20081222 日本経済新聞 朝刊

 個人年金の一種で、一括や積み立てにより契約者が払い込んだ保険料を投資信託などで運用する。運用実績によって年金の受取額が変わるため、契約時に受取額が決まる定額年金と対比される。二〇〇八年九月末の残高は定額年金が七十二兆円で、変額年金が十七兆円。米国では変額年金の残高が百兆円を超えている。
 保険商品のため、死亡時には保険料相当の死亡保険金を受け取ることができる。運用実績が払い込んだ保険料を上回れば受取額が増えるが、下回れば基本的に受取額が減る。生保各社は運用実績が保険料分を下回った場合の最低保証の仕組みを採用している場合が多い。最低保証は運用期間中に手数料を上乗せする分、運用実績が悪いときに保険料分を保証する。
 〇二年十月に銀行窓口での販売が解禁になって以降、メガバンクや地方銀行が積極的に販売した。


-----------------------------------------------

20081222 日本経済新聞 朝刊

銀行・証券など業態別に取り組み 利用者の視点反映課題
 金融庁が金融商品を巡るトラブルから利用者を保護するため、裁判以外の紛争解決(ADR)機関設置を制度化する検討に乗り出した。銀行・証券・保険など業界の壁を越えた横断的な組織をつくるという当初の構想は後退。まずは業界ごとの自主的な取り組みを見守るという現状追認にとどまる見込みだ。議論開始から八年。利用者の視点に立った改革をどこまで徹底できるのか、道のりは遠い。
 「実現が難しいから一歩ずつやるというのではなく、最初からあるべき姿を追求していくべきだ」「最初から高い義務を課すと、(金融トラブルがもみ消されて)地下に潜ってしまう」――。今月三日に開いた金融審議会(首相の諮問機関)の合同部会。金融ADRの整備に向けた報告書案を詰める会合で、出席者らの意見は大きく割れた。
低コストのADR
 ADRは、裁判に比べて時間や費用をかけず、調停やあっせん、和解などの手段で紛争解決を目指す仕組み。二〇〇七年四月からADR促進法で一般的な枠組みが導入された。金融分野では、昨年九月に施行された金融商品取引法で認定投資者保護団体制度がスタート。金融庁が苦情解決を手掛ける団体を認定している。
 全国銀行協会や生命保険協会、日本損害保険協会など各業界団体は、顧客からの相談を受け付けたり、苦情・紛争の解決支援をしたりする窓口を設けている。〇七年度に金融関連の十八の業界窓口に寄せられた相談は約十六万四千四百件、苦情として扱われたのは三万千五百十八件あった。紛争まで発展したのは三百八十七件にすぎない。
 利用者からみると、業界団体による紛争解決は「認知度が低いうえ、業界寄りの対応をされるのではないかとの恐れがある」(金融オンブズネット代表の原早苗氏)という。また、銀行が投資信託や保険商品の窓口販売に乗り出すなど、販売チャネルが多様化。利用者がどこに相談や苦情を持ち込んだらいいか分かりにくいとの声もある。
 金融庁の金融サービス利用者相談室の場合、電話などで寄せられた案件を、該当する業界団体の窓口に振り分けているのが実情だ。金融機関と利用者という民間同士の争いに積極的には口をはさみにくいという側面もある。
 こうした点を踏まえ、消費者問題の専門家らは、各業界団体とは一定の距離を保つ業界横断的・包括的な組織の設立を訴える。受付窓口を一本化し、ワンストップで幅広い金融サービスの相談・あっせん業務を手がけられれば、利用者も使いやすい。
 これに対し、金融業界からは慎重論が上がっている。金融商品は普通預金などほとんどトラブルが発生しないものもあれば、保険金不払いや悪質な取り立てが社会問題となる分野もある。金融庁から認定されたADR機関を持つ銀行、保険といった業界もあれば、貸金業のように機関がない業界もある。「状況が違うものを一緒にするのは無理がある」という声は根強い。
 現在でも、相談所の賃料は各業界団体が支払い、あっせんに携わる弁護士や学識経験者らの人件費などはトラブルの当事者となった企業が負っている例が多い。銀行業界などは「横断的な組織だと、トラブルの多い他業界のコストまで面倒をみることになり、受け入れがたい」というのが本音のようだ。
 金融業界は、受付窓口だけ共通化するという手法にも懐疑的だ。「一般の消費者は、購入した商品に不満があれば、普通は購入した店舗を持つ企業に苦情を言いに行く」という見方が多い。共通の受付窓口を置く場合、あらゆる金融商品に精通し、苦情対応にも慣れた人材を用意する必要がある。
早期整備へ決議
 議論が平行線をたどるなか、金融庁もしびれを切らし始めた。八年前から議論を始め、昨年には利用者保護を徹底する金商法が完全施行されたにもかかわらず、安全網である金融トラブル処理の制度化は進んでいないためだ。〇八年六月の改正金商法の成立時には、ADRの早期整備が国会の付帯決議に盛り込まれた。
 金融庁は当初、年明け以降も審議会で議論を続けることを覚悟していたが、足元で米欧発の世界的な金融危機が深刻化。ぐずぐずしていては時機を逸すると判断し「現実に即した対応」(内藤純一総務企画局長)にかじを切り、今月三日から金融審で議論の取りまとめに入った。
 金融庁は当面、各業界にADR機関設置を原則義務付け、それを認定することで中立性・公正性を確保する考えだ。各金融機関には業界ADR機関の利用を求め、ADR機関の出した結果は尊重するよう義務づける。また、金商法の認定投資者保護団体は元本割れの恐れのある投資性金融商品のみを紛争解決の対象としていることから、預金や死亡保障の生命保険、住宅ローンなども幅広く取り扱えるように法改正する方針だ。
 業界別ADR機関のしくみでは、いずれの業界団体にも属さないゆうちょ銀行や、ADRが未整備の業界への対応といった問題が残る。こうした金融機関には個別の指導・監督により、他の業界機関の活用を促す。横断的・包括的なADR機関の設立については将来的な課題と位置づけ、今後の展開を見守る。
 ADRはトラブル解決にかかる費用が相対的に安く、公正かつ短期間で解決できる利点がある。その利点を十分に引き出せるよう、今後も関係者が知恵を絞っていかなければ、金融ADRの制度自体が形骸化しかねない。(安川壮一)


-----------------------------------------------

20081222 日本経済新聞 朝刊

民間では一般的でなく
 社会保険庁の後継組織として二〇一〇年一月に発足する日本年金機構の職員手当に関し、同庁が転居を伴う転勤者を対象に「広域異動手当」の支給を検討していることが分かった。民間企業では一般的でないうえ、異動先地域の民間企業との賃金水準差を埋めるための「地域手当」と二重取りになる可能性もある。
 国家公務員の給与のあり方を定める給与法によると、六十キロメートル以上異動すると広域異動手当が支給されるが、地域手当の対象地域と重複する場合は、地域手当を優先して払う規定となっている。
 ただ「非公務員型の公法人」という組織形態の日本年金機構は同法には拘束されず、社保庁は機構で両手当の調整はしない方向で検討中。有識者による機構設立委員会では「手当の併給だ」などの批判が出ており、広域異動手当の即時廃止も視野に是正策について結論を出す方針だ。
 社保庁が〇七年度に支給した地域手当は約三十九億円、広域異動手当は約一億円。同庁は「機構では職員の全国異動が原則」として、広域異動手当の意義を主張。発足後五年間の措置とするなどの妥協案を模索している。


-----------------------------------------------

20081222 日本経済新聞 朝刊

金融危機で海外投資家慎重 人気銘柄追加増やす
 財務省が二〇〇九年度に市場で発行する国債が四年ぶりに増加する。今年度の当初計画に比べて発行額を八兆二千億円増やす計画。日本経済の減速に伴い税収が大幅に落ち込む一方、景気下支えのための財政支出は膨らんでおり、財源を国債増発に頼らざるを得ないためだ。世界的な金融危機の影響で海外投資家が資金を引き揚げる中で、安定的に国債を市場で消化させるため、国債管理政策を担う財務省は難しいかじ取りを迫られる。
 ■4年ぶりの増加 財務省がまとめた〇九年度の国債発行計画では、あらかじめ入札の頻度や金額を定めて発行するカレンダーベースの市中発行額は百十三兆三千億円。今年度当初計画に比べ八兆二千億円増やした。増加は四年ぶり。来年度予算で財源を確保するため、新規国債を今年度当初予算より七兆九千四百六十億円増発し、三十三兆二千九百四十億円とするのが主因。個人向け国債の販売不振で、市場で消化しなければならない国債が増えることも響く。
 ただ市場での機関投資家などによる消化にも不透明感が漂う。例えば、世界的な金融危機に伴う海外投資家の投資引き揚げなどを背景に需要が低迷し、価格が急落した物価連動国債や変動利付国債。財務省は二月に予定していた入札を中止、年度内の発行を見送ることを正式に決めた。
 今年度当初の計画では物価連動債と変動利付債であわせて五兆四千億円を調達する予定だったが、実際は三兆三千億円少ない二兆一千億円どまり。来年度計画ではあわせて六千億円の発行を見込むが、「市場の状況によっては取りやめる」とも表明した。
 しわ寄せは需要が比較的底堅い超長期債(二十年債―四十年債)や中短期債(一年債―五年債)に向かう。超長期債は今年度当初計画より二兆二千億円増発。中短期債も十兆八千億円増やす。
 ■日銀買い入れに期待 市場では「生命保険会社や銀行などの需要は底堅く、需給が大きく崩れる可能性は低い」(末沢豪謙・大和証券SMBCチーフストラテジスト)との受け止めが大勢。ただ過度に市場に負荷がかかれば、金利上昇(国債価格は低下)にもつながりかねない。
 財務省は超長期債や中短期債の増発圧力を抑えるため、市場で人気の高い銘柄を選んで追加発行する「流動性供給入札」を今年度当初計画に比べ二兆四千億円増やすなど対応に追われる。
 日銀も十九日の金融政策決定会合で、資金供給拡大の一環として金融機関からの長期国債の買い入れを増額。これまでの月一兆二千億円を同一兆四千億円に引き上げた。新光証券の三浦哲也氏は「年間の買い入れ額は国債の市中発行額全体の約一五%に達する。債券市場の需給は市場参加者が想定したほどは悪化しないだろう」とみる。
 ■個人向け3年物準備 ただ、景気低迷は長引く公算も大きい。一〇年度予算でさらに国債増発を迫られる懸念もあるため、財務省は安定消化に向けた「受け皿」の立て直しも急ぐ。
 個人向け国債では販売テコ入れのため、来年度後半にも新商品の「固定金利三年物」を投入する方向で準備に入った。満期までの期間が短い商品で新たな需要を掘り起こす。物価連動国債については、元本保証も視野に入れた商品見直しに着手する。


-----------------------------------------------

20081222 日本経済新聞 夕刊

 日本では高齢化が進むとともに、高齢者医療費の負担が国民全体に重くのしかかってきています。その対応策として、政府は二〇〇八年四月に後期高齢者医療制度(長寿医療制度)を始めました。しかし開始当初から批判や不満が続出しています。いったいどんな制度で何が問題なのでしょう。そして若い世代には、新制度はどんな影響があるのでしょうか。
 厚生労働省によると、七十五歳以上の人は約千三百万人、その医療費は約十一兆円にのぼり(〇六年度)、国民全体の医療費の三分の一を占めます。今後は高齢者の比率がさらに高まるため、高齢者の医療費が増え、現役世代の負担も際限なく増していきます。
 そこでこれまであった老人保健制度に代わり、七十五歳以上の人を対象とした独立した仕組みとして後期高齢者医療制度ができました。その柱は、保険料を負担する割合の見直しと、新しい後期高齢者向け医療サービス導入の二つです。
 老人保健制度は、財源の五割が国民健康保険と被用者保険からの拠出金でした。その中身は加入者の払った保険料などですが、高齢者の払ったものと現役世代が払ったものの区別はされていませんでした。
 新制度の創設に伴う負担割合見直しではこの二つを分けて、七十五歳以上の人が払う保険料と現役世代からの拠出金の割合を明確にしました(図A参照)。
 新しい高齢者向け医療サービスは、高齢者があまり必要がないのに病院に通ったり、複数の病院を利用したりすることで薬や検査が重複するといった医療費のムダを抑え後期高齢者の心身の特性にふさわしい医療を提供するのが目的です。かかりつけ医制度を設け、高齢者自身が選んだ担当医が、外来、入院、在宅診療を総合的に管理する仕組みなどがつくられました。
 では、後期高齢者医療制度の何が問題になっているのでしょうか。最も大きな批判を集めているのは保険料についてです。
 従来は、被用者保険に加入している夫や子どもに扶養されている人は、健康保険の保険料を払う必要がありませんでした。ところが後期高齢者医療制度では、原則として七十五歳以上の人すべてに保険料を納める義務があるため、新たに保険料を払わなければならない人が出てきました。
 一定額以上の年金を受給している人は年金から保険料が天引きされます。そうすると、これまで受けられた社会保険料控除が受けられなくなって、税金の負担が増えるケースがあることが問題になりました。そのためその後の見直しで、一定の条件を満たせば口座振替でも保険料を払えるようになりました。
 また保険料を一年滞納すると、病院の窓口でかかった医療費の全額を払わなければならず(あとで払い戻しを受ける)、一年半滞納すると医療給付が差し止めになるので、医療を受けられない高齢者が出てくることも考えられます。一方で、高齢者向けの新しい医療サービスは今のところあまり提供されていません。
 「七十五歳以上の人たちは新制度で恩恵を受けていないのに、負担だけが増える形となっている」と特定社会保険労務士の河内よしいさんは指摘します。
 保険料については、急激な負担増を避けるための軽減措置がとられていますが、制度そのものが複雑なのにそれが周知されなかったことや、事務手続きミスによる混乱、さらに「後期高齢者」という言葉に対する感情的な反発もあって、この制度が大きな批判にさらされているわけです。
 高齢者の医療費は、現役世代にも無関係ではありません。大きな影響があるのは前回取り上げたように、健康保険組合です。後期高齢者医療制度導入と同時に、健康保険組合は六十五歳から七十四歳までの前期高齢者の医療費も負担することになったため、財政の悪化から解散するところが出てきています。
 また今後さらに高齢者の医療費が増えた場合、結局は税金で負担せざるを得ず、国民全体の税負担が増える可能性があります。
 さらに「後期高齢者医療制度のさまざまな問題を目の当たりにした若い人たちが、将来への不安を募らせるといった精神面のデメリット」(河内さん)も懸念されます。
 後期高齢者医療制度が今後どのように見直され改善されていくのか、現役世代の人たちも注視していく必要があるでしょう。
(ファイナンシャルプランナー馬養 雅子)


-----------------------------------------------