20081222 日本経済新聞 朝刊

金融危機で海外投資家慎重 人気銘柄追加増やす
 財務省が二〇〇九年度に市場で発行する国債が四年ぶりに増加する。今年度の当初計画に比べて発行額を八兆二千億円増やす計画。日本経済の減速に伴い税収が大幅に落ち込む一方、景気下支えのための財政支出は膨らんでおり、財源を国債増発に頼らざるを得ないためだ。世界的な金融危機の影響で海外投資家が資金を引き揚げる中で、安定的に国債を市場で消化させるため、国債管理政策を担う財務省は難しいかじ取りを迫られる。
 ■4年ぶりの増加 財務省がまとめた〇九年度の国債発行計画では、あらかじめ入札の頻度や金額を定めて発行するカレンダーベースの市中発行額は百十三兆三千億円。今年度当初計画に比べ八兆二千億円増やした。増加は四年ぶり。来年度予算で財源を確保するため、新規国債を今年度当初予算より七兆九千四百六十億円増発し、三十三兆二千九百四十億円とするのが主因。個人向け国債の販売不振で、市場で消化しなければならない国債が増えることも響く。
 ただ市場での機関投資家などによる消化にも不透明感が漂う。例えば、世界的な金融危機に伴う海外投資家の投資引き揚げなどを背景に需要が低迷し、価格が急落した物価連動国債や変動利付国債。財務省は二月に予定していた入札を中止、年度内の発行を見送ることを正式に決めた。
 今年度当初の計画では物価連動債と変動利付債であわせて五兆四千億円を調達する予定だったが、実際は三兆三千億円少ない二兆一千億円どまり。来年度計画ではあわせて六千億円の発行を見込むが、「市場の状況によっては取りやめる」とも表明した。
 しわ寄せは需要が比較的底堅い超長期債(二十年債―四十年債)や中短期債(一年債―五年債)に向かう。超長期債は今年度当初計画より二兆二千億円増発。中短期債も十兆八千億円増やす。
 ■日銀買い入れに期待 市場では「生命保険会社や銀行などの需要は底堅く、需給が大きく崩れる可能性は低い」(末沢豪謙・大和証券SMBCチーフストラテジスト)との受け止めが大勢。ただ過度に市場に負荷がかかれば、金利上昇(国債価格は低下)にもつながりかねない。
 財務省は超長期債や中短期債の増発圧力を抑えるため、市場で人気の高い銘柄を選んで追加発行する「流動性供給入札」を今年度当初計画に比べ二兆四千億円増やすなど対応に追われる。
 日銀も十九日の金融政策決定会合で、資金供給拡大の一環として金融機関からの長期国債の買い入れを増額。これまでの月一兆二千億円を同一兆四千億円に引き上げた。新光証券の三浦哲也氏は「年間の買い入れ額は国債の市中発行額全体の約一五%に達する。債券市場の需給は市場参加者が想定したほどは悪化しないだろう」とみる。
 ■個人向け3年物準備 ただ、景気低迷は長引く公算も大きい。一〇年度予算でさらに国債増発を迫られる懸念もあるため、財務省は安定消化に向けた「受け皿」の立て直しも急ぐ。
 個人向け国債では販売テコ入れのため、来年度後半にも新商品の「固定金利三年物」を投入する方向で準備に入った。満期までの期間が短い商品で新たな需要を掘り起こす。物価連動国債については、元本保証も視野に入れた商品見直しに着手する。


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