20080718 日経産業新聞

 奈良県橿原市の奈良県立医科大学付属病院で五月、総合周産期母子医療センターが稼働した。妊婦や新生児のICU(集中治療室)を備え、二十四時間の受け入れが可能だ。奈良県は二〇〇六―〇七年に転院や緊急搬送時に妊婦が死亡・死産する事案が発生。産科医療体制に多くの問題が指摘されていただけに、中核となるセンターの開設に大きな期待がかかる。
 センターは産科や小児科と同じ病棟に入居し、母体・胎児用と新生児用のICUを十八床、ICUから退出した患者を収容する後方病床も二十二床整備した。フル回転の状態が続いている。
 「大学病院にセンターを開設した例は全国でも少ない。総合病院の強みを生かしたスムーズな他科との連携でどんな疾患にも対応できる」。母体・胎児集中治療部門担当の佐道俊幸助教は強調する。月内にも母体の救急疾患に関する院内連携マニュアルを完成させ、万全を期す方針だ。
 センターでは産科と小児科との橋渡し役として、新生児集中治療部門を小児科から完全に独立して設置している。六年前からこの体制で、国公立の大学病院では唯一という。新生児部門を担当する高橋幸博教授は「医療の高度・専門化が進むなか、治療だけではなく教育指導でも大きな効果がある」と説明する。
 妊婦が緊急搬送時に死産した昨年の事案で同病院は救急隊から受け入れ要請を受けたが、お産や手術が重なっていたため断らざるを得なかった。後の調査で、休日や夜間に産科の急患を受け入れる輪番制に空白があり、高度な治療を担当するはずの同病院が、専門性がさほど必要ではない患者まで受け入れている実態が明らかになった。
 産婦人科医不足は全国的に深刻だ。奈良県も百四十万人の人口に対し、常勤医は〇七年四月時点で七十二人。分娩(ぶんべん)扱い病院・診療所は〇二年の三十八から〇八年は二十九に減り、母体の県外搬送が多発していた。
 再発防止に向け、県は委託料を負担して産婦人科の開業医に輪番制への参加を要請。休日や夜間の空白時間帯をなくした。救急隊向けに医慮機関との連携を密にするマニュアルも作成した。
 県立医大病院はセンターを設置し、母体・胎児用ICUを倍増。後方病棟も大幅に拡充した。医師と看護師を二十二人増員し、センターに医師八人、看護師七十九人が勤務する体制を整えた。佐道助教によると「緊急搬送への対応は明らかに改善した」という。
 ただ、慢性的な人手不足は解消できていない。看護師は定数に二十三人足りず、新生児用ICUは二十一床分の設備がありながら、実際には十二床しか稼働できない。〇九年度は病院全体で看護師・助産師を二百人増員する計画だが「採用のめどは立っていない」(経営企画課)のが実情。
 奈良県のセンター設置は都道府県別で四十五番目と出遅れた。県内各地での地域周産期センター配置という課題も残る。医師不足対策では〇八年度、県立病院勤務の産婦人科医の給与引き上げや医大生対象の奨学金制度を始めたが、成果が出るには時間もかかる。「前向きに動き始めたが、ワンステップが終わっただけ」。高橋教授は改革の継続を訴えている。
(奈良支局長 竹内義治)
【図・写真】榊壽右院長
【図・写真】妊婦・新生児用の集中治療室を大幅に拡充した

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20080717 日本経済新聞 夕刊

 自民党は十七日、厚生労働部会と社会保険庁改革ワーキンググループの合同会議を開いた。二〇一〇年に社保庁の後継組織として発足する「日本年金機構」について厚生労働省が提出した基本計画の了承を見送った。了承見送りは二度目。懲戒処分者の採用基準が甘いとの批判が相次いだためで、社保庁ワーキンググループは来週までに独自案を作成する。
 厚生労働省が提出した基本計画は休職許可を得ないまま組合活動をしていた「ヤミ専従」職員の不採用を明記。個人情報ののぞき見などで停職や減給になった懲戒処分者を不採用にする案も盛り込んだ。ただ同日の合同会議では「(処分の中で最も軽い)戒告も含めてすべて採用すべきではない」との批判が噴出。意見が集約できなかった。
 そこで社保庁改革ワーキンググループが懲戒処分者は正規雇用ばかりでなく、非正規雇用を含めて一切採用しないなどの項目を盛り込んだ独自計画を作成する。基本計画は年金業務・組織再生会議(座長・本田勝彦日本たばこ産業相談役)が六月に決定した報告書が土台になっているが、自民党は大枠は変えずに職員採用について厳しい修正を加える。
 ワーキンググループは来週の自民党合同会議に独自計画を示す。政府は与党の了承を受けて早ければ二十五日の閣議決定を目指しているが、ずれ込む可能性も出てきた。

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20080717 日本経済新聞 朝刊

 日本商工会議所は十六日、全国の商工会議所の役員らを集めたセミナーを都内で開き、二〇一〇年度末までの中期行動計画をまとめた。社会保障制度について、基礎年金の財源のあり方も含めた抜本改革案を九月にまとめることなどが柱。記者会見した中村利雄専務理事は年金財源に関して「保険料方式か税方式か、どちらがいいかは鋭意検討中だ」と述べた。
 日商が中期行動計画をまとめるのは初めて。社会保障や税制、道州制などを議論する手順を明示しており、税制については毎年九月に中小企業の活性化と絡めた要望書を出す計画だ。

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20080716 日本経済新聞 朝刊

 民主党は十五日、国会内で医療制度調査会(会長・枝野幸男元政調会長)役員会の初会合を開き、廃止をめざす後期高齢者医療制度の代案づくりの議論を始めた。枝野氏は「年金以上に医療が衆院選の大きなポイントになる可能性が十分ある」と指摘。職業などにより異なる医療保険制度の一元化を軸に、保険料の負担水準などの検討を急ぐ方針を確認した。


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20080716 日本経済新聞 朝刊

 第一生命保険はタイの生保会社、オーシャンライフ(本社バンコク)に出資する方針を固めた。外資の上限である二五%まで出資、投資額は百億円規模とみられる。少子高齢化などを背景に、国内生保市場は縮小傾向が続いていることから、成長市場のアジアへの進出を加速する。
 オーシャンライフはタイ七位の生保会社で、二〇〇七年の保険料収入は三百三十三億円。第一は〇六年にオーシャンライフと業務提携し、タイに進出している日系企業向けの団体保険販売で協力してきた。提携が軌道に乗ってきたことから、関係強化に踏み切る。
 今回の出資を機に、成長余地の大きい現地の個人保険事業への参入を目指す。また資産運用などでも、第一がノウハウを提供するとみられる。
 タイの生保市場は収入保険料ベースで五千億円規模。日本の二%程度にすぎないが、この五年間で一・五倍に拡大した。

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