりすることを検討していく方針だ。
 もっとも、先行したIDUは大苦戦している。オークションへの出品件数や利用者数こそ横ばいだが、六―八月の落札物件の総額は計約十一億円と前年同期より九割以上も減った。「市場から幅広く買い手を募るオークションは本来、取引が成立しにくい不況期こそ利用価値が高まるはずなのだが……」。IDUの天野善彦営業本部長はこぼすが、落札額は二・四半期連続で前年実績を下回っている。
 一つには、昨年来の米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発する世界的な金融危機と景気後退を受け、買い手側の購買力や購買意欲が低下していることがある。
 さらに、オークション自体が不動産取引の不透明なイメージを払拭(ふっしょく)できていない面もある。従来は設備の補修状況などマイナス情報を隠して仲介するような業者が少なくなかったり、価格設定がいいかげんだったりして、買い手側の信頼を十分に得られていなかった。
 このため、大手五社は当面、オークションでは自社物件のみを取り扱うことで、買い手側から信頼を獲得することを第一に心掛けている。不動産価格下落の底が見えない中、オークションを不動産の新たな販売チャネルとして確立できるかどうか。カギは時間をかけて地道に利用者からの信頼を得ることにあるのかもしれない。(兼松雄一郎)


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