20090122 日本経済新聞 朝刊

 厚生労働省は二十一日、従業員の休業で雇用維持する企業への助成要件を一部、撤廃する方針を固めた。近く省令改正する。休業する従業員数や休業日数が少なくても助成金を支給する。急速な景気後退で非正規社員との契約を中途解除する企業が相次いでいる。雇用調整助成金制度を利用しやすくし、雇用維持を促す。
 収益悪化などを背景に従業員を解雇せずに休業を使って雇用を守る場合、休業人数などが一定の規模になると企業は助成金を得られる。例えば、すべての労働日を休ませる場合、従業員百人の中小企業なら五人以上の従業員を休業させる必要がある。
 この規模の要件を撤廃し、従業員一人の休業でも助成する。
 厚労省は地域の公共職業安定所(ハローワーク)や労働局で助成金の申請を受け付けている。世界的な景気悪化を受け「申請待ちで行列ができている労働局もある」(同省)という。
 マツダが助成金の利用を申請するなど、自動車メーカーを中心に助成制度を使って雇用維持する動きが広がりつつある。厚労省は昨年末に非正規労働者の失業を防ぐため、雇用保険の被保険者期間が短くても助成金の対象とするなど制度を拡充していた。


----------------------------------------------

20090122 日本経済新聞 朝刊

景気悪化映す
 取引先の倒産などによって回収できなくなった販売代金を補償する「取引信用保険」の需要が急増している。景気悪化で中小企業などの倒産が増えているためで、大手の損害保険ジャパンは二〇〇八年度の保険料収入が前年度比三割程度増える見込みだ。
 同保険は売掛金などを対象に、企業が販売額の数%を保険料として支払い、取引先の倒産時に販売代金の一定割合を損害保険会社が補償する仕組み。あいおい損害保険も二割程度の増収を見込んでいるほか、三井住友海上火災保険や日本興亜損害保険でも企業からの見積もり依頼が前年度比で倍増している。
 企業倒産の増加で昨年後半以降、問い合わせが増えた。ただ倒産リスクの上昇に合わせて保険料率が上がるうえ、取引先の経営状況が悪く「引き受けを断らなければいけない」(大手損保)ケースも多いようだ。

----------------------------------------------

20090122 日本経済新聞 朝刊

クレディ・アグリコル
 りそなホールディングスは仏大手金融のクレディ・アグリコル(CA)と日本株の運用・販売で包括提携する。りそな信託銀行がCAから、個別銘柄を選んで運用する日本株の「アクティブ運用」業務や調査業務などを請け負う。CAが日本株で運用している数十億円の資産も引き継ぐ。一方、CAはりそなのファンドを海外の機関投資家に販売する。りそなは提携により、海外の年金基金などから五千億円規模の運用受託を目指す。
 りそな信託がCA傘下の運用会社、クレディ・アグリコル・アセットマネジメントと提携する。具体的な運用方針や販売体制は今後詰める。信託銀行などの日本の大手運用会社が有力な外資系運用機関から運用を受託したり、資産を承継したりするのは珍しい。
 りそな信託は今年四月、同じグループのりそな銀行と統合するため、CAとの提携関係はりそな銀が引き継ぐ。りそなは提携により収益力を高めて公的資金の返済を進めたい考え。
 りそなは欧州や中東に手厚い営業網のあるCAを通じて海外マネーの取り込みを狙う。これに合わせ、りそな信託はファンドマネジャーの採用など体制強化も検討する。
 CAは一部の日本株運用は続けるとみられる。ただ対象企業を個別に調査して銘柄を発掘する「アクティブ運用」は相対的に費用がかかり、一定以上の運用資産が必要とされる。金融危機が深まるなかで、世界の金融機関は業務の見直しを進めている。CAは日本株のアクティブ運用については、りそなに委託する方が効率的と判断した。
 りそなHDとCAは親密な関係にある。CAは二〇〇二年、りそな信託の株式を一部取得。りそな信託は〇七年、CAを通じて欧州の年金基金から四百二十億円の運用を受託した。さらにりそな銀はCAが組成・運用する投資信託を販売。〇八年十二月にはCAがりそなHD株を五百億円分取得した。
 クレディ・アグリコルは欧州最大規模の金融機関で、日本では商業銀行や証券、生命保険、資産運用業務を展開。傘下のクレディ・アグリコル・アセットマネジメントは〇八年三月で約四千八百億ユーロ(約五十五兆円)の資産を運用している。

----------------------------------------------

20090122 日本経済新聞 朝刊

成長率条件など削除
 二〇一一年度からの消費税増税を含む税制抜本改革を税制改正関連法案の付則に明記する問題で、麻生太郎首相は自民党内の増税反対派に配慮する文言の修正を最小限にとどめようと腐心した。「一一年度引き上げ」を可能とする表現が大きく後退すれば、首相答弁との整合性が問われ、一段の求心力低下につながるとの危機感があった。二十三日の閣議決定に向け焦点は中川秀直元幹事長ら増税反対派の動向に移る。(1面参照)
 「おれの答弁を変えるようなことだけはやめてくれよ」。首相は二十一日、首相官邸に招いた自民党の保利耕輔政調会長らにクギを刺した。「準備」など首相の後退を印象付ける表現を盛り込んだ案が前日の派閥会長会合で取りざたされ、警戒していたからだ。
■2段階案示す
 保利氏は「それではみんな賛成できない」と首相を諭しつつ、「施行期日等を法制上定める」との案を示した。不況が続く場合、まず消費税増税の実施日を書かない法案を出し、経済好転後の国会に実施日を定める法案を出す「二段階」案だった。景気が回復すれば別々の法律にせず「一段階」でも構わない。
 昨年末に閣議決定した税制改革の工程表「中期プログラム」の表現を大きく変えないことが、首相の条件。「一一年度から上げるため、それまでに措置すると読めなければならない」(周辺)としていた。この案なら首相のメンツは保てる。
 首相は二十一日、記者団に「何段階方式でも、私の申し上げている通りに文面が書かれているのが一番肝心。それがすべてだ」と強調した。
 党政調幹部は「増税反対派も事態収拾を考えている。この文案なら了承してくれるのではないか」と自信を示した。
■不確定要素も
 増税反対派が問題視してきた「潜在成長率の発揮」を判断基準とする中期プログラムの記述が、内閣法制局との調整で「法律になじまない」として削除されたことも、結果として「落としどころ」になる可能性がある。
 増税反対派のうち、山本一太参院議員ら中堅・若手は二十一日夜の会合で(1)現時点で実施日は決めない(2)「潜在成長率」は削除する――などが確認できれば、受け入れ可能との認識で一致した。「潜在成長率」削除は、中川氏がかねて指摘してきた論点でもある。
 ただ増税反対派には「実施日を定めないにしても、消費税増税法案を一〇年にも国会提出すること自体が受け入れがたい」との意見もくすぶる。反対派を説得することができるのか、なお不確定要素が残っている。
税制法案付則の政府案(抜粋)
 経済状況を好転させることを前提に、遅滞なく段階的に消費税を含む税制の抜本改革ができるよう二〇一一年度までに必要な法制上の措置を講じる。これにより一〇年代半ばまでに持続可能な財政構造を確立する。改革の施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況と国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応する

----------------------------------------------

20090122 日本経済新聞 朝刊

 政府は税制改正関連法案の付則に従い、経済状況にかかわらず二〇一〇年にも一一年度からの消費税増税を含む税制抜本改革を可能にする税制改革法案(仮称)を提出できるとみている。消費税率の引き上げ幅や段階的に引き上げる場合の手法などは一〇年にも決定し、法案に明記する考え方もある。経済状況が好転しなければ同法案には実施時期を盛らず、消費税増税は先送りされる。
 想定される最も早い消費税増税のスケジュールは、経済好転を前提として二〇一一年四月。一〇年の法案提出はこのケースに備えるもので、麻生太郎首相は次期衆院選のマニフェスト(政権公約)に消費税率引き上げを盛り込むことに意欲的だ。ただ、衆院選に勝利しても来年は参院選。提出は選挙後の秋の臨時国会や翌年の国会もありうる。
 経済状況が好転していなければ、実施日だけを一一年度以降に別の法案で定める二段階方式となるが、軽減税率の設定範囲などは難しい課題だ。増税反対派には増税幅も実施日とあわせて決めるべきだとの声もある。


----------------------------------------------