20080412 日本経済新聞 朝刊

 フランスの保険会社、アクサのアンリ・ドカストル会長兼最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞との会見で「日本市場での地位を高めるため、あらゆる可能性を視野に入れている」と語った。M&A(合併・買収)も含めた日本での事業拡大に意欲を示した。
 ドカストル会長はフィヨン仏首相に同行して来日した。日本市場の将来性については「大きな成長は期待できないが、昨年末の銀行窓口販売の全面解禁などがきっかけとなり、市場シェアが大幅に変動することはありうる」と語った。
 アクサは日本ですでに生損保事業を手掛けているほか、今月からSBIホールディングスと組み、インターネットで生保商品を販売する新しい保険会社も始めている。
 ドカストル会長は日本事業の足場をさらに広げるために「個別事業の業務提携やM&Aも選択肢で、機会があれば検討していく」と表明した。
 米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発する世界的な金融危機については「(時価評価による)資産価値の急激な低下を受け、銀行が資産売却を進めている。これがさらに株価の低迷を呼ぶ悪循環を起こしている」と分析した。「個人消費にも影響が広がる可能性がある」として、事態収束には時間がかかるとの認識を示した。


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20080413 日本経済新聞 朝刊

 突然の病気やけがで必要になる入院費や治療費。民間医療保険は予想外の出費に備えるのに役立つが、過多な保障内容で無駄な保険料を払っているケースも多い。少ない保険料で手厚い保障が得られるよう「費用対効果」の視点で商品を選ぶことが重要だ。
 民間医療保険は、加入者が入院した際には入院給付金を、手術時には手術給付金を受け取れる。保障内容により保険料は変動するが、目標は極力安い保険料で必要な保障を得ること。「不安感からではなく、家計上のやりくりの一環として医療保険を合理的に考えることが重要」とファイナンシャルプランナー(FP)の内藤真弓さんは説く。
「200万円あれば」
 万が一の病気に備えるには、資金がどれだけあればよいか。FPの八ツ井慶子さんは「医療費として二百万円程度の貯蓄が目安」と指摘する。差額ベッド代や食費、その他雑費を合わせても一日一万円あれば十分。入院日数が六十日を超える長期入院を三回経験しても、手元に二百万円あれば余裕を持って闘病生活を乗り切れるという計算だ。
 七十歳未満の場合、医療費の三割は自己負担。これを民間医療保険でカバーするのが基本的な考え方だが、公的な医療保障を活用すれば、予想以上に自己負担額を抑えられる。例えば負担額が高額になった時には、所定の限度額を超えた部分は後日払い戻される「高額療養費制度」を利用できる。また勤務先の健保組合に差額ベッド代支給などの制度がある場合もある。
 一方、入院期間は技術の進歩などで年々短くなる傾向にある。厚生労働省の二〇〇五年患者調査によると、患者が病院を退院するまでに要する日数は三十九・二日で、七十歳以上でも五十三・九日だ。長期療養が必要な脳血管障害などで入退院を繰り返さなければ、二百万円の手元資金で入院時の経済的リスクをほぼ回避できると考えてよい。
 自己負担分の二百万円は、貯蓄で対応するのが理想的。保険会社に余分な手数料を払って保障を受けるよりも、自分で運用して手元資金を増やす方が効率的だからだ。
 入院の機会が少ない五十歳代よりも下の世代なら、医療預金という名目で銀行の自動積立定期預金を活用し毎月、定期的にお金をためる手段もある。ただしこの場合、医療費以外には充当しないよう、自分なりに厳格なルールを設けることが必要だ。「意志が弱く二百万円の貯蓄は無理」という人は、民間医療保険を活用するのが近道だろう。
 医療保険にはタイプ別にそれぞれ利点と欠点がある(表A参照)。商品設計は個別に異なるが「一般の人には、掛け捨てで月々の保険料を安く抑えられる終身型の医療保険がよい」(FPの吹田朝子さん)。「医療預金がたまるまでの保障を得たい」「将来認められる高度医療を保障対象にしたい」ならば、一定期間ごとに契約が切れ、その都度、更新が必要な定期型を選ぶのがよさそうだ。
返戻金も考慮に
 必要とする保障は、自分の置かれた経済環境に合わせて変えることも大切(表B参照)。その上で、保障内容が決まれば、支払う保険料と保障内容とを比較しながら、最終的に商品を絞り込む。医療保険の場合、商品にかける広告宣伝費や人件費の差で「同じ内容でも保険料に大きな開きが生じる場合がある」(吹田さん)ため、費用対効果の検討は非常に重要だ。
 四十歳の女性が入院給付金一日一万円の終身型医療保険に入った場合の、保険料総額を比較したのが表Cだ。四十歳から六十歳までの二十年間で支払う保険料は、商品アが百七十五万二千円なのに対し、ウは約三十七万円も多い。
 一方、保障内容では、アが入院初日(日帰り入院)から給付金を支給するのに対しウは五日目から。しかも保障期間中の総支給日数はアの方が二百七十日長い。一方エの保険料はイとほぼ同額だが、一回の入院で支払われる日数はイの半分に抑えられる。
 つけられる特約や死亡保険金の有無など商品設計が異なることから、必ずしも手数料が安いほど良い商品と言い切れないのも事実。しかし加入目的が、ただ単に入院時の経済的な保障を得ることならば、少しでも保険料の安い商品を選ぶか、保険料が同水準なら保障内容が手厚い方を選ぶのがよい。
 同じ終身保険で、解約返戻金のあるタイプを検討するなら「受け取る返戻金の額を差し引いた実質的な保険料で比較することが重要だ」と、複数の商品を扱う保険代理店、トータス・ウィンズ(東京・千代田)の亀甲美智博社長は指摘する。商品オとカを比べた場合、支払う保険料総額はカがオの二倍近くになるが、解約時に受け取る返戻金を加味した実質的な保険料では、むしろ安くなる。
 返戻金の原資は契約者から保険会社に支払われる。長期間利息を生まない非効率な資金にみえるがその分、実質的な保険料を軽減でき、しかも老後の医療準備金としての役割も期待できる。資金効率面での検討は必要だが、医療預金を代替するものとして選択肢に加える意味はありそうだ。(大角浩豊)
 お断り 「安心生活」面は今回で終了。来週からは役に立つ情報を拡充し「マネー生活」「くらし安心」面を掲載します。


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20080413 日本経済新聞 朝刊

 四月から大学進学や就職で一人暮らしを始めた人も多いだろう。部屋の借り方や、お金の使い方・ため方など、新しい経験は戸惑うことも多い。
 そんなときに、金融広報中央委員会がまとめた高校生用の教材が参考になる。二〇〇七年度版「これであなたもひとり立ち―自立のためのWORKBOOK―」は、高校生が独り立ちの過程で必要な経済や金融の知識を網羅した教材だ。
 高校での金融教育の教材を想定しているが、求めに応じて一般家庭向けにも無料で配布する。親が子に、祖父母が孫に金融知識などを教えたりする場合にも使える。電話(03・3277・2563)での申し込みのほか、ホームページ(http://www.shiruporuto.jp/)からダウンロードすることも可能だ。
 クイズや空白を埋めるワークブック形式を多用し、自然に知識が得られる構成となっている。例えば「社会人になるための経済学」という項目では、給与明細の読み方を知り、フリーターと正社員の賃金体系の違いや、健康保険や年金の枠組みなどを学ぶ。「カード社会の歩き方」では、実際にクレジットカードで「リボ払い」を利用したときに支払う利子の計算ができるようにする。

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20080313 日本経済新聞 朝刊




家族の世話促す ヘルパー不足の緩和も
 


発足からまもなく九年目を迎える介護保険制度に、現金給付を導入すべきである。第三者に介護を頼んだときのみ給付が受けられるという現物給付だけでは、家族介護が可能なのに第三者介護に頼ろうとしがちになり、ホームヘルパーや老人ホームの供給不足を招く。
かかった費用の1割が自己負担


 日本の高齢化率(六十五歳以上人口比率)は、二〇〇七年で二一・五%にまで急上昇し、その水準でみても上昇スピードでみても世界一である。また、厚生省(当時)が実施した人口動態社会経済面調査(一九九五年)によれば、高齢者の八割が亡くなるまでに寝たきりの状態になり、六十五歳以上で亡くなった人の平均寝たきり期間は八・五カ月である。しかも、寝たきり状態までいかなくても、要介護状態になった人まで含むと、事態はさらに深刻であり、最近、老々介護による心労や心中が話題になっている。従って、高齢化がこれだけ進むと、高齢者の介護は重大な問題になる。



 この問題に備えるべく、二〇〇〇年に介護保険制度が発足した。この制度では、「要介護」と認定された人は要介護度(一―五)に応じて介護給付を受ける。要介護者は、それを用いて施設または在宅で介護サービスを受けることができ、「要支援」と認定された人は「予防給付」を受け、それを用いて日常生活上の支援が受けられる。また、掛かった費用の一割は自己負担となり、残りの九割は保険料または税金で賄われる。



 この制度を利用すれば、専門家のホームヘルパー、理学療法士、看護師などが介護・世話をしてくれ、しかもその際の本人負担は一割とごくわずかで、要介護・要支援になった時のことを心配しなくてすむ。



 ところが、こうした介護保険制度が存在すると、経済学者がいうモラルハザードの問題が発生する。つまり、介護・世話ができる家族(配偶者、子など)がいたとしても、その人に頼らず、介護保険制度を利用して第三者に介護・世話を頼むインセンティブ(誘因)が生まれ、専門家のホームヘルパーなどに対する需要が必要以上に膨らむ。なぜなら、現行の介護保険制度では、第三者に介護を頼んだ場合にだけ便益を享受することができ、家族が介護・世話をした場合は全く便益を享受することができないからである。



 換言すれば、介護保険制度が存在することで、第三者に介護を頼んだ場合の(本人が負担する)「価格」が大幅に引き下げられることで、第三者に介護を頼む人が増えすぎてしまい、本来市場機能で最適になるはずの家族介護と第三者介護の資源配分がゆがんでしまうわけである。
介護する家族の収入を補う面も



 ただし、この問題をなくす有効な解決策がある。それは、家族が介護をした場合に現金給付をするという方法である。家族が介護をした場合に現金給付をすれば、家族が介護をした場合の(本人が負担する)「価格」も引き下げられる。



 二つの価格が同じくらい引き下げられるような水準に現金給付を設定すれば、家族介護と第三者介護の相対価格はもとのままで、家族が介護をするか第三者が介護をするかという意思決定におけるゆがみが完全に解消される。しかも、現金給付の導入で、家族が介護をする場合の経済的負担も軽減できる。介護をする家族が仕事を辞めたり、勤務時間を削減したりすることで減る収入を補うからである。



 従って、介護保険制度での現金給付導入は、ホームヘルパー、老人ホームなどに対する需要の必要以上の膨らみを避け、これらの供給不足を軽減することができ、同時に家族が介護をする場合の経済的負担を軽減することができるという、一石三鳥になる。



 日本に先立ち、一九九五年に介護保険制度を導入したドイツでは最初から現金給付は認められており、現物給付と現金給付を組み合わせることも可能であるのに、なぜ日本の現行の制度では、現金給付は原則として認められていないのであろうか。それは、この制度が家族に掛かる介護の負担を軽減し、介護の「社会化」を進めることを目的に導入されたからである。発足当初、現金給付を導入する案もあったが、この理由で見送られた。



 だが、家族が第三者に頼らず、自ら介護をすることを望んでいたり、または何らかの理由で家族が自ら介護をせざるを得なかったりする場合、現金を一切給付しないのは極めて不合理である。現金給付は家族介護を優遇するのではなく、第三者による介護を優遇している現行制度をより公平なものにするだけである。



 現金給付が望ましいのは、以下の実証分析でも明らかである。財団法人家計経済研究所が〇六年に実施した「世帯内分配・世代間移転に関する研究」調査(以下、「世帯内・世代間調査」)の結果を見てみよう。



 この調査は、三十歳から五十九歳までの既婚女性を対象に、〇六年十月―十二月に実施された。(1)回答者または回答者の配偶者が、親または配偶者の親の世話(家事、介護、訪問)を現在しているか、将来する予定であるか(2)回答者または回答者の配偶者が、親または配偶者の親と現在同居しているか、将来同居する予定であるかを尋ねている。


現物給付と 両立目指せ


 表の一行目から分かるとおり、回答者のかなりの割合が親の世話を現在しているか、または将来する予定である。妻(夫)の親と現在同居しているか、将来同居する予定である回答者も一三%(三○%)いる。しかし、この結果からだけでは、子がどういった理由で親の世話をしているのかがわからない。



 そこで表の二行目と三行目を見比べると、「遺産をもらえない」と思っている回答者より、「遺産をもらえる」と思っている回答者のほうが、妻・夫の親の世話をする確率も、妻・夫の親と同居する確率もはるかに高いことがわかる。例えば、夫の親から「遺産をもらえる」と思っている回答者の九○%強が夫の親の世話を現在しているか、または将来する予定である。これに対し、「遺産をもらえない」と思っている回答者の場合はこの割合は七○%強にすぎない。



 同様に、夫の親から「遺産をもらえる」と思っている回答者の四六%が現在夫の親と同居しているか、将来同居する予定である一方、「遺産をもらえない」と思っている回答者の場合はこの割合は一九%強にすぎず、世話の場合も同居の場合も二○ポイント以上の差がある。



 これらの結果は、子が“利己的”であり、親からの遺産を目当てに親の世話をしたり、親と同居したりしているということを示唆する。綿密な計量経済学的な分析を行っても、この結論は支持された。



 利己的な子は、親が財産を持っていなかったり、財産を持っているもののそれを子に残すつもりがなかったりした場合、親の世話をしたり、親と同居しない可能性が高いと考えられる。ところが、現金給付という制度があれば、子が利己的であり、親が財産を持っていなかったり、財産を持っていてもそれを子に残すつもりがながったとしても、子が親の世話をしたり、親と同居する可能性が出てくる。



 つまり、現金給付を導入することで、親の世話をする子が増え、ホームヘルパー、老人ホームなどの供給不足を軽減することができる。「世帯内・世代間調査」の結果は現金給付の必要性を裏付けるといえるのである。



 しかし、親の遺産または現金給付をもらえたとしても、親の世話をしない(できない)子がおり、子のいない人もいるであろうことは否定すべくもない。したがって、第三者による世話に対して支給される現物給付も必要であり、ドイツと同様、現物給付と現金給付の両立が最適であろう。



 発足から八年たった今、介護保険制度を見直す時期に来ている。現物給付を維持しつつ、現金給付の導入を早急に検討すべきである。



   Charles Yuuji Horioka 56年生まれ。ハーバード大経営経済学博士。専門はマクロ経済学

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20080316 日本経済新聞 朝刊



 夫が今年六十歳になり定年を迎えます。定年後をどう過ごすか、(1)賃金と年金の関係(2)保険の見直し(3)資産運用――に関し、三週にわたってファイナンシャルプランナー(FP)のアドバイスを求めることにしました。



 妻 夫にはこれからも精いっぱい働き続けてほしいと思っているの。



 夫 ……。



 FP 最近は六十歳以降も働くというのが主流になっています。厚生労働省の昨年十月の発表によると、六十歳以降の雇用確保を目的にした「改正高年齢者雇用安定法」が施行された二〇〇五年以前と比べ、定年後も継続雇用される予定の人の割合は、四八%から七七%と二九ポイントも増加。今後は定年を延長する企業も増えるでしょう。



 夫 でもそろそろ年金がもらえるのでは……。



 FP 正規の年金がもらえるのは原則六十五歳から。ただし年齢によっては六十代前半でも支給があります。ご主人は一九四八年(昭和二十三年)生まれなので、六十歳から六十四歳まで特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分をもらえます。
 受給額は働き方で変わってきます。図Aをごらんください。雇用延長や再就職などをしない場合などは満額受け取ることができます。でも失業給付の基本手当を受けている期間中は年金を受け取ることができません。
 六十歳以降も働いて厚生年金に加入する場合は、「在職老齢年金」という形で給料と平行してもらえます。六十歳以降に働く場合でも、週の労働日数または一日の労働時間を、通常の人の四分の三未満にするなど、厚生年金の適用外になる働き方をすれば、加入義務はありません。



 夫 厚生年金に加入すると、どのぐらい年金が削られちゃうのかな。



 FP 表Bに六十歳から六十五歳になるまでの在職老齢年金の計算式を示しました。一カ月当たりの年金と賃金の合計が二十八万円以下なら全額支給ですが、二十八万円を超えると、それに応じて減額されます。六十五歳から七十歳になるまでは、年金と賃金の合計が四十八万円以下なら全額支給されます。
 さらに別の制度も絡みます。六十歳から六十五歳未満の間は、一定の条件を満たせば高年齢雇用継続基本給付金を受け取れます。六十歳以降はそれ以前に比べて賃金が下がるケースが多いので、それをカバーするために導入された雇用保険の制度です。
 六十歳到達時点に比べて賃金が七五%未満に下がったら受給できます。もし六一%未満になれば、新賃金の一五%をもらえる計算です。ただし、高年齢雇用継続基本給付と在職老齢年金を同時にもらう場合は「併給調整され、最高で賃金の六%相当額が年金から減額されます」(社会保険労務士の根岸純子さん)



 夫 つまり、六十歳以降も働く場合は、賃金と年金、高年齢雇用継続給付金を総合して考えるべきなのですね。



 FP 参考までに、六十歳以降の働き方と手取り額の関係を試算しました(C)。AさんもBさんも六十歳到達時点の賃金は月額四十五万円。Aさんは一週三十二時間勤務で、通常の人の勤務時間(四十時間)の四分の三を超えるため、厚生年金に加入します。Bさんは一週二十一時間勤務。二十時間を超えるので雇用保険に加入しますが、厚生年金は未加入。さらに政府管掌健康保険を任意継続することにしました。
 これまでに説明したように、Aさんの年金額は一部減額されます。Bさんは厚生年金に加入しないため、年金を満額受給できます。
 AさんもBさんも六十歳到達時点の賃金の六一%未満に下がるため、新賃金の一五%の高年齢雇用継続基本給付が受けられますが、Aさんの場合は在職老齢年金と併給調整され、さらに年金額が下がります。厚生年金保険料も払い続けるので、AさんとBさんの手取りを見ると、賃金の差ほどは広がっていません。



 妻 しっかりと働いてもらおうと思っていたけど、そうでなくてもいいようね。



 夫 良かった。



 FP このように、様々な制度の関係をしっかり把握しておくことは大事です。でもその一方で、目先の手取りだけで判断するのは危険です。六十歳以降も厚生年金に加入しておけば「その分、受給開始以降の年金の額が上積みされます」(社労士の桑原孝浩さん)。例えばAさんが六十四歳まで五年間厚生年金に加入すれば、過去の加入状況などによっても変わりますが、将来の年金額が年間九万円前後増える可能性があります。
 目先の年金の減額の影響を差し引いてもやはりたくさん働いた方が手元に残るお金は多くなりがちですし、将来の年金も増えます。妻が六十歳未満の場合、夫が厚生年金に加入しないと妻の分の国民年金保険料の負担も生じます。お金だけで考えればやはり働いた方が得です。



 夫 ……。



 FP もちろん、再雇用後の働き方については会社と相談して決めることです。また「年金をもらえなくても、時間も賃金も定年前と同じように働きたいという希望も少なくない」(根岸さん)ですし、価値観しだいともいえます。しかしいずれにしろ自分が考えている老後の過ごし方ならどれくらいの手取りが見込めるのか、事前に考えておくことが大事です。(手塚愛実)

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