20090129 日本経済新聞 朝刊

貯蓄・ローン返済29%
 三月中旬にも支給が始まる定額給付金について、消費者の約六割が買い物やレジャーなどの消費に使うと考えていることが日本経済新聞社のインターネット調査でわかった。銀行口座への振り込み方式で支給されるにもかかわらず、「貯蓄・ローン返済など」に回す人は約三割にとどまる。
 調査は二十六、二十七日にNTTレゾナント(gooリサーチ)に依頼して実施。全国の二十代から六十代の消費者一千人の回答を集計した。
 給付金は二十七日に国会で成立した二〇〇八年度第二次補正予算の目玉施策。総額二兆円を、全国の市区町村を通じて、申請のあった家庭の銀行口座に振り込む仕組みだ。給付額は標準世帯(夫婦と子二人)で六万四千円。
 給付金の使い道を聞いたところ、五八%が消費に回すと回答した。内訳は日々の出費とは別の「旅行・レジャー、買い物など」の不要不急の消費に使うと答えた人が三一%あり、「日々の生活費の補てん」に充てるとの回答は二七%だった。
 具体的な使い道で最も多かったのは「食費」の二〇%。「旅行・レジャー」(一一%)、「家電製品」(七%)、「外食」(六%)が続いた。
 一九九九年に配られた「地域振興券」は、交付額(約六千二百億円)の六割強が貯蓄に回ったことが経済企画庁(当時)の調査でわかっている。今回の定額給付金では「貯蓄・ローン返済など」に充てようと考えている人は二九%にとどまる。このうち八割弱は「預貯金」すると回答し、住宅ローンなどの返済に充てる人も二割弱いる。株などの「投資の一部に充てる」は五%だった。
商品券の同時発行も 自治体、消費喚起へ工夫
 冷え込む一方の消費を刺激しようと、定額給付金の支給にあわせて、全国の自治体が工夫を凝らしている。
 鳥取市は鳥取商店街連合会などと共同で、購入価格より二〇%多く買い物ができるプレミアム(割増金)付き商品券を三月をめどに発行する。販売予定額は五億円で、六億円分の買い物ができる。割り増し分は市や商店街連合会などが負担する。原則市内での消費に限定する方針だ。北海道網走市、長野県塩尻市、福井県越前市、長崎県佐世保市なども同様の商品券発行を検討している。
 「定額給付金で未来につながるプロジェクトを実施します」と市民に寄付を呼びかけているのは大阪府箕面市。寄付金を経済対策などの財源に充てる計画で、「地元消費につながる」事業アイデアを募集している。
▼定額給付金 全国の市区町村が住民一人当たり一万二千円、六十五歳以上か十八歳以下の人には二万円を配る。政府が昨秋に打ち出した「生活対策」に盛り込んだ。当初は所得税などから一定額を差し引く定額減税を想定していたが、税金を納めていない人も支援対象となる給付金に変更した。財源を裏付ける予算関連法案の成立が必要なため、支給は三月中旬以降になる可能性が高い。

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20090129 日本経済新聞 夕刊

 投資信託の販売に力を入れる銀行が多いなかで、山陰合同銀行の頭取、古瀬誠(62)は一貫して預金にこだわってきた。銀行の手数料を稼ぐために投信を扱うという発想はない。「この地域は保守的な土地柄。無理にリスクを取らせて失敗すると、大事な顧客基盤を壊しかねない」
 投信はどうしても買いたいという顧客のための品ぞろえ。個人預金は二兆円を超えるのに、個人向けの投信販売残高は一千億円に満たない。
 かたくなな経営方針は結果的に顧客を守った。金融危機がきて大きな損失を被った顧客は、ほかの地域に比べて少なくて済んだ。
 山陰合同の地盤である島根、鳥取両県を合わせた面積は東京都の五倍弱。そこに約百三十万人が住んでいる。島根は高齢者人口の割合が全国一。地銀として地域への責任を考えると人口密度が低いからと金融サービスの質は落とせない。
 およそ五百五十台のATMを設けているが、一日百件の利用があればよく稼働している方だ。古瀬は「投資効率が悪いのは仕方ない。それでもちゃんとやっていける体制を整える必要がある」と考えてきた。
 目をつけたのが運用業務だ。産業基盤が弱いだけに融資には限界がある。そこで顧客にお金を預けてもらって、プロである銀行がリスクを取ってそれを運用する方針を明確にした。
 運用であげた収益でATM網などを整備して大都市並みの金融サービスを顧客に提供する。リスクを顧客に取らせ、手数料だけ稼ごうという多くの銀行の考え方とは正反対だ。
 ただ、運用での失敗は許されない。古瀬は「運用は銀行の本業」と位置づけ、自ら運用内容に目を光らせている。
 顧客から預かった資金を棄損させられないので、運用資金の七割を国債、一割強を地方債で運用し、信用リスクはほとんど取らない。
 一部実験的に手がけていた信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)関連で損失が出た。しかし二〇〇七年のうちに先行きの株式相場の下落を見越した株売りでカバーし痛手はほとんどなかった。
 健全性を示す自己資本比率は〇八年九月末で一四・九%と地方銀行でトップだ。預金を預けてもらう以上、健全経営は前提条件。運用を積極的に手がけるには、バッファーとしての厚い資本基盤が欠かせないとの考え方も背景にある。
 古瀬は一九六九年入行。ふそう銀行との合併などを手がけた。業務渉外部長、営業統括部長、総合企画部長などを経て、〇七年に頭取に就任した。
 力を入れているのは県と一体になった地域振興だ。県と協定を結び、地域の情報を取り込んだデータベースを作り、それを基に地元企業を支援する。「例えていえば、株式会社島根県の情報と金融を請け負っているようなものです」
 地域を考えたとき、「貯蓄から投資」は必ずしも万能ではない。危機の後、金融秩序をどう再構築するかのヒントが山陰合同にあった。=敬称略
(編集委員 太田康夫)

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20090129 日本経済新聞 夕刊

 介護保険の報酬体系が四月から改定される。減額が中心の過去の改定と違い、初めて三%の増額になる。各サービス事業者は昨年末に発表された新報酬をにらみ、事業計画見直しを急いでいる。
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 コムスン事件で明らかになった介護従事者の低賃金、離職者の急増を改善するのが今回の改定の狙い。当初「職員給与の二万円増」がうたわれ、厚生労働省が躍起になって否定した経緯もある。
 増額分は、サービスごとに専門職の割合などの基準に応じ、従来の介護報酬の単価に加算して事業者に支払う。同省は医療との連携や認知症ケアに重点を置いたという。その結果、サービスによって明暗が分かれた。
 加算の多さで目を引くのは老人保健施設の短期集中リハビリ。加算額を従来の四倍に引き上げるとともに、中重度の認知症高齢者や日帰りの利用者の場合も対象にした。これだけで「月に百万円前後の増収になる」と話す関東地方の施設もある。
 理学療法士、作業療法士などリハビリ職が二十分以上実施するもので、これら専門職への求人が熱を帯びそうだ。老健には夜勤職員を配置したり認知症情報を提供した場合の加算も新設された。
 特別養護老人ホームにも重度者対応や夜勤配置の加算を新設。多人数の通所介護に適用していた減算措置の撤廃も特養の収入増につながる。
 これら従来の大型施設に対して、介護保険制度の創設で登場した新規サービス事業者は「期待外れでとても給与増にならない」(川崎市の事業者など)と表情は暗い。
 認知症の切り札といわれて生まれたグループホームは、退去時相談や夜間ケア、緊急受け入れなど加算の種類は多いが「すぐに取得できるものはほとんどない」(茨城県の事業者)と不評だ。三年前にできた小規模多機能型居宅介護も、「極端に報酬が低い軽度者向けの引き上げを」という要望が通らなかった。
 都市部の事業者に対する人件費の加算も見直され、その結果「まさか減収になるとは」と驚く事業者がいる。横浜、大阪、神戸など主要都市圏にあるグループホーム事業者だ。都市部での高齢化率の急増とともに需要は高まるが、「事業意欲が衰える」と関係者は頭を抱える。
 特定非営利活動法人(NPO法人)や有限会社が地域密着の活動をしているのが訪問介護事業。「短時間サービスの基本単価が上がっただけでがっかり。総収入が一%しか増えないのでヘルパーの時給も上げられない」(栃木県のNPO法人)と、「二万円増」との落差に憤る。
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 厚労省が二〇〇三年にまとめた報告書『2015年の高齢者介護』では、「在宅サービス重視」「大規模施設ケアから小規模の個別ケアへの転換」を高らかにうたった。その路線とは逆方向の加算になったようだ。
 大規模施設に手厚い今回の改定は「介護保険以前への先祖返り」という厳しい見方が、当時の厚労省の担当者からも聞こえる。
(編集委員 浅川澄一)

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20090128 日本経済新聞 地方経済面

 世界同時不況が長野県内の企業経営や家計に暗い影を落とすなか、国内市場で稼ぐ内需型産業が健闘している。出費を抑えるため休日を自宅付近で過ごす「安近短」や、食事を家で済ませる「内食化」といった傾向が加速。円高に伴う原料安も追い風だ。現状では数少ない好調業種だけに、県内景気下支えの役割を期待する声は多い。
 長野市の長野南バイパス沿いで、書籍や文具を扱う「書籍館」と音楽・映像ソフトレンタルなどの「TSUTAYA館」を運営する蔦屋書店長野川中島店。二十二日木曜日の昼過ぎ。老若男女を問わず幅広い年齢層の来店客で込み合っていた。
 昨秋以降、一段と景気後退が進んだにもかかわらず、同店の客数は「一割強のペースで伸びた」と野嵜隆哉店長。出費を抑えるため余暇を家で過ごす人が増え、既存客のリピーター率が向上。昨年十一月の全面改装を機に教養や自己啓発の書籍、昔懐かしのテレビドラマなどを充実させたことが「シニア層を中心に顧客層の拡大にもつながった」(野嵜店長)。
 家族向けゲームセンター「アピナ」を郊外を中心に二十店展開する共和コーポレーション(長野市)。昨年四月以降、ガソリン高が響いて客足が前年を一〇%近く下回っていたが、「昨秋からブレーキがかかってきた」と宮本和彦社長。安近短志向を強める利用者が増えたためで、なかでも年末年始は「高齢者同士などのこれまでにない顔ぶれが目立った」。
 家計の内食化傾向を取り込んだ食品メーカーも好調だ。キノコ栽培大手のホクトは主力のブナシメジの販売が好調で、二〇〇九年三月期の純利益を二割増と見込む。
 経済的な食べ物として鍋料理に注目が集まっているうえ、カレー鍋など料理の種類が増えたことも寄与し、需要が拡大。さらに節約志向の強い消費者が「鍋の中で高価な肉を減らす半面、キノコを増やしている」(高藤富夫専務)という。この結果、昨年十二月のブナシメジの販売価格は前年を一七%上回った。
 ハムとソーセージが主力の信州ハム(上田市)は食品スーパー向けの低価格商品が好調で、外食産業からの国産ウインナーの受注も伸びている。昨年十―十二月の売り上げは前年比七%増え、円高による豚肉の輸入コストの低下も収益を押し上げた。ひかり味噌(下諏訪町)は「手作り感のある国産生みそが伸びている」といい、昨秋以降の売り上げは前年比五―一〇%増で推移した。
 景気悪化が刻々と進むいま、こうした内需型企業に景気のけん引役を求める声は高まっている。村井仁知事は日本経済新聞のインタビューで「内需拡大や円高で恩恵を受けている企業こそ積極投資に踏み切ってほしい」と語った。ホクトが一二年九月までに国内三カ所にブナシメジ工場を新設するなど、国内需要の拡大をにらんだ設備投資に乗り出す動きもある。
 ただ、内需型企業がおしなべて好調というわけではない。県内中堅みそメーカーは「大豆価格の上昇を見越し、今年夏までの大豆は〇七年十一月にまとめて購入した」といい、足元の円高や原料安の影響は全く受けていない。「景気後退のサービス業への影響はこれから本格化する」(共和コーポの宮本社長)と、個人消費の先行きを不安視する声も少なくない。
 内食化や安近短、原料安など、現在の景気後退局面が内需型企業に追い風なのは確かだが、この状況がいつまでも続く保証はない。景気が回復すれば、経済性や割安感だけで競争を勝ち抜くのは難しい。逆に景気悪化に加速が付けば、追い風がしぼむ可能性もある。好調な今こそ顧客ニーズを改めて見つめ直し、将来を見据えた“種まき”の戦略を採る必要もある。
(田島如生)

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20090128 日経産業新聞

 損害保険ジャパンは太陽光発電装置やヒートポンプ給湯機など、家庭からの二酸化炭素(CO2)の発生を削減する機器の購入資金を、優遇金利で融資する「リフォームローンecoプラン」の販売を始めた。通常金利から〇・三%割り引いた金利を適用し、住宅への省エネ機器の普及を促進する。
 家屋の省エネ性を高めるリフォームが融資対象となる。融資は一万円単位で実施し、上限は三百万円。百万円から三百万円の場合の金利は年三・六%、五十万円から九十九万円では三・九%になる。
 さらに金利優遇とは別に、融資額の〇・三%分を、生物多様性の再生・保全活動をする活動に寄付する。申し込みは損保ジャパン・クレジットのホームページから受け付ける。年間に三億円の融資を見込む。
 省エネリフォームと生物多様性の保全に取り組む団体への寄付を組み合わせた仕組みは国内金融機関で初めてという。

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