20090106 日本経済新聞 朝刊

公社・三セク 2兆8500億円 一段の改革必死に
 地方自治体がいずれ負担しなければならない実質的な債務の全容が判明した。地方債残高など自治体が抱える借金は約二百兆円とされていたが、これに加え退職手当の支払見込み額が二十五兆円に上るなど、隠れた債務が総額で三十兆円に達していた。財政の健全性を判定する「将来負担比率」と呼ばれる指標の中身を日本経済新聞が分析した。これまで明らかになっていなかった債務が判明したことで、自治体側は一段の行財政改革を迫られそうだ。(将来負担比率は3面「きょうのことば」参照)
 将来負担比率は二〇〇八年に地方財政健全化法が一部施行されたことに伴い導入され、総務省が昨年九月に全国の自治体の数値を公表した。自治体が将来負担する債務はこれまで、借金に当たる地方債の残高などが中心だった。同比率の導入に伴い総務省は退職手当の支払見込額なども、自治体の債務であることを明確にした。
 比率算出の基となったデータを分析したところ、各自治体の退職手当の支払見込み額(〇七年度末時点)は、東京都の一兆四千六百億円を筆頭に、大阪府が九千百億円、神奈川県が八千百億円など五十二団体で千億円を超えていた。
 都道府県や政令指定都市はすでに貸借対照表を作成しており、将来支払うべき退職給付債務を把握している。だが、市町村では初めて判明したところが多い。今回は全職員が年度末に自己都合で退職する前提で計算している。定年まで勤めれば支払額はさらに膨らむ。
 地方公社や第三セクターの借金のうち、自治体が肩代わりを迫られそうな額も総額で二兆八千五百億円あった。横浜市の負担が三千三百億円で最も多く、六十団体で百億円を超えていた。総務省は自治体の負担額算定に当たって、損失補償をしている三セクの損益や純資産額から経営状況を五段階に分類、補償額の一〇―九〇%以上を負担するとみなして計上するよう求めていた。
 ゴミ処理や病院といった行政サービスを複数の自治体が共同でこなす一部事務組合などに対する負担見込み額も二兆二千八百億円に上った。
 こうした隠れた債務は総額三十兆円を超える。自治体がいざというときのために蓄えている基金(約十六兆円)の二倍近くあることが判明したことで、自治体は業務の民間委託や、職員削減などの行財政改革を一段と迫られるのは必至だ。透明性を向上させるため、自治体の会計制度を民間企業並みに整備することが改めて求められそうだ。
 ▼隠れ債務 地方の借金について総務省は約二百兆円と説明してきた。しかし、ここに含まれるのは一般会計等の地方債残高、公営企業債のうち一般会計で負担すべき額のほか、交付税特会の借入金のうちの地方負担分まで。退職手当の支払見込み額などは、その実態も明らかにはなっていなかった。国もかつては特殊法人の借り入れや年金債務などが「隠れ債務」と指摘されていたが、貸借対照表の作成などで債務の実態はほぼ明らかになった。



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