始まり4 | 裏日記

始まり4

月明かりの中

隣に彼が横たわっている

瞼は閉じられているが

呼吸が浅い

裸の肩が不規則に上下していた

私は彼にこれ以上触れることが出来なかった

時計は午前4時を回る

彼の携帯は30分おきに鳴っていた

その度に荒いため息をつく

私たちは取り返しのつかないいたずらをしてしまった子供のように

今更罪の意識に蝕められていた

でも私には覚悟があった

彼にもあったと思う

だから次の朝も体を重ねた

未来に進もうとしていたのかもしれない


彼と遠出の約束をする前に

私は付き合っていた男性と別れていた

3度目の別れ

言い訳はいつも違う

でも理由はいつも同じ

強い絆が欲しかった

今回ははっきりとそれを伝えた

本当に最後になった


「今晩行っていい?」

密会を重ねた

ときにこっそりお弁当を作って

彼のロッカーに入れていた

気づいている人もいたかもしれない

彼が来るときはいつも

当然のことながら門限があった

少し痛かった

友人に打ち明けた

皆怒った

「そんな男やめなよ!」

「これ以上その話はききたくない!」

皆私を心配してくれた

私は皆に伝える

「辛いけど諦めない。何も確かめず諦めるような簡単な気持ちじゃない。

あたしの気が済まない」

皆押し黙った

皆私のことは解っていた

リスクを知らないわけじゃない

いつも正しいと思うことしかしてこなかった私

それだけに皆

納得せざるを得なかったんだと思う


私は現実をもっと知りたかった

彼にとって

本当にこの先にある痛ましい出来事を

迎えるだけの価値が

私たちにあるのか

時に彼にゆだねた

「彼女を信じてやり直すことのほうが

いいのかもしれないね。だからあたしは諦める。」

腹はくくった

でも彼はくくれなかった

崩れる決意

「大事なものを失くしそうな気がする。だからもう少し待ってくれ」

強くあろうとした

信じていくこと

本当に辛い決断だって出来た

でもお酒ばかり飲んで

タバコも3倍くらい吸った

体は明らかに痩せた

時折彼を励ました

学歴のこと

仕事のこと

せめて私と関わっている間

彼が希望を持てるようになるきっかけをあげれたら

おこがましいかもしれない

でも私は言葉にした

エゴを殺したかった

溢れる思いを

彼のために