20080716 日本経済新聞 朝刊

 二〇〇九年度の社会保障費は、現行制度のままでは今年度より八千五百億円を超す伸びになる見通しとなった。高齢化で「自然増」は今年度を約一千億円上回る。福田康夫首相は十五日、〇九年度予算の大枠となる概算要求基準(シーリング)について、社会保障費の伸びを二千二百億円抑制する方針を了承したが、歳出膨張圧力が一段と高まる。
 福田首相は首相官邸で、各省庁の予算要求の上限を定める概算要求基準の基本方針を巡り額賀福志郎財務相と協議。首相は財務省の方針を了承し、「財政再建と予算重点化の両立」を指示した。今年度の予算編成と同様に、社会保障費の伸びを二千二百億円抑制するほか公共事業関係費を三%、防衛関係費と国立大学運営費交付金・私学助成費をそれぞれ一%ずつ削減する。
 医師不足対策や成長力強化策については、他の経費の削減で財源を確保して予算を重点配分する方針を確認した。二十九日の閣議了解を目指す。
 社会保障費の増加額は〇五年度予算では一兆円を超えたが、診療報酬を引き下げた医療制度改革などで〇七、〇八両年度は七千億円台にとどまっていた。政府の概算では、医療や介護給付費の増加によって〇九年度の増加額は八千五百億円超となる見通しだ。
 〇九年度予算の概算要求基準は、〇三年度予算以来、七年連続で伸びを二千二百億円抑制する。雇用保険の国庫負担の廃止、薬価の安い後発医薬品の普及などが浮上している。抑制しても社会保障費は六千億円を超える純増となり、政策的経費である一般歳出の増加圧力が高まる。
 財務省は他の経費を抑えることで社会保障費の純増分を補いたい考え。それでも一般歳出は今年度当初予算(四十七兆三千億円)を上回る見込み。
 政府は医師不足や救急医療対策、後期高齢者医療制度の見直しにかかる経費を「自然増」とはみなさず、他の分野の歳出削減でまかなう方針。実質的な社会保障費は確実に膨張の一途をたどっている。
 財源のメドは立っていない。景気減速で税収が落ち込んでいるうえ、消費税率引き上げなど増税による財源の確保は厳しい。
 増税せず将来世代に借金を先送りする国債発行を避けようとするなら、高齢化で伸び続ける医療や介護の給付費の抑制に本気で取り組むか、道路予算をはじめとする他の歳出を大きく切り込むしかない。

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20080716 日本経済新聞 地方経済面

 病気を防ぐ。早期に治す。そんな「予防医学」が医療現場で広がっている。病気の芽を早めに摘み取って健康を保てれば、生活の質が高まり、社会全体の医療費削減にもつながる。千葉大学が昨年六月に設立した「予防医学センター」(千葉県柏市)は住民十万人のデータを集め予防医学を研究する。東洋医学の成果も取り入れた世界でも珍しい試みになる。
 予防医学センターの本拠地である千葉大柏の葉キャンパスは、つくばエクスプレス(TX)柏の葉キャンパス駅から三分ほど歩いた場所に広がる。畑や庭園の中に小ぶりな建物が点在し、周辺の高校生や住民が構内を自由に行き交う。大学病院などにあるどこか重苦しい空気は感じられない。
 この開かれたキャンパスの姿が、予防医学の本質を表している。予防医学は病気になる前から住民を長い目で観察し、生活習慣や住環境を見直していく。
 センター長を務める森千里教授は「ある意味で予防医学は社会を変えていく取り組みです。研究を大学の中で終わらせず、社会との壁を取り払うことが大事なんです」と説明する。
データ収集開始
 センターが本格稼働するのは八月。まずは同市柏の葉地区に住む人々を対象に調査研究を進める。基礎となるのは「コホート研究」だ。コホートは英語で集団の意味。地域住民の健康状態を長年追跡調査してデータを収集。生活習慣と病気との因果関係を明らかにしていく。
 近くデータ収集が動き出す。千葉大発ベンチャーの健康サポートネットワーク(中島伸之社長)が中心となり協力してくれる住民を募集。蓄積した体重や血圧などのデータをもとに医師のアドバイスを受けられる仕組みをつくる。初年度は三千人の登録をめざす。
東洋医学を重視
 「生活習慣病などの診断は、今は個別の医師の経験則に頼っているのが現状。予防医学の実現には、データに基づいた診断が必要」。同社理事として事業を統括する椎名一博・三井不動産S&E総合研究所上席主任研究員は強調する。
 もう一つの特徴は東洋医学を重視していることだ。東洋医学には「未病」という考え方がある。健康でも病気でもない状態だ。診断結果に表れない心身の不調を感じていたり、自覚はないが数値に異常が出ているような状態を指す。そんな未病の段階にある人を東洋医学で診断し、早期に病気の芽を摘む。
 プロジェクトを主導する喜多敏明・千葉大准教授は〇四年から柏の葉キャンパスで東洋医学に基づいた診療を手掛けてきた。「上工(優れた医者)は未病を治(ち)す、という言葉が東洋医学にある。精神状態を含めたトータルケアを通じて未病を治す方法を確立したい」
 すでに東洋医学の見地から健康状態を数値化する手法を確立した。将来は健康サポートネットワークのデータベースとも連動させながら、総合診断に役立てていく。
 センターの活動の多くはアイデア段階。浸透には地域住民の理解と協力が欠かせない。椎名氏は「大げさに言えば、日本を変える取り組みになると思っています」と医療の新たな可能性を切り開く意気込みだ。
【図・写真】住民10万人分のデータを収集(千葉県柏市の千葉大柏の葉キャンパス)

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20080715 日本経済新聞 朝刊

社会保障費抑制シナリオ
 財務省は二〇〇九年度予算の大枠を決める概算要求基準で社会保障費の自然増を引き続き二千二百億円削減する方針を固めた。柱と見込むのが雇用保険の国庫負担約千六百億円の全廃だ。だが連合は「国の責任放棄だ」と猛反発し、保険料の半分を負担する経営側も難色を示す。失業率は足元で悪化しており、財務省のシナリオ通りいくかは不透明だ。
膨らむ「埋蔵金」
 「雇用への国の責任を示す国庫負担の廃止はあり得ない」。連合の古賀伸明事務局長は六月、厚生労働省が労使の代表を集めて開いた会議で語気を強めた。すぐに日本経団連の鈴木正人参与も「全く同感。国の関与は必要」と応じた。普段は対立する労使だが、この問題では一致して財務省に対抗する。
 雇用保険の失業給付の財源は労使が負担する雇用保険料が中心で、一定割合を国が補助する。〇八年度予算では保険料収入約二兆円に対し、国庫負担は千六百億円だ。
 政府は「骨太の方針二〇〇六」で社会保障費の自然増について、五年間に計一兆一千億円抑制する方針を定めた。年二千二百億円ずつ削る計算だが、厚労省や与党内から「これ以上の抑制は限界」との声が強まっている。そこで財務省が目を付けたのが、雇用保険の「埋蔵金」だった。
 雇用保険は景気回復で〇七年度までに積立金が五兆円近くまで積み上がった。一方、失業給付は年一兆七千億円。財務省が「国庫負担は必要ない」とする論拠だ。
積立金が急減も
 雇用保険の国庫負担の削減は二年前に実施したばかり。今回国庫負担の廃止に踏み込めば、雇用保険を国が運営する根拠は薄れる。財務省は財政効果を主張するだけで、厚労省も「国の責任」でどんな制度の将来像を描くのか不透明だ。陰り始めた景気も影響する。雇用情勢が悪かった〇二年には積立金は四千億円まで減った。失業率はここ半年は上昇傾向。給付が増えれば積立金が急減する可能性もある。
 〇八年度予算で政府管掌健康保険の国庫負担を大企業の健康保険組合などに肩代わりさせる案も、ねじれ国会で審議に入れず、結局は宙に浮いたままだ。数字のつじつま合わせの議論に終われば、結局は財政再建と社会保障制度改革の双方が先送りになりかねない。

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7月13日17時42分配信 時事通信


 初めて赤ちゃんを産んだ母親がわが子の笑顔を見たときには、麻薬を服用した際と似たような脳の領域が活発に働き、自然に高揚した状態になるとの実験結果を、米ベイラー医科大の研究チームが13日までに米小児科学会誌の電子版に発表した。母親の子への愛情を脳科学で分析すれば、育児放棄や虐待の背景にあるかもしれない病理の解明に役立つと期待される。 

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20080713 日本経済新聞 朝刊

 与党は十二日、来年四月から七十―七十四歳の医療費の窓口負担を引き上げる措置を凍結する方針を固めた。現行の一割負担から二割負担への移行を一年程度、先送りする方向だ。約千四百億円の必要財源は今年度補正予算で手当てしたい考えで、政府との調整に入る。来秋までに次期衆院選があるなか、高齢者の反発を招く負担増を回避する狙いだが、財政規律は緩むことになる。
 十五日に開く与党の作業チームで具体的な議論を開始。二〇〇九年度予算の概算要求基準(シーリング)策定前の月内に決定し、政府に財源の手当てを求める。
 窓口負担は現在、六十九歳までと、七十歳以上の現役並み所得者(夫婦世帯で年収約五百二十万円以上)が三割。現役並みの所得がない一般の七十―七十四歳は一割負担になっている。
 政府・与党は〇六年に成立した医療制度改革関連法で、七十―七十四歳の窓口負担割合を〇八年四月に二割に引き上げることを決定。ところが〇七年七月の参院選で与党が惨敗したため、福田康夫政権発足後の同年十月に実施時期を〇九年四月まで一年先送りした。今回、先送りすれば二度目の凍結になる。
 財源は今年度補正予算で手当てする見通し。来年四月以降に必要な財源は本来、来年度予算に反映するのが原則だが、政府・与党はシーリングで社会保障費の伸びを二千二百億円抑制する方針。新たに大きな額を捻出(ねんしゅつ)する余地は乏しく、シーリングの上限枠と無関係の補正予算で事前に手当てしたい意向だ。

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