20081222 日本経済新聞 名古屋夕刊

 日本では高齢化が進むとともに、高齢者医療費の負担が国民全体に重くのしかかってきています。その対応策として、政府は二〇〇八年四月に後期高齢者医療制度(長寿医療制度)を始めました。しかし開始当初から批判や不満が続出しています。いったいどんな制度で何が問題なのでしょう。そして若い世代には、新制度はどんな影響があるのでしょうか。
 厚生労働省によると、七十五歳以上の人は約千三百万人、その医療費は約十一兆円にのぼり(〇六年度)、国民全体の医療費の三分の一を占めます。今後は高齢者の比率がさらに高まるため、高齢者の医療費が増え、現役世代の負担も際限なく増していきます。
 そこでこれまであった老人保健制度に代わり、七十五歳以上の人を対象とした独立した仕組みとして後期高齢者医療制度ができました。その柱は、保険料を負担する割合の見直しと、新しい後期高齢者向け医療サービス導入の二つです。
 老人保健制度は、財源の五割が国民健康保険と被用者保険からの拠出金でした。その中身は加入者の払った保険料などですが、高齢者の払ったものと現役世代が払ったものの区別はされていませんでした。
 新制度の創設に伴う負担割合見直しではこの二つを分けて、七十五歳以上の人が払う保険料と現役世代からの拠出金の割合を明確にしました(図A参照)。
 新しい高齢者向け医療サービスは、高齢者があまり必要がないのに病院に通ったり、複数の病院を利用したりすることで薬や検査が重複するといった医療費のムダを抑え後期高齢者の心身の特性にふさわしい医療を提供するのが目的です。かかりつけ医制度を設け、高齢者自身が選んだ担当医が、外来、入院、在宅診療を総合的に管理する仕組みなどがつくられました。
 では、後期高齢者医療制度の何が問題になっているのでしょうか。最も大きな批判を集めているのは保険料についてです。
 従来は、被用者保険に加入している夫や子どもに扶養されている人は、健康保険の保険料を払う必要がありませんでした。ところが後期高齢者医療制度では、原則として七十五歳以上の人すべてに保険料を納める義務があるため、新たに保険料を払わなければならない人が出てきました。
 一定額以上の年金を受給している人は年金から保険料が天引きされます。そうすると、これまで受けられた社会保険料控除が受けられなくなって、税金の負担が増えるケースがあることが問題になりました。そのためその後の見直しで、一定の条件を満たせば口座振替でも保険料を払えるようになりました。
 また保険料を一年滞納すると、病院の窓口でかかった医療費の全額を払わなければならず(あとで払い戻しを受ける)、一年半滞納すると医療給付が差し止めになるので、医療を受けられない高齢者が出てくることも考えられます。一方で、高齢者向けの新しい医療サービスは今のところあまり提供されていません。
 「七十五歳以上の人たちは新制度で恩恵を受けていないのに、負担だけが増える形となっている」と特定社会保険労務士の河内よしいさんは指摘します。
 保険料については、急激な負担増を避けるための軽減措置がとられていますが、制度そのものが複雑なのにそれが周知されなかったことや、事務手続きミスによる混乱、さらに「後期高齢者」という言葉に対する感情的な反発もあって、この制度が大きな批判にさらされているわけです。
 高齢者の医療費は、現役世代にも無関係ではありません。大きな影響があるのは前回取り上げたように、健康保険組合です。後期高齢者医療制度導入と同時に、健康保険組合は六十五歳から七十四歳までの前期高齢者の医療費も負担することになったため、財政の悪化から解散するところが出てきています。
 また今後さらに高齢者の医療費が増えた場合、結局は税金で負担せざるを得ず、国民全体の税負担が増える可能性があります。
 さらに「後期高齢者医療制度のさまざまな問題を目の当たりにした若い人たちが、将来への不安を募らせるといった精神面のデメリット」(河内さん)も懸念されます。
 後期高齢者医療制度が今後どのように見直され改善されていくのか、現役世代の人たちも注視していく必要があるでしょう。
(ファイナンシャルプランナー馬養 雅子)


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20081222 日本経済新聞 朝刊

 十二月四日にアイエヌジー生命保険が千葉市内で開いたセミナー。千葉銀行を通じて同社の変額年金を購入した約六十人の契約者が集まった。説明に立ったアイエヌジー生命の藤田通紀・金融法人営業企画推進部長は「ほとんどの人が保険会社が発送する運用報告書に目を通していない」と契約者に注意を呼びかけた。
 アイエヌジー生命は三カ月に一度、保険料の運用実績を示しているが、無関心な人が多いという。
 変額年金は契約時と運用期間中にコストがかかり、その分が運用のマイナスとなる。さらに最低保証の仕組みをとるため、保険料を下回らないように保守的な運用手法を採っている場合が多い。
 加入後は生保各社がウェブサイト上で開示している「ユニットプライス」で運用実績を確認できる。ユニットプライスは変額年金の時価を表し、投信の基準価格に相当。一部の変額年金は「一〇%値上がりしたら最低保証も一〇%上乗せする」などの条件を設けているが、実際に値上がりしているか事前にチェックした方がいいだろう。
 変額年金に限らないが、時価を確認する習慣は投資の基本。最低保証の仕組みがあっても、藤田氏は「三カ月に一回くらいは運用実績をチェックした方がいい」と指摘する。


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20081222 日本経済新聞 朝刊

 ファイナンシャルプランナーの稲毛由佳氏 株安で最低保証にかかるコストが収益を圧迫するなど、変額年金は保険会社にとっても辛い商品だ。変額年金が出始めた当初は最低保証の仕組みはなかったが、元本を守りたいという日本人のニーズが生み出した。最低保証は高いコストが運用のマイナスになるだけではない。運用利回りを保証しようとするあまり、値上がり益をとれない保守的な運用スタイルになりがちだ。全体的にメリットを感じにくいが、現金が余っていて死亡保険が足りない人や、相続税対策を考えている人には有効かもしれない。
 ファイナンシャルプランナーの内藤真弓氏 変額年金は銀行の定期預金が満期を迎えたときに勧められるケースが多い。変額年金のように運用の期間とスタイルが限定されている商品を資産運用の手段としてしまうのには危険がある。最低保証が魅力といっても、保証には国債への投資などほかの手段もある。最低保証にいろいろな条件をつけているケースもあり、全体的に分かりにくい商品が多い。高齢で現金を保険金にしたい人にだけ意味がある。値上がり分に課税されないといっても、そもそも値上がり益がとれるか疑問だ。


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20081222 日本経済新聞 朝刊

 景気後退局面に入り、家計には雇用不安の波が忍び寄り始めた。職の確保が最優先課題になる中で、個人消費の伸びは期待しにくくなってきたが、家計にお金を使う余地はないのか。家計の動きに詳しい第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストに二〇〇九年の展望を聞いた。
 ――家計はすでに萎縮しきっているのでは。
 「賃金が減るぐらいならいいが、職を失う不安に駆られだしたことはマイナスだ。これまで以上に生活防衛色が強まり、価格に敏感になる人が増えるだろう。〇九年度の実質国内総生産(GDP)ベースの個人消費は一九九七年度以来のマイナスになるおそれがある」
 ――〇九年は後退局面から抜け出せないとみる向きが多いようです。
 「うし年は経済が大きく悪化しがち。九七年は山一証券破綻とアジア金融危機、八五年はプラザ合意に伴う円高不況、七三年は第一次石油危機の影響が出た。来年は特需を誘うイベントもない谷間だ」
 ――団塊の世代ぐらいは消費や投資に前向きでいてほしいものです。
 「原油高に歯止めがかかり、これからはデフレが進む可能性がある。モノの値段が相対的に下がれば、雇用のすう勢と無縁の高齢層の財布のひもが緩むかもしれない。ただこの世代も株安や年金不安が直撃しており、多くは期待できない」
 「むしろバブルを経験した四十歳前後の『アラフォー』世代がデフレの恩恵で支出を増やす可能性がある。この層は比較的雇用も安定している」
 ――暗い一年になりそうですか。
 「そうとも言えない。お金に敏感になるので、節約につながる商品は売れる。電気釜は自炊する人の需要がある。家で自分でやるエステ商品も人気だ。環境への関心も高く、太陽光発電の導入費用を国が支援すれば一段と普及するだろう。既存の商品でも企業には商機の芽があるはずだ」
 「天候にも注目している。今年度は豪雨など異常気象に見舞われ、四―九月に実質GDPが三千億円程度減った可能性がある。外出を控え消費が減ったからだ。来年は例年通りに冬は寒く、夏は暑くなって、消費が上向いてほしい」
 今年は原油高が物価を押し上げた。永浜氏は来春にも家計は物価の落ち着きを実感できるという。しかし、未曽有の危機的な状態では効果も薄い。貯蓄に励む動きに拍車がかかりそうだ。(O)


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20081222 日本経済新聞 朝刊

 「老後の生活資金を少しでも増やせないか」――。そんな団塊世代のニーズをくみ取り、退職金などの受け皿として銀行や証券会社での販売を積み上げてきた変額年金保険。契約者が払い込んだ保険料分は戻ってくるという「最低保証」に安心感をおぼえ、契約した人も多いだろうが、株安で最低保証が外れる商品が出てきた。保険料分の最低保証といっても保証の種類や条件を細かく設定している商品もあり、注意が必要だ。保証にかかるコストも見逃せない。
 変額年金はひとことでいえば投資信託と生命保険を組み合わせた商品だ。契約者が払った保険料を株式や債券を組み入れた投信で運用するため、年金の受取額は運用実績によって異なる。一定の運用期間中に契約者が死亡した場合は、保険料分を死亡保険金として支払う。契約者が運用期間中に払う手数料は、保険にかかる費用と投信にかかる費用の二種類があるほか、契約時に販売手数料が必要な場合もある。
 生命保険会社は一九九〇年代後半から変額年金の販売を始めた。残高は〇八年三月末で十六兆円超。資金を集めた大きな理由は「最低保証」の仕組みだ。
 変額年金の最低保証は運用期間が終了したとき(年金の受け取りを開始するとき)に運用実績が払い込んだ保険料を下回っても、保険料分を埋め合わせて保証する。投信などに比べて値下がりのリスクを回避できるのが人気の理由だった。
 運用実績が元本を下回った分は保険会社が補てんするため、保険会社にとって最低保証の負担は大きい。負担分は契約者が払う手数料に上乗せするほか、最低保証に備える準備金を積んだり、不足分を埋め合わせるための「再保険」契約を別の保険会社と結んだりして対応している。
 それでも保険会社にとって最低保証の負担は重く、保証に細かな種類や条件を設けている保険会社がある。
 変額年金販売で最大手のハートフォード生命保険が〇七年二月から販売している「アダージオ3WIN」は、運用実績が保険料の八〇%を割り込むと運用を停止するという条件を設けている。世界的な金融危機による株安で、〇八年十月からこの条件を適用する契約者が出始め、十一月十二日時点で九〇%以上の契約者の運用を停止したという。
 運用を停止すると、契約者は保険料の八〇%を一括で受け取るか、十五年に分けて保険料分を年金として受け取るかの選択を迫られる。ハートフォードは「年金での受け取りを選んでいる契約者が多い」としている。
 マニュライフ生命保険が〇七年六月から販売する「びっくり箱」は複数のタイプの最低保証を設けている商品。投信の株式組み入れ比率が五〇%のタイプは保険料分を最低保証するが、十年の運用期間の場合、株式比率が七五%のタイプは九〇%しか保証しない。
 住友生命保険が〇八年七月から販売する「たのしみ世代」も種類によっては元本の九五%までしか保証しない。
 最低保証が足りない分は債券の組み入れ比率が大きく運用が安定的だったり、手数料が安いなどのメリットはある。ただ、資金の目減りを気にする人なら契約前に商品内容をチェックしておく必要があるだろう。
 変額年金の購入に当たっては費用のチェックが重要だ。最低保証と死亡保障とで保険の機能が付いている分、運用商品としては手数料も高い。投信と比較すると購入時の手数料が約一―三%割高なほか、運用期間中の手数料も一%前後高い場合が多い。死亡保険金は相続人一人当たり五百万円の非課税枠があるなど相続対策としてメリットもあるが、保障に見合うコストなのかを事前に確認した方がいいだろう。
 さらに運用期間中の途中解約にコストがかかることも知っておきたい。保険会社は預かったお金を長期で運用して利回りを稼ぐため、途中解約にはペナルティーを設けている。たとえば住友生命の「たのしみVAプラス(バランスプラン)」(運用期間十年・保険料一千万円)に〇七年五月一日に加入した場合、〇八年十月末時点の運用額は八百万円。運用実績が低下したからといって解約すると、八百万円のうち七百五十八万円しか戻ってこない。(高橋元気)


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