20080824 日本経済新聞 朝刊

 女性の育児休業取得率が上昇している。厚生労働省の2007年度「雇用均等基本調査」によると、女性の育児休業取得率は89.7%と、前回調査の05年度に比べ17.4ポイント上昇した。政府が少子化対策として05年度から実施している「子ども・子育て応援プラン」の目標値では、10年後までに女性の育児休業取得率の目標を80%としていたが、既に目標値を上回った。
 一方、男性は1.56%と依然低い水準。2年前に比べ1.06ポイント上昇したが、目標値の10%を大きく下回る。男性の育休取得を奨励する企業は増えているが、業務の引き継ぎが難しかったり、周りに取得した人がいなかったりで育休取得に踏み切れない人が多いとみられる。休業中の雇用保険からの給付水準が低く、収入減になることも家計にとって痛手のようだ。




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20080824 日本経済新聞 朝刊

 「乳がんのしこりってどんな感じ」――。がん保険大手のアメリカンファミリー生命保険(アフラック)が全国約六百カ所の来店型店舗に乳がんの「触診モデル」を設置している。研修医が使う教材として開発されたもので、乳房の中にできたしこりの感触をリアルに体験できる。
 設置されているのは、シリコン製の左乳房の模型。病変部位は、肩関節に近い「外上部」、首側の「内上部」、腕に近い「外下部」、みぞおち側の「内下部」の四カ所に設定している。
 元々は研修医ら医療従事者のトレーニング用に一点ずつ手作りされる医療用機器。人体で触診した場合とほぼ同じ違和感があるが、しこりの場所が分かっていても、実際に探り当てるのはなかなか難しい。
 店頭のモデルを触ったことがきっかけで診察を受け、がんが見つかった人もいるという。アフラック個人アソシエイツ推進課の吉沢恵子さんは「店舗を保険販売だけでなく、がんの啓発ステーションにもしていきたい」と話す。
 日本人女性の三人に一人は一生の間にがんにかかるとされる。女性で最も発生率が高いのが乳がんで、がんによる死亡数では大腸、胃、肺がんに次ぐ四位。早期に見付ければ、ほかのがんよりも治りやすいとされ、手術以外に、抗がん剤や放射線など治療方法の進歩も著しい。しかし自治体が実施する乳がん検診の受診率は一七・六%(二〇〇五年度)で欧米諸国に比べると低い。
 同社広報部は「自分で触って見つけられる唯一のがん。早期治療で治る可能性も高い。販売窓口に触診モデルを設置することで、日常的な自己検診につながれば」としている。
【図・写真】しこりの場所が分かっていても、探り当てるのは難しい(東京都新宿区のアフラックの店舗)



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20080823 日本経済新聞 夕刊

 「米国の住宅価格は下がらない」――。こんな神話を信じる人はもはやいないだろう。
 スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が公表するケース・シラー住宅価格指数によれば、五月の米主要十都市の住宅価格の下落率は前年同月比一六・九%と過去最大。前年比での値下がりは二〇〇七年一月以来、十七カ月連続となった。
 住宅市場の低迷がこれほど長引くのは、一九九〇年八月―九二年二月の十九カ月、九二年六月―九四年三月の二十二カ月以来、十数年ぶり。米国人の脳裏から住宅下落の記憶は薄れていた。当時の年間の最大値下がり率が六・三%(九一年四月)だったのを考えると、今回の調整の大きさがよりはっきりする。
 住宅を担保に買い物をする人が多い米国では、住宅価格の下落が個人の生活を直撃する。米家計部門が所有する住宅資産は約二十兆ドル(約二千二百兆円)に上るので二割下がれば四兆ドルの“経済損失”だ。
 〇八年の米新車販売は前年比一二%減の千四百二十万台と九三年以来、十五年ぶりの低水準に落ち込む見込み。七月の住宅着工件数が十七年ぶりの低水準を記録するなど経済指標が九〇年代前半の不況期と似てきたのは偶然ではない。
 「貯蓄金融機関(S&L)不況」と呼ばれる九〇年代初めの景気後退のきっかけは、商業用不動産ブームの終焉(しゅうえん)で金融機関の経営が悪化、信用収縮が激しくなったこと。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題から始まった今の金融不安と相似形だ。
 破綻寸前に陥ったシティバンクがサウジアラビア資本に六億ドルの出資を仰いだのが九一年。中東、アジアの政府系ファンドに頼る今の欧米銀の姿と二重写しになる。
 米連邦準備理事会(FRB)は九〇年から九二年にかけて、政策金利を大幅に引き下げたが、雇用が悪化、不況突入を防げなかった。そして今、米政府・FRBは、利下げや大規模減税、住宅金融公社支援で景気後退を食い止めようと必死だ。米経済の正念場は続く。
 発田真人、井上達也、加藤修平が担当しました。
【図・写真】住宅価格下落が続く(米イリノイ州で売りに出された住宅)=ロイター




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20080823 日本経済新聞 朝刊

 金融庁が月内にも財務省に提出する二〇〇九年度の税制改正要望案が二十二日分かった。焦点の証券税制は高齢者の株式投資を対象に、五百万円以下の譲渡益と、百万円以下の配当金にかかる税金(現行一〇%)をゼロにするよう要望する方向だ。原則的にすべての個人投資家を対象に、投資額で百万円までの配当を非課税とすることも求める。個人金融資産が潤沢な高齢者を中心に手厚い優遇措置を講じ、東京市場の活性化を促す。(解説4面に)
 株の譲渡益と配当の税率は〇三年から本則(二〇%)の半分の一〇%に軽減している。〇九年から二年間は譲渡益で五百万円以下、配当は百万円以下に限って一〇%の軽減税率を適用。超える分は二〇%の税率を適用することが決まっている。
 金融庁は〇九年からの優遇措置に加えて、高齢者や小口投資家を対象に証券優遇税制の拡充を求める。高齢者の優遇措置については少なくとも〇九年から二年間、続けるよう求める考え。具体的に何歳以上を「高齢者」とするかといった点は財務省などと調整する。
 自民党の麻生太郎幹事長は三百万円までの株式投資から得る配当を非課税にする案を提唱している。金融庁は高齢者の優遇措置を「百万円までの配当金」に拡充、一般投資家は年間百万円までの投資から得る配当について、非課税措置を要望する。高齢者の株式譲渡益を五百万円まで非課税にすることと合わせ、事実上の「証券マル優制度」を創設したい考えだ。
 保険料控除制度も抜本的な改正を要望する。「生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」を一本化したうえで、控除の総額を所得税で十五万円(現行十万円)に引き上げるよう要請する。
 海外投資家が日本国内のファンドに投資する場合に、居住国と日本で二重課税される問題も解消するよう求める。




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20080823 日本経済新聞 朝刊

 ゆうちょ銀行は来年一月、民間金融機関の決済網である全国銀行データ通信システム(全銀システム)に接続し、民間銀行と互いに振り込みができるようにする。個人マネーを奪い合ってきたゆうちょ銀と銀行界の歴史的な連携だが、振り込み方法が複雑なため、混乱も懸念される。利用方法をどれだけ周知できるか、時間との戦いが始まった。
 二〇〇九年一月五日。ゆうちょ銀の知人の口座にお金を振り込もうと、メガバンクのATMを訪れた利用者の動きが止まった。知人から教えてもらった口座番号を入力しようとするのだが、なぜか番号のケタ数が合わない。システム障害が発生したのか――。
 こんな混乱が全国で起こるかもしれない。ゆうちょ銀から銀行へは通常の操作で振り込みができるが、銀行からゆうちょ銀に振り込む方法がかなり複雑なためだ。ゆうちょ銀が各利用者に割り当てる振り込み専用の新番号を使う必要があり、その番号を知っていなければ振り込めない。
 ゆうちょ銀と銀行の口座番号のケタ数が違うため、解決策として、ゆうちょ銀が一つの口座に二つの番号を持たせることにした。図のように、もともとの口座番号から新番号を割り出す方法もあるが、かなり難しい。専用ダイヤルやホームページなどで、振り込み専用番号をあらかじめ調べておく必要がある。
 問題はゆうちょ銀の口座数が膨大(約一億二千万口座)で、利用者には高齢者も多いこと。そのうえ、混乱は振り込む側の銀行のATMで起こるとみられるが、銀行員はゆうちょ銀の口座番号の仕組みなどについて、詳しく説明しにくい。
 「利用者の理解をどれだけ事前に得られるか。不十分なら接続延期もあり得る」(全国銀行協会の関係者)。通常のシステム接続と違い、技術的な問題だけでなく、利用者への周知という難題が横たわる。
 ゆうちょ銀は利用者への新番号の浸透に懸命だ。国内の全世帯、事業所向けに十月から約五千七百万通のダイレクトメールを送る。接続直前には、テレビコマーシャルを流す。
 ゆうちょ銀と銀行界が混乱の可能性を意識しながらも相互接続に踏み切るのはなぜか。両者は「顧客利便のため」と口をそろえる。特にゆうちょ銀は、口座の使い勝手を良くして「普通の銀行」に近づく必要がある。
 両者が手を結ぶ背景には、力関係の変化もある。金融危機の時代は銀行のお金が旧郵貯に流れ、肥大化や民業圧迫が問題となった。今も地方銀行を中心に脅威論が残るが、ゆうちょ銀の貯金が年間十兆円規模で流出し、大手銀がカネ余りに悩むまでに状況は変わった。
 「ゆうちょのお金がサービスの良い銀行に一段と流れ出てしまうかもしれない」。ゆうちょ銀では「銀行脅威論」も台頭する。
 どちらが脅威かは別にして、自由にお金をやりとりできるようになれば、サービスのよい方にお金は流れる。健全な競争の世界にようやく両者が足を踏み入れつつある。
【図・写真】ゆうちょ銀行と他の銀行との接続を知らせるダイレクトメール





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