裏日記 -4ページ目

始まり5

その日も彼は私といた

会社の飲み会の帰り

酔っ払ってそのまま押し倒された

セックスの途中

電話が鳴った

夜中の2時

彼は彼女に告げてこなかったのだろうか

二人の動きが止まった

私は彼を見つめた

自己嫌悪を振り切るように頭を振り

やけくそのように行為を続ける彼

私はいろんな痛みが襲ってきて

何がなんだかわからなくなってしまった

その頃私の中では

彼女という存在がどんどん大きくなっていっていた

そうして私を苦しめる

食事もほとんどのどを通らず

お酒とたばこと音楽で紛らわした

出口のない思いを

手紙に書いた

彼に渡す

破壊的な行為

久々に会う人たちは

私のやつれっぷりにびっくりしていた

明るく振舞って

私は友人達にその話をしないようにした

答えは出ないし

明らかに空気が気まずくなるから。

時折襲ってくる

自分を責める

痛み

上の空で友人と話なんかできなかった

あまり人を誘わなくなった

始まり4

月明かりの中

隣に彼が横たわっている

瞼は閉じられているが

呼吸が浅い

裸の肩が不規則に上下していた

私は彼にこれ以上触れることが出来なかった

時計は午前4時を回る

彼の携帯は30分おきに鳴っていた

その度に荒いため息をつく

私たちは取り返しのつかないいたずらをしてしまった子供のように

今更罪の意識に蝕められていた

でも私には覚悟があった

彼にもあったと思う

だから次の朝も体を重ねた

未来に進もうとしていたのかもしれない


彼と遠出の約束をする前に

私は付き合っていた男性と別れていた

3度目の別れ

言い訳はいつも違う

でも理由はいつも同じ

強い絆が欲しかった

今回ははっきりとそれを伝えた

本当に最後になった


「今晩行っていい?」

密会を重ねた

ときにこっそりお弁当を作って

彼のロッカーに入れていた

気づいている人もいたかもしれない

彼が来るときはいつも

当然のことながら門限があった

少し痛かった

友人に打ち明けた

皆怒った

「そんな男やめなよ!」

「これ以上その話はききたくない!」

皆私を心配してくれた

私は皆に伝える

「辛いけど諦めない。何も確かめず諦めるような簡単な気持ちじゃない。

あたしの気が済まない」

皆押し黙った

皆私のことは解っていた

リスクを知らないわけじゃない

いつも正しいと思うことしかしてこなかった私

それだけに皆

納得せざるを得なかったんだと思う


私は現実をもっと知りたかった

彼にとって

本当にこの先にある痛ましい出来事を

迎えるだけの価値が

私たちにあるのか

時に彼にゆだねた

「彼女を信じてやり直すことのほうが

いいのかもしれないね。だからあたしは諦める。」

腹はくくった

でも彼はくくれなかった

崩れる決意

「大事なものを失くしそうな気がする。だからもう少し待ってくれ」

強くあろうとした

信じていくこと

本当に辛い決断だって出来た

でもお酒ばかり飲んで

タバコも3倍くらい吸った

体は明らかに痩せた

時折彼を励ました

学歴のこと

仕事のこと

せめて私と関わっている間

彼が希望を持てるようになるきっかけをあげれたら

おこがましいかもしれない

でも私は言葉にした

エゴを殺したかった

溢れる思いを

彼のために

始まり3

バスの中は結構混んでいた

ふと一息ついた瞬間

肩を抱かれた

すごく強い力

穏やかな彼なのに

すごく強引だった

私は考えることを放棄してしまった

そしてキス

痛いキスだった

私は彼の顔が見れなかった

なぜだろう

それまで順調に回っていた私の脳みそは

宙に浮いてしまっていた

帰るまでの1時間

ずっともつれ合っていた

後ろの座席の人の顔が

シートの隙間から見える

何も会話はなく

目的地に着こうとしている


そして彼は私の部屋に来た

私はこんな男性嫌いだ

でも

それは一般の話

自分の身に起こってしまい

私も共犯なのだ

初めて抱かれる彼の腕は

今まで満たされてこなかった愛情を埋めるかのごとく

私の全てを吸い尽くそうとしていた

安らぎでも温かさでもない

私が感じたのは

エネルギー

どこまでもプラトニックなエネルギーだった

そして私はどこまでも応えた

与え続けた

底をつきるまで

そして私は始めて

セックスというものを知った

今までのセックスは

単なる儀式になってしまった

こんなにも意味を肌で感じる

彼が私を抱く意味を

彼は淡々と

貪欲だった

私は奪われる悲しみと

裏腹の喜びを感じた

少し危険を感じるくらい

危ういセックス

部屋の雑然さが

月明かりの中浮き上がっていた


 

 

 

始まり2

ふと

彼が私の手を握って歩き出した

振り返って微笑む

いたずらっぽい笑みと

確かめるような目

もっていかれちゃったな

そう思った

彼と見る街は

刺激で溢れていた


その日11時に彼は電話をくれなかった

絶望と怒りと

その先にある脱力感

私は待っていた

2時間後

携帯が鳴った

彼女の買い物に付き合っているらしい

「遅れるならそう連絡をくださいよ。」

もっともらしい事を言って

武装する私

私たちは駅で落ち合い

バスに乗り込んだ

目深にかぶっていた帽子を取り

シートを倒す彼

シートは狭く

半そでの腕が密着した

逞しい骨とそれを包む薄い筋肉

居てもたってもいられない

彼は目を閉じた

そのままバスは市街地へ向かった


手をつないで街を歩いていると

彼の携帯が鳴った

「あいたた・・・」

そう言って彼は彼女と会話をするため路地へ入っていった

3メートルほど向こうで

彼が電話をしている

穏やかに話している

不思議と私は平静を保てた

「貧血になっちゃったんだって」

戻って彼は私にいちいち報告した

甘えてるんだな、彼に

「帰らなくていいんですか?」

他人事みたいに言う

「うーん・・・」

濁したまま歩き続けた

そうしているうちに

夕闇が迫り

私たちはカフェに入った

食事をしながら

彼はたくさん話してくれた

現在のことを除いて

食事を終えて

適当なバーを探し

私たちはバーボンを注文する

「なんだかんだでジャックダニエルが好きなんだ。バーボンは香りがいいね」

私もバーボンを好きになった

初恋の彼がタバコを吸っていて

私も好きになった

そんな感覚

一つになりたかった

一つになれないから

彼と同じバーボンを好きになった

ふと彼が彼女について話し始めた

色々と聞いていくうちに

彼にとってどうすればいいのか真剣に考えた

答えは私だった

「私と付き合いましょうよ」

その時は本当にそう思った

今もこの提案には後悔していない

「そうできると嬉しいんだけど・・・」

彼もまた平静だった

バスの時間が近づき

店を出た

「私は生涯働くつもりです。仕事がしたい」

昼間よりもしっかりと手を握っている彼

「お母さんまだかなー、なんて言ってるわけ?やだなー笑」

バスに乗り込む前の長いエスカレーター

大胆にも私はこんな事を聞いた

「彼女とはセックスするんですか?」

多分冷え切っていると決め付けていた

「うん、でもキスはしないなぁ」

中途半端に落胆

彼は確信犯だ

もしくは備わったセンスみたいなもの

最終のバスに駆け足で乗り込む

同性愛って

同性愛を

逃げ口にしてしまうことがある

私がそうだったから。

異性という名の

別の性物に

対処できずに

女性を愛したことがあった

世の中には本当に愛する対象が

同性である人が居るけど

私は彼女に逃げていました

愛したいのに

愛し方が解らない

そうして遠ざかっていく彼

遠ざかっていくように

感じてしまう私

私はおそらく

父を愛せていなかったように思う

優しく少し不器用で

でもいつも正しかった父

でも彼は友人

人は異性の親を

異性としてはじめて認識するという

物心ついた時

彼は私のよき理解者で

エゴイズムをぶつける対象ではなかった

だからかどうかはわからないが

初めて触れる異性に

戸惑い

同性である彼女を愛した

セックス(こう呼んでいいのかな)

もした。

感度は彼女のほうが良かった

だからいつも

私が奉仕した

いつしか

私も女になりたいと思える日が来た

セックスがしたいと思った

男性をほしいと思った

彼女を縁として

そう思った

今も彼女は

同性愛者である

プラトニックだったかもしれない

その先に性の営みがない関係は

私にとって

なんでもない

私にとっては。

始まり

始めの記憶は

始めたばかりの

アルバイト先のベランダ

その日私は

前の晩酒を飲みすぎて頭痛がしていた

タバコを吸う彼の横顔

まあるい鼻

頬が痩せて

広くてまあるいおでこ

キリンのような

物憂げで黒目がちな

優しい瞳

私は好感を持った

他愛もない

お酒の話

「タンカレージンがおいしいよ」

「ズブロッカって知ってる?」

お酒で綴られる

彼の人生

少し悲しそうな横顔の割りに

明るいテンポ

彼の向こうにある

身を切り刻むような

痛みを感じた

私はそのころ

とても前向きな男性と付き合っていた

何一つ不自由せず

育ってきた彼は

自分の力でなんとかなる

なんとかする

そういうことを教えてくれた

前向きになりたい

目の前にある問題を解決したい

少し

利用した

そんな付き合いが

結婚とか

絆とか

そんな話に発展して

戸惑っていたころ

愛はあった

でも

居場所がなかった

いつも満たされず

その心をその男性にぶつけて

ぶつけて

あきらめかけていたころ

あなたに出会ってしまった

もっとあなたを知りたい

その悲しみの奥には

何があるの?

そこに

私の居場所があるの?

ある。

確信に近かった

店内を歩く彼は

早足で

長身の頭がいつも丸見え

気づけば目で追う毎日

「映画はやっぱりSFだよね」

「SF私の両親が大好きなんです」

そうやって彼と会話を交わすたび

それまで生きてきた時間を埋めるように

お互いを知って行った

彼に彼女が居ること

本当の年齢(笑)

彼の両親が離婚していること

父親は厳格で

自分は期待に応えることができなかったこと

家を飛び出し

縁を切って7年経っていること

専門学校を

中退していること

母親がすでに亡くなっていること

彼女に結婚を迫られて

結婚を条件に

このまま一緒に暮らすことを

約束させられそうになっていること

彼の口から出てきたのは

そういった言葉たち

どんどん彼の傷の

深いところまで入って行っているようで

心地よく

怖い気もした

私たちは飲みに行く約束をした

“本気かな?”

お互い手探り

“本気なんだ”

確かめる

約束はチャットだった

顔を見る事もなく

言葉の裏にある

真実を探ろうと 

必死だった

『電話は怖いんだ、壁に耳あり・・・ってね』

罪の意識は

なぜかなかった

『・・・早く会いたいです』

投げてみる

『俺も』

『指が震えてキーが打てないよ 笑』

9月27日

11時に

電話をくれる


光と迷い

宝物は絶対に手放さない

これは

初めて恋をした時から今までの教訓

私は今

未だかつて手にしたことのない宝物をみつけてしまった

そして不安との闘い

一瞬一瞬

私は闘っている

闘いには

痛みがある

時に後悔する

自分の心

彼の心

彼女だった人の心

今更

刺さる

不安になる

「私は彼女と同じになってないか?」

彼女が愛されていたのは

今になって気付いた

私も愛されたいと願う気持ちと

彼女のようになることへの不安

「いつか彼が誰かに出会ってしまうんじゃないか?」

私と彼は絶対幸せになる

そう信じて疑わず

犯してしまった罪が

自分を苦しめる

その痛みを背に

手探りで日々を繋いでいくこと

昨日より解りあえてるのだろうか

それとも

解りあったつもりでいる?

自分の道を

自分で照らしていく

明かりを灯すのがへたくそな彼の灯りは

風が吹くと消えてしまう

私が照らしてあげたい

彼は距離を置きたがる

だから私も近づくことが怖い

そうして

私の道が暗くなってしまう

大きくて明るい

光で全てを照らすことはできないだろうか






恋の言い訳

激しい恋の後

己のエゴイズムを

まざまざと見る羽目になる

そこにある事実が

恋という情念で捻じ曲げられ

違う歴史を刻んできた二人に

化学反応を起こす

そして気付く

そして傷つく

燃やせば燃やしたぶんだけ

灰は黒く

愛したことが思い出になっていく

今そこにあなたは居るのに

この焼け野原から

どこに向かって歩き出そう?

二人で確かめ合いながら

どこに向かって歩こう?

泣く

今朝 泣いた

悲しくて

あなたに否定されたら

私という存在は

消えてなくなる


狭いところが大嫌いな、暑がりの彼は

今は布団で寝ている。

前はベッドで抱き合って寝ていたのだけれど。


昨夜、私は疲れ果てていた。

尽くしても尽くしても

愛しても愛しても

愛されない

愛を感じることが出来ない

何も伝わらない


家にいるのが苦しくて

散歩をしにいった

彼は寝ていた


今朝

彼の布団に入って

肌を合わせてみた

愛を感じたかった

背中を向ける彼


・・・イツモノイタミ


「他に男ができたんやろ?」


「できる以前の問題だよ。

二人の問題。。

出来たと思ってるの?」

 

「いや、そんな感じではないな。」


そうして起き出した彼にコーヒーを作り

キスをしようと顔を近づけた

それでも愛を感じたかった

顔を背ける彼


脱力感と共にその場にうずくまってしまった


涙が止まらなかった

声を押し殺しひとしきり泣いた後

恐る恐る聞く


「そんなにいやなの?」


「そんなことないよ」

少し挙動不審。

後ろめたそうな彼


それを聞いたとたん


もう止められなかった

これは何?

私という存在が

散り散りになって

壊れてしまった。


何がどうなってしまったんだろう

覚えてる?

バスの中で

突然のこと

あなたが彼女の元へと

車を走らせるまで

あと1時間

停留所に着くまでが

私に残された

あなたとの時間だった


愛しく待ち焦がれたあなたとの

初めてのデートは

彼女の目を盗むために

思いがけず遠出


私は息が出来なかった

あなたが痛いくらいに吸う

なぜか

望んだものではなかった

安らぎという要素を全く欠いていた


そんな始まり

私の小さな部屋で

体を重ねた

あなたの肌に

わたしの全てが吸われていく

そんな感覚


あの夜

鳴り止まないコール

やさしい音色

寝付けなかったのは

あなたが眠れなかったから

はじめて見る

あなたの肩が

青い光に照らされていたのを

覚えてる


今も変わらない

青い光に映し出された肩は

規則正しく波打って

慣れてしまった感覚に

少し

倦んだ気持ちになる