20081222 日本経済新聞 朝刊

 景気後退局面に入り、家計には雇用不安の波が忍び寄り始めた。職の確保が最優先課題になる中で、個人消費の伸びは期待しにくくなってきたが、家計にお金を使う余地はないのか。家計の動きに詳しい第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストに二〇〇九年の展望を聞いた。
 ――家計はすでに萎縮しきっているのでは。
 「賃金が減るぐらいならいいが、職を失う不安に駆られだしたことはマイナスだ。これまで以上に生活防衛色が強まり、価格に敏感になる人が増えるだろう。〇九年度の実質国内総生産(GDP)ベースの個人消費は一九九七年度以来のマイナスになるおそれがある」
 ――〇九年は後退局面から抜け出せないとみる向きが多いようです。
 「うし年は経済が大きく悪化しがち。九七年は山一証券破綻とアジア金融危機、八五年はプラザ合意に伴う円高不況、七三年は第一次石油危機の影響が出た。来年は特需を誘うイベントもない谷間だ」
 ――団塊の世代ぐらいは消費や投資に前向きでいてほしいものです。
 「原油高に歯止めがかかり、これからはデフレが進む可能性がある。モノの値段が相対的に下がれば、雇用のすう勢と無縁の高齢層の財布のひもが緩むかもしれない。ただこの世代も株安や年金不安が直撃しており、多くは期待できない」
 「むしろバブルを経験した四十歳前後の『アラフォー』世代がデフレの恩恵で支出を増やす可能性がある。この層は比較的雇用も安定している」
 ――暗い一年になりそうですか。
 「そうとも言えない。お金に敏感になるので、節約につながる商品は売れる。電気釜は自炊する人の需要がある。家で自分でやるエステ商品も人気だ。環境への関心も高く、太陽光発電の導入費用を国が支援すれば一段と普及するだろう。既存の商品でも企業には商機の芽があるはずだ」
 「天候にも注目している。今年度は豪雨など異常気象に見舞われ、四―九月に実質GDPが三千億円程度減った可能性がある。外出を控え消費が減ったからだ。来年は例年通りに冬は寒く、夏は暑くなって、消費が上向いてほしい」
 今年は原油高が物価を押し上げた。永浜氏は来春にも家計は物価の落ち着きを実感できるという。しかし、未曽有の危機的な状態では効果も薄い。貯蓄に励む動きに拍車がかかりそうだ。(O)


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