20080413 日本経済新聞 朝刊
突然の病気やけがで必要になる入院費や治療費。民間医療保険は予想外の出費に備えるのに役立つが、過多な保障内容で無駄な保険料を払っているケースも多い。少ない保険料で手厚い保障が得られるよう「費用対効果」の視点で商品を選ぶことが重要だ。
民間医療保険は、加入者が入院した際には入院給付金を、手術時には手術給付金を受け取れる。保障内容により保険料は変動するが、目標は極力安い保険料で必要な保障を得ること。「不安感からではなく、家計上のやりくりの一環として医療保険を合理的に考えることが重要」とファイナンシャルプランナー(FP)の内藤真弓さんは説く。
「200万円あれば」
万が一の病気に備えるには、資金がどれだけあればよいか。FPの八ツ井慶子さんは「医療費として二百万円程度の貯蓄が目安」と指摘する。差額ベッド代や食費、その他雑費を合わせても一日一万円あれば十分。入院日数が六十日を超える長期入院を三回経験しても、手元に二百万円あれば余裕を持って闘病生活を乗り切れるという計算だ。
七十歳未満の場合、医療費の三割は自己負担。これを民間医療保険でカバーするのが基本的な考え方だが、公的な医療保障を活用すれば、予想以上に自己負担額を抑えられる。例えば負担額が高額になった時には、所定の限度額を超えた部分は後日払い戻される「高額療養費制度」を利用できる。また勤務先の健保組合に差額ベッド代支給などの制度がある場合もある。
一方、入院期間は技術の進歩などで年々短くなる傾向にある。厚生労働省の二〇〇五年患者調査によると、患者が病院を退院するまでに要する日数は三十九・二日で、七十歳以上でも五十三・九日だ。長期療養が必要な脳血管障害などで入退院を繰り返さなければ、二百万円の手元資金で入院時の経済的リスクをほぼ回避できると考えてよい。
自己負担分の二百万円は、貯蓄で対応するのが理想的。保険会社に余分な手数料を払って保障を受けるよりも、自分で運用して手元資金を増やす方が効率的だからだ。
入院の機会が少ない五十歳代よりも下の世代なら、医療預金という名目で銀行の自動積立定期預金を活用し毎月、定期的にお金をためる手段もある。ただしこの場合、医療費以外には充当しないよう、自分なりに厳格なルールを設けることが必要だ。「意志が弱く二百万円の貯蓄は無理」という人は、民間医療保険を活用するのが近道だろう。
医療保険にはタイプ別にそれぞれ利点と欠点がある(表A参照)。商品設計は個別に異なるが「一般の人には、掛け捨てで月々の保険料を安く抑えられる終身型の医療保険がよい」(FPの吹田朝子さん)。「医療預金がたまるまでの保障を得たい」「将来認められる高度医療を保障対象にしたい」ならば、一定期間ごとに契約が切れ、その都度、更新が必要な定期型を選ぶのがよさそうだ。
返戻金も考慮に
必要とする保障は、自分の置かれた経済環境に合わせて変えることも大切(表B参照)。その上で、保障内容が決まれば、支払う保険料と保障内容とを比較しながら、最終的に商品を絞り込む。医療保険の場合、商品にかける広告宣伝費や人件費の差で「同じ内容でも保険料に大きな開きが生じる場合がある」(吹田さん)ため、費用対効果の検討は非常に重要だ。
四十歳の女性が入院給付金一日一万円の終身型医療保険に入った場合の、保険料総額を比較したのが表Cだ。四十歳から六十歳までの二十年間で支払う保険料は、商品アが百七十五万二千円なのに対し、ウは約三十七万円も多い。
一方、保障内容では、アが入院初日(日帰り入院)から給付金を支給するのに対しウは五日目から。しかも保障期間中の総支給日数はアの方が二百七十日長い。一方エの保険料はイとほぼ同額だが、一回の入院で支払われる日数はイの半分に抑えられる。
つけられる特約や死亡保険金の有無など商品設計が異なることから、必ずしも手数料が安いほど良い商品と言い切れないのも事実。しかし加入目的が、ただ単に入院時の経済的な保障を得ることならば、少しでも保険料の安い商品を選ぶか、保険料が同水準なら保障内容が手厚い方を選ぶのがよい。
同じ終身保険で、解約返戻金のあるタイプを検討するなら「受け取る返戻金の額を差し引いた実質的な保険料で比較することが重要だ」と、複数の商品を扱う保険代理店、トータス・ウィンズ(東京・千代田)の亀甲美智博社長は指摘する。商品オとカを比べた場合、支払う保険料総額はカがオの二倍近くになるが、解約時に受け取る返戻金を加味した実質的な保険料では、むしろ安くなる。
返戻金の原資は契約者から保険会社に支払われる。長期間利息を生まない非効率な資金にみえるがその分、実質的な保険料を軽減でき、しかも老後の医療準備金としての役割も期待できる。資金効率面での検討は必要だが、医療預金を代替するものとして選択肢に加える意味はありそうだ。(大角浩豊)
お断り 「安心生活」面は今回で終了。来週からは役に立つ情報を拡充し「マネー生活」「くらし安心」面を掲載します。
------------------------------------------------
・火災保険の一括見積もり・比較
・海外旅行保険の比較
・留学生・ワーキングホリデー向けの海外旅行保険の比較
・駐在員向け、企業包括契約、インバウンド保険(外国人受入)
・オリックス生命 CURE Lady(キュア・レディ)
・保険総合サイト