20090106 日本経済新聞 地方経済面

 栃木県の福田富一知事は新年にあたって日本経済新聞のインタビューに応じた。窮迫する県財政の健全化に向け「四月以降できるだけ早い時期に具体的なプログラムを示したい」と発言。プログラムに県職員の給与カットを盛り込むことを念頭に、知事や副知事ら特別職の報酬について「年度内に削減の方向付けはしないといけない」と述べ、先行して実施する考えを示した。
 プログラムで定める改革実施期間に関しては「三―五年の見通しの中で取り組めるものを盛り込む」と語った。県議の報酬をめぐっては「議会で決めることになる」として明言は避けたものの、特別職の報酬削減の方針が定まった段階で、県議にも同様の措置を行うよう促す考えも示した。
 県内経済の今後については「回復には時間がかかる」との見通しを示した。景気の減速基調が強まる中で、県税収入の落ち込みは避けられないとの認識を表明。〇九年度の県予算編成は「〇八年度の一般会計当初予算規模を上回るのは難しい」と述べ、緊縮型で臨まざるを得ないとの考えを示した。そのうえで、県経済の活性化に向けては「農商工連携の加速がカギを握る」と述べた。



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20090106 日本経済新聞 名古屋朝刊

 米国発の金融危機に端を発した日本の景気後退の影響が、中部地方の大学生や高校生にも及んできた。親の経済的理由を背景に、授業料遅滞者が相次ぎ、遺児向けの募金活動も苦戦が続く。一方で、奨学金など支援策には関心がじわり上昇。内定取り消しなど就職戦線の厳しさに加え、学費や入学金の確保でさえ四苦八苦の状況に、不安や懸念の声が強い。
 ▼自宅に督促状
 十二月二十二日までに授業料を納めてください――。愛知学院大学(愛知県日進市)は昨年十二月上旬、後期授業料を滞納する学生の自宅に、こんな督促状を送った。滞納者は四百十二人。二〇〇七年の同時期に比べ、九十人余り増えた。同大学生課は「景気後退の影響が大きい。期限までに未納であれば、除籍になってしまう」と心配する。
 三重大学(津市)でも〇七年より九人多い百二十八人が滞納。督促状で納入を促している。
 高校生の状況は深刻だ。愛知県私立学校教職員組合連合(名古屋市)によると、県内の私立高校二十七校で計約三百五十人が学費を三カ月以上、滞納。一校当たりでは〇六年の四人から十三人に増えたほか、通えなくなる生徒も出ている。
 名古屋市内のある私立高校では昨年夏、三年生が中退。父親の会社が倒産し、アルバイトで生計を助けながら、大学進学を目指すという。同連合は「ほとんどが親の経済的な理由。行政による助成が必要」と分析する。
 ▼増える申請者
 「家計が苦しい」。岐阜大学(岐阜市)には昨年十一月から、臨時の奨学金募集に関する相談が出始めた。独立行政法人「日本学生支援機構」(東京)が全国の大学を窓口に、奨学金の受け付けをする。景気後退の影響で、親の失業や破産した学生が対象で、岐阜大では昨年末現在、学生六人が申請の手続きを開始。「現在の経済状況を反映している」(同大担当者)という。
 愛知大学(愛知県豊橋市)にも学生や家族らから、奨学金や授業料に関する相談が増えているという。同機構は「昨秋ごろから相談者が出てきて、今後さらに申請者は増えていくだろう」と予測する。
 ▼善意の足引っ張る
 事故や病気などで親を亡くした高校生や大学生らの進学を支援する「あしなが学生募金」が大幅に減少している。
 名古屋市など中部三県では昨年十月、街頭での募金活動を展開。募金額の合計は春に比べ、約三割減の約千百万円にとどまり、「景気後退のあおりを受け、募金する側の財布のひもが固くなっている」(同募金事務局)のが実感だ。
 募金は、遺児に奨学金を貸与する「あしなが育英会」(東京)に寄付されるだけに、その影響は少なくない。
 中学二年の時、父親を病気で亡くした東海学園大二年の木庭俊一さん(20)は「不景気になり、遺児のつらさを理解してくれるという期待がある半面、自分のことで精いっぱいになり、募金が厳しくなるのでは」と分析。「遺児の境遇に目を向け、少しでも協力してほしい」と訴える。



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20090106 日本経済新聞 朝刊

「レモン」とその証券化
 今回の金融危機の根底にあるのがジョージ・アカロフの「レモン」の問題だというと、一体何のことかと思われる読者もあろうが、ここでいうレモンとは、英語で使われる欠陥品の意味である。アカロフは過去に事故を起こした欠陥車の売買の例を使って、売り手が持つ情報と買い手が持つ情報の質が異なるという「情報の非対称性」が市場経済に深刻な失敗をもたらすことを証明したのである。
 なぜそれが深刻な問題になるかというと、要点はこういうことである。中古車の販売市場では、事故車であろうがなかろうが、きれいに整備されて並べられているから、仲介した売り手は事故車であることを知っていても、買い手にはその判断がつかない。そのため多少安い価格のついた事故車(レモン)が売れ、良質の車の方が売れ残るという「逆淘汰」が起こることになる。つまり、悪貨が良貨を駆逐する、逆の選別現象によって市場は劣化し、それが極端になれば市場は崩壊するという論理である。
 「サブプライムローン」とよばれる住宅ローン問題から始まった今回の金融危機も、もとはといえば、この「レモン問題」に端を発し、それが何重にも重なって生まれたものである。「プライム」と呼ばれる優良顧客よりも信用度の低い「サブ」の層に、どの程度まで住宅ローンの金利支払い能力や元本の返済不履行の可能性があるのか――そうした層のレモン化の程度は、実際の判定が難しい。
 また、貸し手がそのリスクを分散しようとして、債権を小口に分割して証券化し、株式の有価証券と同じように広く販売すれば、どこにリスクが散らばったのかが分からなくなる。スタンフォード大学教授のジョン・マクミランは『市場を創る』という名著で、市場がうまく機能するかどうかは、設計の細部にあるとし、「神も悪魔も共に細部に宿る」と警告しているが、今回の金融危機で「悪魔」が宿ったのは、今述べたリスクを切り分けて証券化した際の細部にあったのである。
 他方、神も宿らなかったわけではない。低所得者への住宅ローンによって、米国経済を事実上支えている移民や低所得者も家を持てるようになった。これは米国社会にとって、その局面では福音だったであろう。
 しかし、いったん資産に対する融資とそのリスクとを切り離すという設計ができると、リスクは瞬時に世界の金融機関に分散し、大規模な投資銀行の倒産にまで、見えざる悪魔の手が及ぶことになったのである。



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20090106 日本経済新聞 夕刊

 野村不動産ホールディングス(HD)の株価が持ち直している。オフィス空室率の上昇傾向を受け、特に昨年十一月の下げがきつかったが、年明け五日の終値は千七百八十七円と、十一月安値(千八十七円)より六割強高い水準。東芝不動産の買収効果や、マンション不況からの早期立ち直り期待が背景にある。
 野村不HDは昨年末、東芝不の買収で今三月期に約二十億円の営業利益の改善効果があると発表した。今期営業利益は東芝不を連結する前の段階で前期比四%減の見通しだが、押し上げ効果が期待される。
 「マンション不況からの持ち直しを期待した買いも一部で入っている」(野村証券の福島大輔シニアアナリスト)。
 マンション分譲はビル賃貸と比べ、落ち込みも早いが立ち直りも早いとされる。マンション販売は住宅ローン減税などの政策効果が今後出るとの見方があるが、マンション分譲専業は昨年、新興勢などの倒産が相次いだ。そこでマンション事業を展開する大手不動産株に資金が向かった面もある。
 十一月安値からの上昇率は三菱地所や住友不動産が約五割で、野村不HDの反発は大きい。利益に占めるビル賃貸の割合が五割を超える菱地所などに対し、野村不HDは一割強と小さいことが背景だ。もっとも景気は悪化傾向でマンション分譲の先行きも不透明。株価も予想しにくい状況が続く。



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20090106 日本経済新聞 朝刊

公社・三セク 2兆8500億円 一段の改革必死に
 地方自治体がいずれ負担しなければならない実質的な債務の全容が判明した。地方債残高など自治体が抱える借金は約二百兆円とされていたが、これに加え退職手当の支払見込み額が二十五兆円に上るなど、隠れた債務が総額で三十兆円に達していた。財政の健全性を判定する「将来負担比率」と呼ばれる指標の中身を日本経済新聞が分析した。これまで明らかになっていなかった債務が判明したことで、自治体側は一段の行財政改革を迫られそうだ。(将来負担比率は3面「きょうのことば」参照)
 将来負担比率は二〇〇八年に地方財政健全化法が一部施行されたことに伴い導入され、総務省が昨年九月に全国の自治体の数値を公表した。自治体が将来負担する債務はこれまで、借金に当たる地方債の残高などが中心だった。同比率の導入に伴い総務省は退職手当の支払見込額なども、自治体の債務であることを明確にした。
 比率算出の基となったデータを分析したところ、各自治体の退職手当の支払見込み額(〇七年度末時点)は、東京都の一兆四千六百億円を筆頭に、大阪府が九千百億円、神奈川県が八千百億円など五十二団体で千億円を超えていた。
 都道府県や政令指定都市はすでに貸借対照表を作成しており、将来支払うべき退職給付債務を把握している。だが、市町村では初めて判明したところが多い。今回は全職員が年度末に自己都合で退職する前提で計算している。定年まで勤めれば支払額はさらに膨らむ。
 地方公社や第三セクターの借金のうち、自治体が肩代わりを迫られそうな額も総額で二兆八千五百億円あった。横浜市の負担が三千三百億円で最も多く、六十団体で百億円を超えていた。総務省は自治体の負担額算定に当たって、損失補償をしている三セクの損益や純資産額から経営状況を五段階に分類、補償額の一〇―九〇%以上を負担するとみなして計上するよう求めていた。
 ゴミ処理や病院といった行政サービスを複数の自治体が共同でこなす一部事務組合などに対する負担見込み額も二兆二千八百億円に上った。
 こうした隠れた債務は総額三十兆円を超える。自治体がいざというときのために蓄えている基金(約十六兆円)の二倍近くあることが判明したことで、自治体は業務の民間委託や、職員削減などの行財政改革を一段と迫られるのは必至だ。透明性を向上させるため、自治体の会計制度を民間企業並みに整備することが改めて求められそうだ。
 ▼隠れ債務 地方の借金について総務省は約二百兆円と説明してきた。しかし、ここに含まれるのは一般会計等の地方債残高、公営企業債のうち一般会計で負担すべき額のほか、交付税特会の借入金のうちの地方負担分まで。退職手当の支払見込み額などは、その実態も明らかにはなっていなかった。国もかつては特殊法人の借り入れや年金債務などが「隠れ債務」と指摘されていたが、貸借対照表の作成などで債務の実態はほぼ明らかになった。



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