20081222 日本経済新聞 朝刊
銀行・証券など業態別に取り組み 利用者の視点反映課題
金融庁が金融商品を巡るトラブルから利用者を保護するため、裁判以外の紛争解決(ADR)機関設置を制度化する検討に乗り出した。銀行・証券・保険など業界の壁を越えた横断的な組織をつくるという当初の構想は後退。まずは業界ごとの自主的な取り組みを見守るという現状追認にとどまる見込みだ。議論開始から八年。利用者の視点に立った改革をどこまで徹底できるのか、道のりは遠い。
「実現が難しいから一歩ずつやるというのではなく、最初からあるべき姿を追求していくべきだ」「最初から高い義務を課すと、(金融トラブルがもみ消されて)地下に潜ってしまう」――。今月三日に開いた金融審議会(首相の諮問機関)の合同部会。金融ADRの整備に向けた報告書案を詰める会合で、出席者らの意見は大きく割れた。
低コストのADR
ADRは、裁判に比べて時間や費用をかけず、調停やあっせん、和解などの手段で紛争解決を目指す仕組み。二〇〇七年四月からADR促進法で一般的な枠組みが導入された。金融分野では、昨年九月に施行された金融商品取引法で認定投資者保護団体制度がスタート。金融庁が苦情解決を手掛ける団体を認定している。
全国銀行協会や生命保険協会、日本損害保険協会など各業界団体は、顧客からの相談を受け付けたり、苦情・紛争の解決支援をしたりする窓口を設けている。〇七年度に金融関連の十八の業界窓口に寄せられた相談は約十六万四千四百件、苦情として扱われたのは三万千五百十八件あった。紛争まで発展したのは三百八十七件にすぎない。
利用者からみると、業界団体による紛争解決は「認知度が低いうえ、業界寄りの対応をされるのではないかとの恐れがある」(金融オンブズネット代表の原早苗氏)という。また、銀行が投資信託や保険商品の窓口販売に乗り出すなど、販売チャネルが多様化。利用者がどこに相談や苦情を持ち込んだらいいか分かりにくいとの声もある。
金融庁の金融サービス利用者相談室の場合、電話などで寄せられた案件を、該当する業界団体の窓口に振り分けているのが実情だ。金融機関と利用者という民間同士の争いに積極的には口をはさみにくいという側面もある。
こうした点を踏まえ、消費者問題の専門家らは、各業界団体とは一定の距離を保つ業界横断的・包括的な組織の設立を訴える。受付窓口を一本化し、ワンストップで幅広い金融サービスの相談・あっせん業務を手がけられれば、利用者も使いやすい。
これに対し、金融業界からは慎重論が上がっている。金融商品は普通預金などほとんどトラブルが発生しないものもあれば、保険金不払いや悪質な取り立てが社会問題となる分野もある。金融庁から認定されたADR機関を持つ銀行、保険といった業界もあれば、貸金業のように機関がない業界もある。「状況が違うものを一緒にするのは無理がある」という声は根強い。
現在でも、相談所の賃料は各業界団体が支払い、あっせんに携わる弁護士や学識経験者らの人件費などはトラブルの当事者となった企業が負っている例が多い。銀行業界などは「横断的な組織だと、トラブルの多い他業界のコストまで面倒をみることになり、受け入れがたい」というのが本音のようだ。
金融業界は、受付窓口だけ共通化するという手法にも懐疑的だ。「一般の消費者は、購入した商品に不満があれば、普通は購入した店舗を持つ企業に苦情を言いに行く」という見方が多い。共通の受付窓口を置く場合、あらゆる金融商品に精通し、苦情対応にも慣れた人材を用意する必要がある。
早期整備へ決議
議論が平行線をたどるなか、金融庁もしびれを切らし始めた。八年前から議論を始め、昨年には利用者保護を徹底する金商法が完全施行されたにもかかわらず、安全網である金融トラブル処理の制度化は進んでいないためだ。〇八年六月の改正金商法の成立時には、ADRの早期整備が国会の付帯決議に盛り込まれた。
金融庁は当初、年明け以降も審議会で議論を続けることを覚悟していたが、足元で米欧発の世界的な金融危機が深刻化。ぐずぐずしていては時機を逸すると判断し「現実に即した対応」(内藤純一総務企画局長)にかじを切り、今月三日から金融審で議論の取りまとめに入った。
金融庁は当面、各業界にADR機関設置を原則義務付け、それを認定することで中立性・公正性を確保する考えだ。各金融機関には業界ADR機関の利用を求め、ADR機関の出した結果は尊重するよう義務づける。また、金商法の認定投資者保護団体は元本割れの恐れのある投資性金融商品のみを紛争解決の対象としていることから、預金や死亡保障の生命保険、住宅ローンなども幅広く取り扱えるように法改正する方針だ。
業界別ADR機関のしくみでは、いずれの業界団体にも属さないゆうちょ銀行や、ADRが未整備の業界への対応といった問題が残る。こうした金融機関には個別の指導・監督により、他の業界機関の活用を促す。横断的・包括的なADR機関の設立については将来的な課題と位置づけ、今後の展開を見守る。
ADRはトラブル解決にかかる費用が相対的に安く、公正かつ短期間で解決できる利点がある。その利点を十分に引き出せるよう、今後も関係者が知恵を絞っていかなければ、金融ADRの制度自体が形骸化しかねない。(安川壮一)
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