20080316 日本経済新聞 朝刊
夫が今年六十歳になり定年を迎えます。定年後をどう過ごすか、(1)賃金と年金の関係(2)保険の見直し(3)資産運用――に関し、三週にわたってファイナンシャルプランナー(FP)のアドバイスを求めることにしました。
妻 夫にはこれからも精いっぱい働き続けてほしいと思っているの。
夫 ……。
FP 最近は六十歳以降も働くというのが主流になっています。厚生労働省の昨年十月の発表によると、六十歳以降の雇用確保を目的にした「改正高年齢者雇用安定法」が施行された二〇〇五年以前と比べ、定年後も継続雇用される予定の人の割合は、四八%から七七%と二九ポイントも増加。今後は定年を延長する企業も増えるでしょう。
夫 でもそろそろ年金がもらえるのでは……。
FP 正規の年金がもらえるのは原則六十五歳から。ただし年齢によっては六十代前半でも支給があります。ご主人は一九四八年(昭和二十三年)生まれなので、六十歳から六十四歳まで特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分をもらえます。
受給額は働き方で変わってきます。図Aをごらんください。雇用延長や再就職などをしない場合などは満額受け取ることができます。でも失業給付の基本手当を受けている期間中は年金を受け取ることができません。
六十歳以降も働いて厚生年金に加入する場合は、「在職老齢年金」という形で給料と平行してもらえます。六十歳以降に働く場合でも、週の労働日数または一日の労働時間を、通常の人の四分の三未満にするなど、厚生年金の適用外になる働き方をすれば、加入義務はありません。
夫 厚生年金に加入すると、どのぐらい年金が削られちゃうのかな。
FP 表Bに六十歳から六十五歳になるまでの在職老齢年金の計算式を示しました。一カ月当たりの年金と賃金の合計が二十八万円以下なら全額支給ですが、二十八万円を超えると、それに応じて減額されます。六十五歳から七十歳になるまでは、年金と賃金の合計が四十八万円以下なら全額支給されます。
さらに別の制度も絡みます。六十歳から六十五歳未満の間は、一定の条件を満たせば高年齢雇用継続基本給付金を受け取れます。六十歳以降はそれ以前に比べて賃金が下がるケースが多いので、それをカバーするために導入された雇用保険の制度です。
六十歳到達時点に比べて賃金が七五%未満に下がったら受給できます。もし六一%未満になれば、新賃金の一五%をもらえる計算です。ただし、高年齢雇用継続基本給付と在職老齢年金を同時にもらう場合は「併給調整され、最高で賃金の六%相当額が年金から減額されます」(社会保険労務士の根岸純子さん)
夫 つまり、六十歳以降も働く場合は、賃金と年金、高年齢雇用継続給付金を総合して考えるべきなのですね。
FP 参考までに、六十歳以降の働き方と手取り額の関係を試算しました(C)。AさんもBさんも六十歳到達時点の賃金は月額四十五万円。Aさんは一週三十二時間勤務で、通常の人の勤務時間(四十時間)の四分の三を超えるため、厚生年金に加入します。Bさんは一週二十一時間勤務。二十時間を超えるので雇用保険に加入しますが、厚生年金は未加入。さらに政府管掌健康保険を任意継続することにしました。
これまでに説明したように、Aさんの年金額は一部減額されます。Bさんは厚生年金に加入しないため、年金を満額受給できます。
AさんもBさんも六十歳到達時点の賃金の六一%未満に下がるため、新賃金の一五%の高年齢雇用継続基本給付が受けられますが、Aさんの場合は在職老齢年金と併給調整され、さらに年金額が下がります。厚生年金保険料も払い続けるので、AさんとBさんの手取りを見ると、賃金の差ほどは広がっていません。
妻 しっかりと働いてもらおうと思っていたけど、そうでなくてもいいようね。
夫 良かった。
FP このように、様々な制度の関係をしっかり把握しておくことは大事です。でもその一方で、目先の手取りだけで判断するのは危険です。六十歳以降も厚生年金に加入しておけば「その分、受給開始以降の年金の額が上積みされます」(社労士の桑原孝浩さん)。例えばAさんが六十四歳まで五年間厚生年金に加入すれば、過去の加入状況などによっても変わりますが、将来の年金額が年間九万円前後増える可能性があります。
目先の年金の減額の影響を差し引いてもやはりたくさん働いた方が手元に残るお金は多くなりがちですし、将来の年金も増えます。妻が六十歳未満の場合、夫が厚生年金に加入しないと妻の分の国民年金保険料の負担も生じます。お金だけで考えればやはり働いた方が得です。
夫 ……。
FP もちろん、再雇用後の働き方については会社と相談して決めることです。また「年金をもらえなくても、時間も賃金も定年前と同じように働きたいという希望も少なくない」(根岸さん)ですし、価値観しだいともいえます。しかしいずれにしろ自分が考えている老後の過ごし方ならどれくらいの手取りが見込めるのか、事前に考えておくことが大事です。(手塚愛実)
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